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サザナミ後日談1



「遅くなってすいませんでした、プノレートさん」


「い、いや…そんなことは」


プノレートさんはまだ事態を飲み込みきれていない。


「落ち着いて、今日はゆっくり休んでください。それから、俺のことチームには内緒ですよ?」


利用するようで悪いがその間に秘密にしてほしい旨を伝えてしまう。


「え、ええわかりました。それでも一言だけ言わせてほしい…助けてくれて…ありがとう…」


「ヒーローですから」


とにかく今は休んでもらった方がいいだろうとその言葉を残し矜持は教会を後にした。

帰りは普通に歩いて帰りながらあんなに急いでいた理由をなんて説明しようかと思案する。


「全くおもいつかねえ…」


自分の残念な脳に嫌気がさす。

理由を考えなければならないことはわかっているのだがあの悪魔が地震を起こしたと言うのなら自分ならそれを止められたのにと傲慢な考えが頭を支配する。

少しゆっくり歩きながら考え続けても矜持に答えは見つからなかった。



一通り喜びの歓声をあげた後、門の内に引き上げるまで上機嫌だった職員たちは詰所に引き返し騒ごうとしたが…怪我人の手当てがあると支援班が主張したため騒がさせずに手当てに移っていた。

幸いにも大怪我というほどの怪我をしたものはいなかったので順調に治療は進み終わったものから眠りについていき先ほど全員が治療を終えた。

クリスも吐血するほどの怪我をしたと言うのに勝利の喜びで少し回復したシスカの働きにより問題ない程度には回復していた。


チームにあてられた部屋で『スピリッツ』の面々は…眠らずに起きていた。

原因はいくつかある、急いでどこかに行った矜持と、短剣に戻らなくなったレントのバスターソード…そして何より、レントから隠れるようにエリアスの後ろに隠れている少女だった。


「レント…ほんとに何したの?」


「エリアスとその子ぉ、姉妹みたいですねぇ」


シスカの言う通りエリアスもその子も金髪であるため姉妹に見えなくもない。


「ほんとに心当たりがねーんだよ、矜持が知ってんじゃねーの?」


「矜持さん…どこに行ったんでしょう…」


シスカに少女を預けた矜持がいなければ事態は動きそうにないのだが肝心の矜持がどこに行ったのかが全くわからない。


「ただいま〜」


そこへタイミングよく矜持が帰ってくる。


「お前どこに行ってたんだよ!てかあの子はなんだよ!」


「お帰りなさい矜持、どこに行ってたのかとあの子のこと、ちゃんと説明してね?」


何も考えつかなかった矜持は強行策にでる。


「説明しよう…俺が急いでいたのは下痢だ。そんな事よりそっちの子の事だ。

その子は難しい事は後にして簡単に言うと…レントの子どもだ!」


レントの子どもという言葉に強い力を込め勢いで乗り越えようとする。よく考えれば腹を壊してる状態であんなに戦闘できるはずがないのだが急いでいる理由だけ考えるなら納得できなくもないはずだ。

苦し紛れの強行策は…


「はあああああ!?何言ってんだよお前!!」


「は!金髪ってことはエリアスさんと!」


「いやいやいや、私いくつで産んでるのよありえないから!」


「皆さんおちついてくださいぃ、子どもがいたとしてもここに居る理由がありませんよぉ」


割と成功した。

エリアスが否定する時にサイドテールがペシペシと当たった少女はとてとてと矜持の方まで歩いてきてそのまま抱きついた。


「おい矜持!お前絶対嘘ついたろ!明らかにお前に懐いてるじゃねーか!お前の子だろ!」


「まあまあ、これからちゃんと説明するからみんなも落ち着いて席についてくれ」


精霊に好かれる矜持は少女が寄ってきた事に特に疑問も持たず、最近甘えてくる妹と似たくらいの見た目なので動揺すらせずに椅子に腰を下ろして膝に乗せる。


あまりに矜持が落ち着いているので他の面々も落ち着きを取り戻し席に着いた。


「じゃあ話すぞ、まず最初にこの子は精霊だ。レントのあの見るからに禍々しい剣を短剣まで封印してたのがこの子だと思う、あってる?」


膝の上の少女がコクコクと頷く


「あとは私から話します…」


そのまま話を引き継ぐと言ったので矜持も黙る。


「あの剣は悪魔を倒すために悪魔を素材に造られた剣なんです…でも、悪魔が去った後には強力すぎて封印することになって、私を触媒に無理矢理組み込んで…」


そこまで話したところでグスグスと涙ぐむ、矜持が頭を撫でるとその腕を抱きかかえる


「ありがとうございます、お兄さん。続けますね、それで封じられたのにいろんな人が…特にあの人が無理矢理本体に魔力を渡して封印より剣の方が強くなって…いつも痛かったんです…うぅ…」


限界と言う風にボロボロと泣き出す、星を宿したような茶色の瞳の端から涙が絶えず溢れる。


矜持はあまりの不憫さにもう一つの手で撫でながらレントを睨む、というか全員レントを睨んでいた。


「待って!待ってくれ!知らなかったんだって!ごめんほんとごめんなさいマジごめんって!」


「グスッ…ヒック…い、良いです、わかってますから」


少女が優しいせいで余計に痛ましい。


「俺が悪いんだけどさ!俺が悪いんだけど納得いかねぇぇええええ!!」


「レントうるさい、周りは寝てるんだから静かにして」


見る人が見ればレントも可哀想な立場だった。

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