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顔合わせ5



翼階級と枝階級の面々の顔合わせの翌日、最近はずっとそうだが今日は特に比連校はわついていた。


それもそのはず入学から間もない一年に金羽に昇格した強者がいるのだ、その生徒の名前はレント・シャルカン…現在戦闘不能のへっぽこ魔法士だ。

だがそんな事情は周りが知るところではなく注目の的となっている。


人混みから抜け出せないレントと矜持は一瞬目があったが巻き込まれたくない矜持は笑ってから目をそらし他学年が大量に来ていて面倒くさそうな交流場を後にした。

おそらくこの前のサザナミでの一件がレンガ達から上に伝わりこんな急な昇格に至ったのだろう、クリスも銀羽に上がったらしい、足止め目的で使った最後の一撃は頭部に当てていればそれで迷宮巨人を倒せそうな威力だったのでそちらも納得だ。


後で祝いの言葉を贈りに行こうと思うが今日は先にクオリアと一緒にひょっとこ面をつけていた例の枝階級の浅井ヒカルの研究室に行くことになっている、昨日のうちにヒカルにも許可をとってあるので朝一から直行だ、ちょうど今日から座学も休みであるし可能であれば昨日取れなかったコミュニケーションを取りたいところである。


そんな事を考えながら研究棟に向かいあらかじめ待ち合わせしておいたところでクオリアと落ち合う。


「おはよう、クオリア」


未だ完全には慣れないタメ口に違和感を覚えながらも傍目からは非常に落ち着いた雰囲気で矜持は挨拶をする。


「ええ、おはよう矜持」


昨日の弱々しい姿はなりを潜めクオリアもまた極めて落ち着きはらって挨拶を返す…そして昨日メールで送られてきた研究室の前までやってくる、扉をノックする。


「入りたまえ」


中からくぐもった声が帰ってきたので矜持は扉を開けた、そこにはひょっとこではなく…なまはげがいた。


「「ひょっとこじゃないの!」」


覚悟を決めていたのに見事に予想を裏切られた2人は思わず声をあげた。


「あれは外出用だよ、普段はこれさ」


「いや…それ前見にくくないですか?」


明らかに固定が不安定ななまはげの被り物を見て矜持が質問する


「ああ…違う違う、研究中は取るよ。来客に応対する用の被り物だよ、恥ずかしいからね…」


「ああなるほど、それなら安心ですね」


「それで今日は親睦を深めたいんだったね、とりあえずその辺の椅子に座ってこれでも飲んでくれ」


そう言ってヒカルが渡したのはビーカーに入った緑色の濁った明らかに怪しい液体


「どうも」


矜持とクオリアが椅子に座るが出された怪しい液体に手をつける気配はない


「最初に言っておこう…僕は君たちにすごく好印象だ、正直ひょっとこ面を真っ先に指名してくるとは思わなかったからね」


((ひょっとこ面が変なのはわかってたのか))


矜持とクオリアの気持ちは一致していた。


「ヒカルさんはあの中で優秀だそうでしたので見た目は気にしないようにしたので」


「そう言って貰えると助かる、本当に助かるよ…親睦を深めるのが今日の目的ならその辺りの事情から話そうか、君たちなら信用できそうだ」


そう言ってなまはげを取ったヒカルの顔は髪の毛も眉毛もない顔だった。ひょっとこ面の時点で髪が一切無いことはわかっていたが正面から見たその顔は余計な物が一切無い目、鼻、口、耳だけで完結していた。


「どうだい?醜いだろう?これが僕の顔だよ」


相変わらずくぐもった声で表情をほとんど動かさずにヒカルはそう言った。


「俺いろんな国や世界に行ってるのでヒカルさんみたいな見た目の人も割とたくさん見てるんで何も思わないですね」


「私も醜いだなんて思わないです、少なくとも変な被り物しているよりかは好きですね」


あまりにも普通に答えた2人にヒカルは内心で驚く、実際に口に出して不気味とは言わないまでももう少し引くような反応はされると思っていたから


「ありがとう…生まれつきこんな顔で自信が持てなくてね、今君たちに見せたのもいつかは君たちの前で調べ物をする時に見られるから、どうせならダメージが少ないうちにと思ったんだがそうか…それはありがたいな」


そこからは結構会話が弾み喉が渇いた矜持は何気なく謎の液体を飲んだ。


「ななな何だ君は!ほんとに人間か!」


矜持が液体を飲んだ直後ヒカルが飛び上がる


「どうしたんです急に飛び上がって…」


「これどう見ても怪しいけどやっぱり何かあったのね」


そう言ってクオリアが矜持に手をかざして魔法を使いその謎の液体だけを取り出した。


「どんなものだったか知らないけどもう大丈夫よ…さてと、見え見えの罠を踏んだ矜持もあれだけど説明してもらえる?ヒカルさん」


「ついでに素顔を見せられない本当の理由も教えてほしいですね…できればそのマスクもとって」


明らかに怪しい物を飲まされたというのに変わらず穏やかな口調で話す2人だがヒカルはかなり恐怖していた。まさか今の顔がマスクであることまで気づくとは思わなかったのだ


「わかった…話す!話します!とととととりあえずマスクなんてしててすいませんでした!」


そう言って先ほどまでのかなり簡素な顔を取った、その下にあった本当の素顔は…真っ白な雪を思わせる髪に赤い瞳、雪うさぎを思わせるアルビノの女性だった。


「し、失礼な真似をしてすいませんでした!」


「急にどうしたんですか…そんな態度になられると逆に困るんですけど…というか女性だったんですね」


「それに声も綺麗ね、マスクしない方が絶対いいわよ?」


男性としては低めだが女性としては普通かそれより少し高いくらいで、失礼だが胸がなく白衣で骨格もわかりづらかったヒカルの性別を一人称のせいで2人とも男の子だと思っていた。

それはそうとヒカルの豹変っぷりに矜持は引いていた。


「では、いつもの話し方に戻させてもらいます…さっきまで僕が被っていたマスクとその液体はセットなのさ、あの液体を飲んだ人の魔力と純粋な力を測るためのね。それ以外にもあのマスクは単純に日よけでもあるんだ、僕はアルビノで日光に強く無いからね」


「ごめんなさい…事情も知らずに外した方がいいだなんて」


「いや…実際今はそこまで敏感にならなくてもいいはずなんだけど小さいころにいろいろあってね…トラウマみたいなものさ」


少し怯えながら話すヒカルの様子に矜持とクオリアは納得する、矜持の魔力も筋力等の純粋な力も並ではない、そこでクオリアの悪戯心が顔を出した。


「ねえ、今から私も飲むから私も見てもらえる?」


「ああ、わかった」


そう言ってヒカルが取り出したのは眼鏡だがおそらくそれでも見ることができるのだろう。

ヒカルが眼鏡をかけてからクオリアは例の怪しい液体を飲む


「君もかああああ!!」


ヒカルの叫びが響いた。


「なんなんだ君たちは2人揃って測定不能なんて!どれだけ強いんだ!」


「その気になれば…」


「鉄骨を折り曲げたりは簡単…かな」


細腕のクオリアでさえそうとはかなりの化け物達とチームを組んだものだとヒカルは少し後悔する。だが前々からしたかった質問がやっとできる。


「それ日常生活で不便にならないのかい?」


「純粋な筋力じゃなくて魂の強さからの力はオンオフ切り替えないと日常生活はまず無理かな…」


「そうよね…一気に強くなったあと食器とか壊して回っちゃってそれを覚えるの大変だったもの」


「俺はもともと力を操る訓練をしてたからすぐだったけどクオリアは結構かかったよね、扉を壊してしまうから俺と一緒じゃないと動き回ったらダメって言われたり」


「あの時は本当に大変だったなぁ…シャンプーのボトルとかも壊しちゃうからお風呂も1人で入れなかったし…」


「小さいうちでよかったよなぁ…世話する側も強く無いといけないから頼める人も限られるし大人になってからだと大変だ…」


しみじみと語る2人の姿にヒカルも何となくだがその苦労が察せられた。


「その…話し込んでるところすまないが騙すような真似をして悪かった」


「騙すも何もバレバレでしたよ?怪しさ満点の液体でしたし」


「だったらなぜ飲んだんだい?」


当然の疑問に対して矜持も当然の答えを出す


「仲良くなりたかったからです」


「な、ななな仲良くかい!?」


今まで人に会う時は二重でマスクしていてさらに会うことも少なかった、1つめのマスクを外したところで周りからは距離を取られるばかりでそんな事を言われたのが始めてなヒカルが白い肌を赤く染めていく。


「ごめんねヒカルさん…顔を真っ赤にしてるところ悪いけど矜持は私の彼氏よ?」


「ちがっ、違うぞ!あれだぞこれは!昨日指名してもらったのとか今のとか自分の存在を認めてくれた人に対する信頼と照れ的なあれだぞ!」


「ごめんなさい、わかってたんだけどからかっちゃいました、ところで私とは友達になるなんてどうです?」


「と、ととととととぅもーだちぃ!」


ヒカルはさらに顔を赤くする


「どこの国の言葉ですか…その、俺もそんなに社交的な方じゃ無いですけどよかったら友達になってくれませんか?」


「い…いいのか?こう見えてというかどう見ても僕は変人だぞ?」


「今はどう見てもただの美人よ?髪も気を使ってるでしょ?綺麗なロングヘアだし」


隣で矜持もうんうんと頷く


「その…初めてなんだ、友達ができるのは…どうして良いのかわからないが…よろしく頼む」


その後は今度こそまともな飲み物が出されて楽しいひと時を過ごした。



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