幕間 祈理の将来の夢
「ああ〜料理したいよー」
矜持のいない士道家で摂理が嘆く、なんでもよく食べてくれる矜持がいないと自分の分のほんの少ししか料理が作れない
「今作ってるのは違うの?」
妹の祈理がクリクリとした目でこちらを見ながら聞いてくる、8歳差という事もあり可愛くて仕方がない。
「今作ってるのは普通のアップルパイ、お姉ちゃんが今作りたいのはむかーしの料理なんだー」
「う…お姉ちゃんの変な料理は…」
そうなのだ、前科があるせいで自分が面白いとか時代背景に興味を持った料理は作ってももう家族で食べてくれるのは矜持だけ、でもいろんな世界にはいろんな食材があって作りたい欲は止まらないので世界さんサイドにも問題があると思う。
「矜持早く帰って来ないかなー」
「祈理もお兄ちゃんともっと一緒にいたいな…」
この前の土日はまるまる私たちのために時間を使ってくれたとはいえ矜持はあまり家に居てくれない。今は比連校所属で正職員よりも仕事に出なくていいはずなのに夜も割と出かけていることが多い。
「働かないのも問題だけど働きすぎも問題だね」
「お兄ちゃんてやっぱり忙しいの?」
忙しい…かと言われれば返答に困る、交番勤務の警邏隊やお役所仕事をしてくれる連理の枝と違って矜持たちのいる比翼の鳥…警邏隊もここだが分けるために一応遊撃隊なんて呼びかたもあるところは仕事を受ける受けないは自己責任である、働かなすぎれば除名をされることもあるらしいが…まあでも総数が何十万といる組織で矜持のいる銀翼という階級は千人もいないのだから忙しいのかもしれない。
「たぶんそうじゃないかな」
「じゃあ…祈理が将来比連の職員になってお兄ちゃんを助ける!それでもっと一緒にいれるようになるね!」
1人が入ったところで変わるものではないと思うし何より比連は危険な仕事も多い
「矜持のお手伝いするには連理の枝の方に入るってこと?」
さり気なく安全な方に誘導したい。
「ううん!強くなって悪い人倒してお兄ちゃんの仕事を減らすの!」
誘導失敗…でもまあこの年代の子に現実を教えすぎても意味はない、多少は強い方が安心だし護身術程度に武道を身につけてもらうのもいいかもしれない。
それで警邏隊とかの比較的安全な道に進んでもいいし、連理の枝に興味を持ってくれてもいいだろう。
この子の魔法は『模倣』なのだからいろんな経験を積むのはいいことだ。
「じゃあまずはお父さんとお母さんに相談だね、許してもらえたら道場探そうか」
「うん!」
きっとお父さんもお母さんも頭ごなしに否定はしないはずだ。いつか揉めるとしたらそれはきっとこの子が本当に危ない道に進む時、実力が伴っていなければ矜持も止めてくれるだろう。
だから今はやりたいことをさせてあげたい
そしてできれば私も料理をさせて欲しい。