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ネルパの町へ



土日を挟んで週明けの月曜

太陽が雲に遮られることなくその姿を現す気持ちのいい快晴、その下で2人の少年が向かい合っている。


「太陽は機嫌がいいみたいだけど俺は悪い、お前のせいでな…つまり」


「確かに爽やかないい天気だ、でも今日俺はおまえのせいで最悪な目覚めだった…だから」


「「ぶん殴ってやる!」」


レントが動画なんて撮ったせいで『シャークバイト』と『KOO』に『ラフメイカー』合同のグループで


「秘密に対しての危機感が足りないのよ、バレたくないって感情を教えてあげる」


というクオリアの言葉を頂いた後で昔の写真を送られるというお仕置きを受けた矜持はすこぶる機嫌が悪かった。


矜持は昔の写真を持っていないがクオリアは違う、ずっと旅をして回っているのではなく年に合計で半年ほどだけいろんなところへ行くことになっていたクオリアは携帯電話もあったしカメラを持っていく事もあった。


そしてクオリアが父のクリヴァールついていく場合はほぼ確実に矜持も一緒であるため矜持の写真もたくさんあった。


「お前のせいで!昔の恥ずかしい写真を見られたんだぞ!」


年上ばかりに囲まれていたため自然と精神の成長が早かった矜持だが最初から高かった訳ではない、つまり3歳差のクオリアに甘えるような写真もあったわけだ。


「お前のせいで朝から妹の殺人かかと落としを3日連続食らったんだ!」


お互いが相手の攻撃を避けずにしっかりと受け、しっかりと拳を振り切る。


本気で怒っているのかと言われればそうではなくこれはただのコミュニケーションだ、矜持からしたら恥ずかしい写真ではあるが大切な思い出でもあるし、レントもかかと落としで起こされたとはいえほんの少し妹の態度が柔らかく朝から会話が成り立った。


だから納得できない分をしっかりと今の一撃で払拭してしまえばそれでおしまいだ。


「ふぅ、おはようレント」


「おう、はよっす矜持」


昨日お仕置きの延長で次に受ける依頼を決めたので『スピリッツ』も誘おうと思った矜持がレントにその話をする。


「なあレント、『ラフメイカー』が次に受ける仕事決めたんだけどさ、『スピリッツ』も誘いたいからそっち行くわ」


「おっけ、でもこのタイミングだと俺は行けないか…」


「いや、仕事的には調査で万が一の場合戦闘があれば追加報酬って形だから戦えなくてもいいんだよ。ただ場所がな…」


顔をしかめる矜持にレントも少し尻込みする。


「やばい場所なのか?」


「ああ…女子校だ…」


その返事は命の危険などを考えていたレントにとってしょうもないと思ってしまうものだった、だがそのあとすぐに自分も男1人なら嫌なのだからしょうがないと思った。


「俺はやっぱり魔法がちゃんと使えないからパスだな」


そう言って逃げようとしたレントだが


「悠里さんが来るならお前も来るしかないだろ?お前の魔法訓練してくれてるの悠里さんだし向こうでも出来ることの方が多いだろうし」


ガッシリと掴まれた肩から走る痛みにレントは矜持の必死加減を察する、これは逃げられそうにない。

その予想は的中するものとなった。




次の日、火曜

「それではお気をつけて」


転移装置に乗った4人に無事を願う声がかけられる、光に包まれた次の瞬間には矜持、クオリア、レント、悠里の4人は今回の仕事を依頼してきたネルパ女学院のある第1世界のネルパの町にいた。


「レントくん、転移酔いは大丈夫?」


「あ、大丈夫です。転移酔いしないみたいなんですよ俺」


「まあ今回は第1世界のままだし世界間転移よりはマシだからな」


「だな、でも俺がこっちに来ても役に立てないと思うけど」


それは確かにそうだ、矜持とレントは男であるため女子校の調査には向かない。


「今回は潜入捜査の経験が目的だから…しっかりと身分を隠せるかどうかを試す場よ」


「うぅ…苦手だ…」


レントがうめき声をあげる


「まあレント君なら大丈夫でしょう、矜持君はどの様にするつもりで?」


「用務員ですかね、生徒じゃ見れない範囲も見やすいですし自由に動けますから」


正直今更こんな事をする必要が無いくらいには何度か潜入捜査はしている、それこそクオリアも一緒に。

それをわかっていてこの仕事を受けるのは比連校に入って気が緩んでないかを確かめるためで、環境を変えて新鮮な気持ちで身分を隠すことで意識の締め付けを狙ったものだ。


「じゃあ生徒として入るのは私たちに3人がするわ…ほんとは他の子たちの手も借りたかったんだけど…どうしても受けたい講義があるなら仕方ないからね」


「そうですね、まあ4人でも十分でしょう。彼女たちは精霊を大事にしているのですからその分野の神聖魔導が講義に来るとなれば受けて当然です」


「そうですね…でもネルパ女学院は中高一貫ですし高はともかく中に誰を置くかですよね…年齢的にはレントですけど1人で放り込むのは不安ですし…」


今回の仕事は最近学校で起こる怪事件、それと同時に流れ始めた『あさまさま』という噂の調査であるため中学の方にも人を送りたい。


「てかちょっと待ってくれ…さっきから普通に話してるけど矜持、俺は男だぞ?」


「大丈夫よ、レントくん華奢だし顔も女の子みたいだから着替えの時は傷跡があるからとか言えば1人で着替えられるし問題ないはずよ」


クオリアの言う通りだ


「教員側とのコンタクトは生徒に紛れられない矜持君に任せるので必然的にレントさんは生徒になる必要があります」


悠里が追い打ちをかけ


「エリアスに写真、頼まれてるんだ」


矜持が笑顔で締めくくり、レントに殴られた。


「お前!せっかく男1人じゃ可哀想だから来てやったのにそれはないだろ!」


「悪いな、でも依頼の解決が優先だし潜入できる奴は多い方がよかったから」


依頼解決のため…と言われればレントも黙るしかない。普段レントといるときはふざけることも多いがサザナミの時も一番被害者に寄り添っていたのは矜持だった。

その優しさを知っているから今回もその延長だとわかる、写真のところはふざけただろう…しかし矜持はそれでもいい奴だ。依頼に関して真摯に向き合っているのは間違いない。


「すまん、やりすぎた」


「いや、俺もふざけすぎたと思う…生徒、頼んだぞ」


「おう…うん?」


真面目な雰囲気に流されてレントは了承してしまった…


「ふふふ…じゃあレントくん…解決策が見当たらないから中学校側…頼むわね」


「そうですね、レント君1人でというのは不安が残りますがそれしかないでしょう」


レントに逃げ場は無くなった…



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