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不穏と変遷



比翼連理本部会議室、そこでは

比翼の鳥のトップ、獅子頭の限りなく獣に近い獣人、レオニード

連理の枝のトップ、見た目こそ若い女性だが数百年を生きるエルフ、アシュタル


そして本部に置かれている5人の金翼が集まっていた。


「最近悪魔討伐と発見報告と警邏(けいら)隊の奴らと調査隊の奴らが異常や消息不明となる事が増えている、これは明らかに悪魔が活発になってやがる」


レオニードが今回の議題、悪魔の活性化について切り出す。


「現在比連支部の配置を認めていない町を旅しながら見回ったり新しい世界が見つかれば調査を頼んでいた人員をもう少し本部に残す事で悪魔出現の報告を受ければすぐに対応するようにしようと思う、これについて意見のある者は?」


アシュタルの言葉に金翼のものは誰一人として意見を出そうとはしないので可決する。


「では職員への通達で悪魔への警戒を強める、そしてもう1つ、職員育成校のことだ。現在行なっている学年ごとのチーム形成を見直しそれぞれが最高の力を発揮するチーム形成を目指そうと思う」


アシュタルは目で意見はあるかと問いかける。


それに対して手をあげる者が1人、レオニードよりも人に近く頭にある耳が特徴の引き締まった体の男、シェパードの獣人にして槍の名手、現在4人しか比連から認められていない神槍(しんそう)の1人クルト・ヴィエルだ。


「それでは最初から優秀なものだけが残り職員育成という目的から離れるのではないでしょうか」


「お前の言いたいこともわからんでもない、だが比連校に入る時点で何か一芸は持っている。それが無いものはそもそも連理の枝の事務や交番勤務の警邏隊など特別なものが要求されない所へ行く。

そもそも比連校とは優秀で無ければ入れないのだから問題なかろう、むしろそれで消える程度ならこの情勢では悪魔に殺される」


「ふむ…しかしそれだけではなさそうじゃが?」


話に割り込んで来た老人は魔法使いヴァーム・レスト、比連に認められた16人の神聖魔導の1人だ。


「ああ、その通りだ…今現在比連校の授業体系は選択制だが学年ごとに分かれていて一年は二年の物理実技の時間ほかの授業に出るか自主鍛錬しかできない、それを無くす事による実力の向上ともう一つ」


手元に置いてある水を飲んでからアシュタルは続ける


「今現在比連校に通っている翼階級を持ったチームの数が3つある…本人たちには数年に1人と伝えているので知らないがほぼ毎年翼階級が入学するのはお前たちが一番よく知っているだろう?」


この場にいる金翼はそれぞれ神槍、盾神(しゅんじん)、神聖魔導、弓聖(きゅうせい)、剣聖とそれぞれが称号を持つ名手であり懇意にしている道場が存在する。

そこで鍛えた者の中で見込みがあり本人の意思が伴えば正式な弟子として連れる事もある、それ以外の金翼も弟子を取り仕事に連れて行けば翼階級は自ずと生まれる。


その弟子たちも平和を…普通の青春で得られるもので精神的に成長する事を目的に比連校へとよく入れられる。

アシュタルは全員が頷いたことを確認してさらに続ける。


「だがそいつらがチームとしてまとまってはいないんだ、これにより起こる最悪の事態は悪魔と翼階級の一騎討ち、相性が悪くて若く可能性のある翼階級が死ぬことの損害は計り知れない。比翼連理の最小行動人数が2人である理由は魔法の相性で何もできずに死ぬ事を無くすためだ。悪魔が活発になった以上翼階級達のチームには固まってもらいたい」


「卒業のタイミングがずれる事については?」


「チームを組んでいる片方が正規職員であってもやる事は変わらんだろう、学生側の学ぶ時間への配慮は必要だがその辺は個人の裁量に任せる」


「授業の統一化によって下級生に解放されていなかった幻想世界による模擬戦はどうするおつもりですか?」


幻想世界とは肉体へのダメージが精神へのダメージへ置き換わる魔法でそれを使った模擬戦は実際の殺し合いと変わらない、故に3年間魔物たちとの戦いに耐えた4年からしか開放されない代物だ。


「全学年に解放する、どちらにせよ希望者のみだ。軽い気持ちで挑まなければそれでいい、ただし条件として一度実戦を経験する事をつける。実際の死を知る者ならあれで強さを得れるはずだ」


「そこまでお考えでしたら私も賛成です…ただ横の繋がりを作るためにイベントごとは最大限楽しむ今の校風を変えることだけはしないでいただきたい…そう思います」


長らく質問を続けた神槍クルトがそう締めくくる。


「ああ、約束しよう…それから授業形態の変更により生徒の安全のため講師を増やさねばならん…神槍がそこにつけば生徒も喜ぶと思うのだがどうだ?」


それは口だけではなく約束は本気で守るから講師としてそれを見届けろというアシュタルの図らい


「是非…よろしくお願いします」


「よし、新講師と翼階級は有事の際に本来の身分に戻ってもらうため一度顔合わせを行ってもらう。その纏め役をクルト、お前に任せた」


アシュタルからクルトに渡された書類は現在比連校に所属する翼階級、そして比翼の鳥同様に葉階級とその上の枝階級に別れた連理の枝から枝階級の者をリストアップしてあるもの


それを見てクルトの顔が固まる。


「学生に…武神と…神聖魔導が…」


「なにっ!」


称号持ちだけでもおかしい、だが何よりも


「武神は…熊谷虎徹だけじゃ…」


そこでレオニードが口を開く


「ちげーよ、その弟子も武神に至った…実際に確かめて来た、緊張させねぇように身分を隠して挑んだが完敗だった」


その言葉に会議室が固まる


「比翼の鳥のトップは力だけでなく戦略なども重視されるとは言え金翼から選ばれる…それに完敗と言わせるとは…」


「ああ…待て待て…完敗とは言ったが負けを認めたってだけでお互いボロボロだったからな?そこんとこ間違えるなよ?」


「少なくとも僕より強いレオニード様に勝った少年の相手なんて…嫌だなぁ」


「安心しろ、そいつとチーム組んでる神聖魔導も含めて素直ないいガキだった」


「それは…ありがたいですね」


「まあ翼階級の時点でどこかブッとんでるところはあるはずだがな」


ボソリとアシュタルがつぶやく


「不吉な事言うの辞めてくださいよ!」


会議室の中にクルトの叫びが響いた。

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