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顔合わせ2



肉体へ与えたダメージが精神ダメージになるように空間を変える魔法、幻想世界を使える模擬戦場に来たサメの男の子と細身眼鏡エルフ君は早く戦いたいという気持ちを抑えてもいなかった。


「はい、じゃあ2人が待ちきれないようなのでもうさっさと始めよう。チーム『シャークバイト』とチーム『KOO』リングへ上がって」


ここでやっとチーム名が明かされ顔合わせの目的が果たされ始めた。


これからの為に互いの実力を知る目的であるのにチーム『ラフメイカー』は参加しないのかという疑問があったがあの空気にはついていけなさそうなので何も言わないで突っ立っている。


「立ち位置についたね…幻想世界起動、試合はじめぇえ!!」


クルトさんの合図により直径20mのリングの中で距離を開け向かい合うチーム『シャークバイト』と『KOO』歪み合っていた2人以外も戦いが始まれば真面目な表情になり装備を展開した。


怒っていたサメ獣人の男の子は背中に背負っていた棒…(やすり)状の網目が片側についた棍棒を手に持ちながら走り出す。サメ獣人の女の子は魔力貯蔵箱から魔力を流し両手にナイフ、もう1人の体のでかいサメ獣人は長ザイフほどの厚さと大きさを持つ魔道具に魔力を流し全身に鎧を展開しながら同じように走りだしていた。


対する細身眼鏡コンビは魔法で迎え撃つ、1人が氷で1人が風、合わさったそれは細かい氷が相手を傷つけ風と冷気で体を凍らせるものだ。

開始位置の関係で最初は『KOO』が有利なのだが鎧の男が先頭に立ち真っ直ぐ突き進む、おそらく耐寒耐熱が付与された鎧だろう。


氷による壁を作ったり足を氷漬けにして床に貼り付けようとするがそのことごとくを後ろの棍棒が破壊してどこまでも距離を詰めて行く。

鎧に対して風魔法がほぼ役に立たないのが痛い、この距離まで近づけば魔法使いのみの『KOO』に勝ち目がないと考えるはずだ…頭上に巨大な魔力の反応を感じなければ…


『シャークバイト』からすれば死角、男の後ろで幾重にも重ねて女が唱え続けた魔法が『シャークバイト』の3人に襲いかかる、一番後ろに位置していた女の子は恐らく一番冷静な子。声では間に合わないと察して棍棒の男の子を引っ張り投げる、一瞬ののちに鎧の男は倒れ女の子は地面に叩きつけられ気絶した、本来なら体が潰れてもおかしく無いほどの圧力砲…鎧の男はその状態のまま厳重に厚い氷に閉じ込められた。


1対2…しかし距離はある程度詰められている。

圧力砲を仕掛けた女は男の後ろであるため反応が遅れ、鎧の男を警戒して魔法を使った眼鏡君は対処が遅れる、その隙を見逃さず距離を詰めた棍棒の男の子はそれを振るう。


頭にまともに喰らった女は気絶し掠った眼鏡君も顔を顰める、あの鑢状の棍棒にかすったということは傷は見えなくとも今現在彼は掠った肩に凄まじい痛みを感じているはずだ。


安全確保に氷の壁を前方に展開するが時間が足りていない、獣人の筋力により簡単に砕かれ勝ち目が消える。ここまで距離を詰められれば後衛の魔法使いに勝ち目はない…故に彼が取った手段は


棍棒で殴られるのは避けられないので最後に突き出した腕から氷を出し棍棒の子の腹部を貫いた。

座標の固定が必要なく簡単な手のひらで発現する魔法、その最後の悪あがきによって勝負は引き分けとなった。


前衛だけのチームと後衛だけのチームであるための超短期決戦、得意の間合いに持ち込んだ方の勝ちという当たり前の結果だった。


顔合わせに来たのに気づいたらほとんどのやつが気絶していた…


「他の人には悪いけど彼らが起きるまでちょっと待ってくれるかい?」


そう言いながら模擬戦場に上がりいつのまにか出していた槍を何度か振るい“世界に上書きされた魔法式”を断ち切り、貫き、全ての氷を消し去った。



待つこと10数分、最初に起きたのは『シャークバイト』の女の子


「うあー、怪我ないけどやっぱり体痛いー、兄貴のバカ!」


精神ダメージに変わる空間で外傷はないにしても脳が誤認して衝撃を受けたダメージが残ってしまう、逆に言えば脳が処理できないほどの…死に至るダメージは残らないためこの程度で済んでいる。


すっと立ち上がった彼女は…思い切り棍棒の少年を蹴飛ばした。


「兄貴のせいで痛い目にあったのになに呑気にねてんのさ!」


ゴッフゥと言う凄い声とともに棍棒の少年が起きる。

鎧の男はその叫び声で起きた。


「おー、勝負はどうなったんだ?俺途中から動けなくて寝てたんだけど」


そう言って鎧を解く、耐寒性能がついていたであろう鎧のおかげでダメージはほぼない。


「寝てたってなんだバカァ!」


さらに女の子が蹴りを入れる…そこからしばらく喧嘩が続き、眼鏡コンビが起きたのは1時間後だった。



「じゃあ、親睦も深めたところで自己紹介と行こうか。とりあえず君たちから」


そう言って手を向けられたのは俺たち『ラフメイカー』


「チーム『ラフメイカー』前衛の士道矜持です。よろしくお願いします」


「同じく後衛のクオリア・ラーゲルです。よろしくお願いします」


簡素で当たり障りの無い挨拶で終わらせる。


「じゃあ次」


クルトさんが『シャークバイト』に手を向ける。


「『シャークバイト』のメリル・サークです!さっきは兄貴がすいませんでした!後でシメとくんでよろしくお願いします!」


ギザ歯のサメ獣人の女の子がベリーショートの灰色の髪が揺れるほどに勢いよく頭を下げた。


「同じくハリル・サークだ、弟が不出来ですまんかったな。これからも迷惑かけるかもしれんがよろしく頼む」


鎧の男も頭を下げる、次に自己紹介するはずの弟が何も言わないので糸目を少し開けて睨んだ。


「ちっ、ダリル・サーク…あっちのクソ眼鏡とはよろしくしたくねぇ」


そう言った瞬間頭をハリルに掴まれる


「まだ言うか?」


「しゃーなしよろしくしてやるよ」


これ以上は話が進まないと思ったのかハリルは頭を離し


「後でしっかり怒っておく…本当にすまない」


「次よろしく」


軽く頷いてからクルトさんは『KOO』に話を振る


「チーム『KOO』レガート・シェルク、チーム名の意味は秩序の騎士、俺たちはルールを守らない者は許さない、よろしく頼む」


細身眼鏡エルフコンビの男が明らかにダリル君を睨みながらの自己紹介をした。


「同じくリーファ・カームです、うちの堅物バカが迷惑をかけてすいませんでした。後でしっかり罰を与えます」


リーファさんがそう言うとレガートさんが明らかに顔を青くした…怖そうだ


「じゃあ次連理の枝の子の紹介の後専属でつくチームを決めようか」


クルトさんが話を振った枝の方では…明らかに浮いているひょっとこが圧倒的な存在感を放っていた。

気になりすぎて他2人の説明が頭に入らず最後にひょっとこの番がきた。


「コホー…コホー…浅井ヒカル…」


くぐもった声で名前だけ告げたあと俺たちを指差した。他の人たちの事覚えてないけどどのチームに行くか決めるために何が得意とか説明してたはずだ…


「よし、じゃあ誰がどのチームに専属でつくか、決めようか!」


ひょっとこだけは勘弁したい比翼の鳥の面々の壮絶な戦いが始まった。

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