表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/134

調査2



「じゃあ俺先に行ってくる」


「ええ、また夜にね」


夜も交代で学校の見張りをするため部屋は1つ…というより基本的にチームであれば固まって1人で動くことは少なくするのが普通なのでクオリアと矜持はホテルを一部屋しか借りていない。


今日は土曜なので進学補習…補習とは名ばかりで普通に授業が進む全員参加のそれが昼まであるだけらしいが、部屋を出る時間をずらしたりしている事から分かる通り今日から本格的に学院生と関わるためクオリアとの関係はあまりバラさない方向で進めて行く。


バレたらバレたで駆け落ちしてきたとかで適当に誤魔化すつもりなのでそこまで完璧にするつもりはないが余計な騒ぎの元をわざわざ作る必要もない。


ホテルの一室を出た矜持は今日する事を考える。


「まずは色が落ちてきてた立て看板とかの補修からかな〜」


来客者用の職員室案内が色褪せていたはずだ、信用を得るために地道なことから手を出して行こうと考えながら出勤した。



「太陽が機嫌いいとやっぱり気持ちいいな」


用務員室に入って道具を準備してから立て看板を作り直した矜持はとくにやることが思いつかない…という体で高等部は2人いるから…などと自分に言い訳をして比較的安心できる中等部側の職員室に何か仕事が無いかを聞きに行き次から次へと雑用を貰っていた。

今は中庭の水道の錆やその周りの水垢にカビを処理していたところだ。

それによって昨日買った白のTシャツにジーンズという簡素な格好だが汗が滲んでいる、出勤時に着ていたブラウンの上着はすでに用務員室に置いて来てある、用務員らしい汚れてもいい適当な格好だが筋肉の形が浮き出るため、短髪であることなど全体の雰囲気を含めて爽やかな男らしさが出ている。


女子校で…特に寮生活であまり外に出ない者もいる中でそんな姿を晒せば注目されるので窓からは覗いている者がいるのもわかっているのだがだからと言ってそれで姿を隠すのは何かに負けた気がするしまじめに働く姿をアピールするのは信用を得るために有効だと知っている、さらに言えばレントに注目がいかないようにするためあえて晒す。


そこそこに長い水場を端から順に小分けして薬をかけて行っているので10分程休憩してまた端から処理していけばカビがかなり取れていく。それでも取りきれず残った分にはまた薬を吹きかけて上からラップを貼り付けて放置して次の仕事をもらいに職員室へ向かう。


力仕事ならどんどん振ってもらって構わないとその顔に少し笑顔を浮かべながら。




矜持が目立っているため転校生の割に注目を浴びずに済んだレントはかなり助かった。

放課後まで普通に過ごすことができた。


休み時間の質問にははいといいえだけで俯きながら答えていたらだんだんと質問も尽き去っていってくれた、レントにとって本番はここからだ、昼までしか授業がないという事はこれからみんな部活へ行くはず、情報収集がしやすい部活か噂話が好きな人のいる部に所属するのが一番だが性別の関係で運動部はなし。


「どの部活にするか考えないと…」


男が使ってもおかしくない言葉を女性風に発音する事でなんとかお許しを貰った喋り方を独り言でもしっかりと使って部室棟へ向かった。



クオリアと悠里は違うクラスだが感想に違いはない。進学補習で授業が進められる、つまり全員参加しているこの学校はお嬢様学校でないにしても勉強はしっかりとしており、3年ともなれば受験を見据えて授業はしっかり受けているし休憩の間も次の時間の予習や前の時間の復習などで静かなものだった。


だが予習復習をやってしまって勉強にひと段落がつけば当然転校生に食いついてくるためそれまでの休憩分も合わせて質問攻めにあった。


転校の理由などは最初に適当に説明したのだが年頃らしい質問…彼氏がいるかなどのかなりプライベートに踏み込むような質問もあり、適当に流すためならいないと言ってしまえばいいのだがそう言ってしまう事に抵抗を覚えいると正直に答えたクオリアはさらに質問が激化したのだが真っ赤になりながらも答えるその姿は同性である女学院の生徒でさえもつい可愛いと思ってしまうほど美人な見た目に反して少女のようだった。



そして矜持は昼で全ての予定を終える部活をしていない生徒が帰るまで用務員室に戻っていた。教師ならともかく用務員という立場は生徒からも距離を測りづらいだろうしあまり関係を持つのも大変そうだったので逃げた。



各々がなんとか1日を終え…特にレントと悠里は寮であるため晩御飯まで寮で取ることになり大変な時間を過ごした後、電話を繋ぎ今日の成果について話していた。


「俺の方は雑用をそこそこやってたら若者は苦労すべきだとかで授業で使う備品の準備とかも手伝う事になったしまあ接点はできはじめてる」


「こっちも部活の下見が順調にいけたしまあまあかな、入る部活の候補もつけたし」


レントが少し女性らしい言葉遣いを意識したまま話す、なれてきたらしい。


「私の方は高3ですので部活に今から入る必要もなく特に成果があげられず終いでした」


悠里の方はアクションを起こすのが難しかったのか自分から何かをするということはできなかったようだ。


「ごめん、私も同じ…私と悠里ちゃんは何かアクション起こすよりも適当に歩き回って観察するくらいしかできないと思う。それで…周りの人を見てて気づいた事はあるわよ」


「本当ですか!」


自分とほぼ同じ条件ながらになにかを発見したクオリアに悠里が驚く


「転校生の私たち相手には特に何も無かったんだけど…やっぱり事件の影響はあるみたいでよく見ると生徒同士が警戒してた、自分の所属してるグループ以外は信じられないって感じに見えたわ」


「うっ…自分の周りしか見てませんでした…明日は休みなので寮の様子をできるだけ視野を広く取って観察します…」


「こっちは部活はやってるとこはやってると思うんでそっち見て回ります」


「俺は用務員だし休み、行ったら変に思われるから町の方でその辺の年代っぽい子とかちょいちょい見とく」


「んー、じゃあ私も町の方かな…じゃあまだ早いけど

見張りの交代もあるし私はもう寝るわ」


「はい、おやすみなさい」


「おやすみです」


電話を切ってしまう、悠里的にはスコープを覗けるのはクオリアだけであるため有事の際に起こされるため特に早く寝る事に何の違和感もない、実際は矜持の方もホテルから学校まで見ることができるため2人の負担は対等だ。


早めに電話を切ってしまったのはあれ以上特に得るものが無く、早めに切ってしまえば二人の時間が長く取れるから。


見張りもあるため特に何かをするでもなく、何か話そうにも今は話題が見つからず、ただただ寄り添っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ