レントの妹2
ボックスガチャ…
レントに連れられて地下鉄で1時間半ほどのところまでやってきた。
「東区っていっても1番ホームから伸びてるところは住宅街の近くだからあんまり道場無いんだな」
矜持がなんとなく呟く
「まーなー、中の方まで行くと住み込みのところも増えるけどそもそも比連職員になる人が多いし寮とかもあるから道場ばっかりなわけがねーよ」
「それもそうか…でも道場が多いのはいいな、試合とか組み放題だし」
「まぁ、そうだよな。大会とかもあるしやりたいことを学べる環境も広い場所も用意されてるのが東区だし、まあ普通ならなんだけど」
レントの含みのある言い方に少し困り気味の顔に自分が何か変なことを言ったのかと思う。
「普通ならってことは今から行くとこは違うのか?」
「まあな、さっきから言ってる通りこの辺は北区との境目だし道場もそんなに多く無いんだよ、その中でも俺が行ってたところは特に寂れ気味でさ門下生も家から通ってる数人…どっちかって言うと師匠の趣味みたいなもんなんだよ。
そんなんだから大会で結果残せたりもしないしそもそもあんまり出ない、大会の実績が無いから試合が組み辛い、本気で上を目指すやつの環境とはちょっと違うんだよ」
「それはちょっと大変だな、妹ちゃんは本気なんだろ?」
真面目な子だと聞いていたからおそらくそうだろうと聞いてみる。
「マジもマジのおおマジよだからこそ最初に結果を出したのが師匠の型をしっかり修めてない俺ってのがな…」
「相当拗れそうなやつじゃねーかそれ、そこまで来ると妹ちゃんが可哀想まである」
「だからさ、俺じゃ暫くはダメそうなんだよ、でも俺のせいであいつは結構悩んでる…だから頼むぞ矜持、お前だけが頼りなんだ」
レントが真剣な表情で矜持を見る、エリアスの言っていた通り良いお兄ちゃんをしているらしい…なら
「俺にできる精一杯はやる」
「おう、めちゃくちゃ頼もしいよ」
そんな会話を広げながら向かった道場は確かに少し小さかった。
「師匠ー!こんにちわー!」
口調は軽いがしっかりと中に入る前に礼をしてから入るあたりレントも師匠の事をしっかりと尊敬している事が伝わる。
「こんにちわ」
矜持も道場に入る前に頭を下げてから入りレントに紹介してもらうためにレントの師匠のもとまで歩いていった。
「師匠、こいつ比連校で知り合った矜持!この前一緒に仕事いったやつなんだけど今日は体験て事で…いいか?」
レントから師匠と呼ばれた老人は矜持の方を見つめたまま何も言わない
「師匠?どうしたんだ?師匠?」
「あ…ああ、構わんが先に少しその子と話させて貰ってもいいかね?」
レントに呼ばれて意識を取り戻したように反応を取り戻した老人が問いかける
「いや俺はいいけど…矜持は?」
「僕も問題ないありません、ぜひお話しさせていただきたいです」
かしこまった言い方で同意する。
「うむ…では奥へ行こうか」
レントの師匠に案内され矜持は奥へと向かった、道場に入ってからずっと向けられていた子どもたちの誰だこいつ?というような目線の中に1つ、敵意のある視線を背中に強く感じながら…
「さて…まず確認だが君は…いえあなたは武神様のお弟子さんでは?」
いきなり見破られた…というよりも正体を知られていたことに驚く
「そうです、『武神』熊谷虎徹を師に仰いでいます。ただ弟子なのであなたという呼ばれ方はどうにも…」
「やはり…君は思い出せないかもしれないけれど私は昔救われたんだよ、赤いマントをつけた武神様のお弟子のヒーローにね」
「え…」
命を助けた人数ですら多すぎて覚えていないがそういうことらしい。
「今も変わらずヒーローのようで安心したよ…レントの…いやエレナのヒーローですかな今回は」
「お見通しなんですね」
その察しの良さを尊敬する
「長く生きたものですからね、あなたの事は師範として迎え入れたい。エレナの事を解決し易いように他流派の事を知るための外部顧問の地位を用意しますのでエレナの事を解決してからも気が向けばきてください」
「もう解決したつもりなんですね…」
「それはもちろん、頼れるヒーローが来られたので」
可能性としてはもともとありえた話だった、こっちで矜持が過去にたすけた人と出会うことは。
その場合口止めをしようと思っていたのだが彼に関しては必要無さそうなので安心する。
その辺りはやはり年の功と言うものだろう、門下生が修行をしている道場へ老人の後を追って矜持も入っていった。
「集合!」
「「「「はいッ!」」」」
レントの師匠により集合がかけられる、それにより門下生…レントを含めて4人が返事をして集まる
「全員が知ってると思うがこのセルバ道場から比連校に入学するという素晴らしい結果を残してくれた門下生が現れた、レント・シャルカン…よく頑張ったな」
「はい!有難うございます!」
「先日は仕事をこなして先ほど手土産まで持ってきてくれたので皆後で礼を言っておきなさい」
「「はい!」」
「……はい…」
レントの妹であろう少女、エレナだけは少し悔しげに返事をした。
「そしてはこちらの彼はレントと共に仕事をした人との事です、私から見てもたいへん素晴らしい武人だとわかるので外部顧問として暇があれば来てもらいたいと思います、ですが実力がわからない相手に学ぶというのも納得がいかないと思うので今からレントと試合をしてもらいます」
「待ってください師匠!俺今戦えない状態で…」
「でしたら兄の代わりに私が、今いるメンバーの中では一番強いのは私ですので」
「そうだ、他の2人はまだ早いからエレナしかいないな。頼むぞ?」
「はい!」
エレナちゃんが動くところまで計算通りなのだろう、ということはこれがチャンスなはずだ。
このチャンスをかなり掴んでみせる、矜持は静かに決意した。