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帰宅



比連本部の近く、転移装置の出口専用の円がさらに円形に複数配置された広場にチーム『スピリッツ』の面々は立っていた。


「あー、やっと帰ってきた…ラーメン食べたい…」


「俺は早く帰って家族に会いたいな…でもラティファと祈理を会わせたいし」


「あ!お前と妹会わせるって約束思い出した!よかったー、思い出せて」


「お前ほんと忘れるの早いな、あれからまだ2日だぞ」


「逆に言えば2日も経ってるんだよ、また忘れないうちに帰らないと…その前にラーメン食べて帰るけど」


どこまでラーメンが食べたいんだと食事に頓着しない矜持は思ったが後ろで転移酔いしたままの3人は最後に立ち寄った町の宿でこそまともな食事をとったがそれまではモンスターウルフの肉ばかりだったのでどちらかと言うとレントの気持ちがわかった。


「とりあえず俺報告書作ってくるわ、女性陣は酔ってるしレントは書けなさそうだし…」


「ごめん矜持…お願いね」


矜持の言葉にリーダーとして、そして事前の約束で本来なら自分がやるところだと思ったエリアスが謝罪をする。


「次からはエリアスに頼むつもりだから頼むぞ?」


「次に慣れてるかはわからないけど心積もりはしておくね」


本当のところはエリアスを気遣ってではなく悪魔の事について報告をしないといけないからだ、エリアスに申し訳ない気持ちを持たせるくらいなら回復を待って報告書を作ってもらった方がいいのだから。


「じゃあちょっと行ってくる」


声をかけてから矜持は本部へと向かう。報告書はいつも支部で書いていたので本部で書くのは初めてだ、書類作成用の機械も新しかったりするのだろうかと期待しながら本部に入ったのだが…特に変わりはなかった。


電話ボックスのように黒で囲まれた箱の中に入り報告書作成用のPC擬きに電源を入れて近くのパネルに自身の生徒手帳を当てがい認証を終えてから報告書の項目を埋めていく。


用意された項目に箇条書きで内容を書くだけなのですぐに書き終える、そして次は職員手帳の方をパネルにあてがい銀翼として悪魔討伐の報告書を作る。

こちらは正式な依頼ではなく不慮の事態なので少し書くことが多くなってしまう、少々億劫ではあるのだが悪魔は強力な存在であるためその動向は事細かに報告すべきであり倒したからといって留めていい情報ではない。


「これでよし、っと」


提出をクリックした事でどちらの報告書も提出し終えこれで完全にこちらのすることは終わった。

ちなみに完了報告は手帳の方からもできるのだがそちらだけで済ますと今回使った馬車や宿の費用が経費で落ちなくなる、矜持は銀翼として稼いだお金で余裕があるのだが『スピリッツ』の面々の手前ふつうの学生と同じように経費で落とせる分はしっかり落とす。



「書いてきたぞー」


先ほどの転移出口から少し移動したところで休んでいる面々のところへ矜持が戻ってくる。


「ありがとう矜持、今日はこれからどうする?」


「初仕事の打ち上げでラーメン屋とかどうだ?」


「レントはそればっかりか…俺はもういい時間だし解散でいいと思う」


「矜持さんは早く家族に会いたいんですよねぇ、なら打ち上げは明日にしませんかぁ?」


「わ…私もそっちの方が嬉しいです…転移酔いの後にラーメンは…」


「じゃあ今日は解散てことで、みんなまた明日」


「おう、じゃあな」


「おやすみなさいぃ」


「ま、また明日です!」


「また明日、おやすみー」


時計を見るとまだ7時だが空の方は結構暗くなっているのでおやすみとも言っておく、たった2週間だがずっと一緒にいたため何となくだが全員が離れるのは少し寂しいと感じていた…矜持以外。



ヴゥゥゥゥンヴゥゥゥゥン

矜持の携帯が震える、着信だ。ペン型であるためスクリーンは伸ばさないといけないが通話だけならペンそのままでできる、名前の表示はクオリア、すぐに電話にでた。


「もしもし、どうかしました?」


「ううん、特に何も無いわ、ただ2週間連絡くれなかったから何となく声が聞きたくて」


「あー、すいません…でも個人で世界間のやり取りしたら銀翼ってバレそうなんで…そういえば俺のこと結構バレちゃってました…」


銀翼ともなると個人で世界間の転移をやってのける者がそれなりに出てくる、クオリアは自身で転移魔法を使えるし矜持はハルディスに魔力を渡して転移魔法を使ってもらう、あるいは仙術と剣技を合わせて次元にアナを開ければいい。

しかしそこまでの事ができるのは金翼なら半数以上、銀翼なら4割ほど、銅翼に1割未満、金羽には1人か2人いるかいないかというほどになるので見られてしまえば本来の階級や強さがバレてしまったかもしれない…


もっとも隠している事自体はバレているのだが


「もうバレちゃったのね、どのくらいまで知られてるの?」


「俺が実力を隠してる事はバレてましたけどどのくらい強いのかと本来の階級が別にある事は可能性として考えてても確信はしてませんでした」


「そう、でもさっきくれたメールでは無事に終わったって言ってたから受け入れてもらえたのよね?」


「はい、俺が話せるようになるまで待ってくれるらしいです。それでクオリアさんにどのタイミングで話せばいいか聞こうと思ってたんですよ」


「そうね…私もチームの子…って言っても1人だけなんだけどその子には受け入れてもらえそうだと思った時に伝えたし他にも連理の枝の方に行きそうな子で仲のいい子には伝えてるから、受け入れてもらえるんならいつでもいいと思うわ。

だから矜持がこの先本当のことを伝えても今のチームの子たちと仲良くできるって思った時に伝えたら?」


それはありきたりな回答だが矜持の背中を必要な分の力のみで強すぎず、弱すぎず適度な力で押してくれた。


「わかりました、そうします。ところで少し話は変わるんですけど俺また新しい精霊と契約したんですよ」


「それ…普通なら死んでるはずよね…」


「まあそこはほら仙術で…」


「ほんと便利よねその力」


「クオリアさんの魔法ほどじゃないですよ、まあそれは置いといてその精霊が可愛い子なんでまたすぐに紹介しますね」


「ほんとに!?どんな子なの!?」


「妹と同じ年頃くらいの見た目で綺麗な金髪の子です」


「矜持ばっかりずるいわよ!早く会わせてほしいから明日ね!明日絶対時間作ってもらうから!」


クオリアも矜持と同じように子どもや小動物を可愛がるので本当に羨ましそうだ。


「はい、また明日絶対に、家に着いちゃったんで電話切りますね、家族もご飯待ってくれてるみたいなんで」


「ええ、おやすみなさい矜持」


「はい、おやすみなさいクオリアさん」


電話を切り家のドアを開ける。


「お兄ちゃんお帰りなさい!」


「お帰り矜持!お姉ちゃん寂しかったからこっち来て抱きしめて!」


「お帰りなさい、早く手を洗ってご飯にしましょ」


「お帰り矜持、お仕事お疲れ様」


妹に姉に母に父、家族が待っていてくれるありふれていてそれでとてもしあわせな光景が広がっていた。


「ただいま」


たしかにこの幸せに浸るには、この人たちに心配をかけないためには不必要な重荷は置いていかなければならないと矜持はハルディスの言葉に感謝した。

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