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サザナミ決戦・裏



「あん?負けたじゃねーか、しゃあねえ…俺が直々に…」


協会の礼拝堂の中で人の様な紫の肌の上半身に獣のような逆関節の黒い毛皮に覆われた脚、その爪先には大きな鉤爪のついた男、悪魔の男がいた。


「もう…やめてくれ…もう人を殺さないでくれ…」


足下で(すが)るように懇願するのはプノレート神父


「ギャハハハハハ!お前を殺すのは最後さ!俺たち悪魔は人の苦しみや悲しみや絶望が力の元なんだぜ?お前が苦しむ限り人を殺すさ!」


実際にはプノレート神父がどうであろうと最後には殺すつもりなのだがあえて神父を苦しめるために言う。


「特にお前と仲の良かったあのガキは惨たらしく殺してやるさ!あいつのせいでここ数日回収できる負のエネルギーは減るわ、お前の精神世界の居心地は悪くなるわ!…あいつを殺してやればお前はどれだけ苦しんでくれるか楽しみだなぁ…ケヒャヒャヒャヒャ!」


「やめてくれっ…!あの子はほんとにいい子なんだ!」


「だからだよ!他人の不幸は蜜の味ってね」


どこまでも無慈悲な悪魔の物言いにプノレートは絶望する。

もうどうしようもない、この悪魔に憑かれてから自分に何ができただろうか…せめて町の人の不安を和らげれたらと行って来た活動のせいで今矜持君が狙われているのではないか、そんな思考が頭の中を駆け巡る。


どうしようもない思考に耽るプノレートの耳に音を叩きつけるように礼拝堂が開け放たれた。


「蜜の味が好きならツツジでも育てたらいいだろう」


「あ?お前何でここに」


先程まで門の外に居たはずなのに町の少し外れにある教会に現れた矜持の姿を見て悪魔が驚く。


「そんな事はどうでもいいだろ虫ケラ、それより1つ聞くことがある。この地震…そもそもお前が起こしたのか?」


「てめぇ今人間の分際で俺様に虫ケラっつったか?格の違いを教えてやるよこの劣等種がぁ!お前の言う通り地震を起こしたのは俺ダァッ!!その力を思い知らせてやる!」


悪魔であると言うだけで人間よりも強いと疑いもしない、先ほどまで魔法を無効化され続けてさらに瞬間移動さながらの速度で矜持がここまで来たことに何の疑念も抱いていない愚かな悪魔が吼える。


「やめてくれ!お願いだ!もう私の前で人を殺さないでくれ!」


悪魔の恐怖を思い知らされているプノレート神父もただただ無駄な懇願を続けるのみである。


「一丁前に吼えてんじゃねーよ虫ケラ」


矜持がそう言った瞬間悪魔が礼拝堂の外に転がりプノレートの前には矜持のみが立っていた。


「な…君はいったい…」


あまりに不可思議な事態に理解が追いつかずプノレートは呆気に取られ、それしか口に出せなかった。



おれが誰か…か

全てを救うヒーローには決してなれないが自分の幸せを捨てきれない凡人でしか無いが…それでもヒーローでありたいと燃え続けるこの心に従えば


「俺は、あなたを助けるヒーローです」


せめて俺の手の届く範囲の全ては守って見せよう。助けることを諦めずにいようと決めた時から名乗り続けた答えを口にした。


その言葉とともに纏うのは真紅のマント、数多の世界で使い古され定着した「もう大丈夫」の証。

その出で立ちは間違いなくヒーローだった…


「テメェ!速さはなかなかだがこんなんじゃダメージにもなってねえぞ!」


直ぐに立ち上がった悪魔は外傷が一切ないので矜持の攻撃は効かないと思い上がった。


「こそこそ隠れて動いてたくせに態度だけはデカくて耳障りだ、ほんとお前らの相手は嫌になる…さっきのは建物を壊さないように軽く押してやっただけだ」


プノレート神父とはそれなりに仲良くしていたと言うのに彼の苦しみにも、内に悪魔が潜んでいる事にも、自分自身の魔法のせいで気付けなかった…情けなくて仕方がない、だからこそ


「一撃で終わらせてやるよ、お前ヒーローの一撃がなんで重いか知ってるか?」


「知るわけねーだろ人間!お前らは俺たち悪魔の餌にすぎねえんだよ!」


怒りでもはや何も考えていない悪魔が矜持を殴りつける、その拳に纏うのは破壊の力。

殴りつけたところに深い黒の…闇の力の爆発が起こる。


「ハッハハハアァッ!!あれだけ言ったのに結局殴られて終わりじゃねぇか!」


人に耐えられるはずのない攻撃、‘ただの人’ならばだが


「効いてないな、お前程度の攻撃では傷つきもしない。答えを教えてやる」


仙術により矜持の拳に世界に流れる力が集まる、それは酷く弱い力であっても収束され、混ぜ合わされ1つの大きな力になっていく。

それは悪魔が使っていた負の感情からくる負のエネルギーさえも、不安を抱えながらも子どもの未来を願う優しい思いも清濁合わせのみ全てを統合していく。


「ヒーローはな、期待も不安も一身に背負ってるんだよ。その重さがヒーローの一撃の重さだ、


背負ったものの重さがヒーローの力だ!」


本来なら見えないはずの感情のエネルギーが、散らばった魔力が、あらゆる物を収束した果てにプノレートでさえも矜持の拳に光を見る。


「なんだそれは!?聞いてない!聞いてないぞ!!人間は全て俺たちの餌だ!おもちゃだ!なんなんだよお前!!」


「さっきから言ってるだろ、ヒーローだぁああああ!!!!」


ドムンッと鈍い音が拳を叩きつけられた悪魔の腹から響く


「お前が苦しめた人達の思い、余さず背負って消えていけ」


「があああああああ!!!!!!」


打ち込まれた拳に込められた力が悪魔の存在を消し飛ばしていく、力の一切を無駄にせず文字通り跡形もなく、その存在を消滅させた。




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