港町サザナミへ向かって4
前回の終盤、お酒で酔っていてよくわからない文になっていたので最後すこし変更しています。
お酒には気をつけます…本当にすいませんでした。
「今日進まないといけない分は歩いたし少し早いけど休もうか、シン、ちょっときてくれるか?」
「シャシャ!」
矜持の呼びかけでエリアスの元からシンがふわふわとやってきて矜持の手のひらに乗る。
「外側の土を掘って内側に壁を作ってくれるか?魔力は俺のを使ってくれ」
「シャ!」
了解と言う風に返事をしたシンが壁をせり上げ拠点を作る。
「ありがとうな、シン」
矜持が頭を撫でると気持ちよさそうにシンが目を細める。
「ガウガウ!」
自分も撫でてくれと言うようにクリスとシスカのもとからもそれぞれフィンとルールーがやってくる。
「よーしよし、みんな可愛いな〜」
矜持もそんな精霊達が可愛くて撫でる。
仙術を扱う矜持は本人がそれを使用している意識がなくとも自身の周りの力の流れを穏やかにしているため精霊に好かれやすいのだ。
「お前すげーだらしない顔してるぞ、さっきまでずっと頼りになる感じだったのに…」
「だってもう安全だろ?いいじゃないかこれくらい、戦場でも休む時にはしっかり休んで癒されて心の力を回復しないと魔法も使えないし」
「いや俺もともと魔法使えねーし」
「他のみんなはわかってくれるよな、な?」
「えぇ、そう思いますよぉ〜」
「は…はい!正直矜持さんが精霊たちと戯れる姿ですごく癒されますしこの時間は大切です!」
「そうね…特に私は直接魔力をアホみたいに放出しちゃったから回復しないと持たないかな」
あの一件の後もエリアスはレイピアでとどめをさせず代わりに矜持が前衛に立ちエリアスは魔法に徹していたのもあり魔力はもうカラに近かった。
前衛に立った矜持は実力を隠さねばならなかったためワイヤーで動きを止めることとそれをこえて飛びかかってきたモンスターウルフをしっかり足を使い避けて足を掴み叩きつける事に徹していた。
「う〜!みんな今日はごめん!明日からまた頑張るから前衛任せて!」
エリアスは元気に叫んで宣言する。
「おう!任せた!」
「なあ矜持、お前任せたって言うけど実際前衛できるだろ?なんでやらねーの?」
「そうですよね…今日もあの怖いオオカミの足を掴んで地面に叩きつけてましたし」
「実はぁ、矜持さんを治療した覚えがないんですよねぇ」
これはまずい流れだが戦闘中も何度かあった。
「だーかーらー、あんなの落ち着いて動きを見て動けば誰でもできるって…たしかに拳法は少し齧ったけど才能は無いし相手が強くなれば拳なんて通らないだろ?」
怪しまれないようにと少しずつ自分の情報をバラしてしまっているのでいつかバレるかもしれないと怖がりながらもなんとかわかりにくい嘘をつき続ける。
「そんなに言うならもういいの、それより私の戦い方のダメなところなんだけど」
「防御が薄い」
すかさずレントが答える。
「いつも俺がとっさの対応どうするんだって言ってたのに魔法があるから大丈夫って言って変えなかったろ」
「だって私が使える剣なんて重さ的にレイピアしか無かったんだから仕方ないじゃない!」
「いやあれを片手で扱えるならそこそこの重さの両手持ちの剣使えたろ!?かっこいいからってレイピアにしたの覚えてるからな!?」
「あーあー、聞こえないー、それに実際急所を突くならレイピア便利なんですーってそんなのはもういいの」
「もういいってなんだよ、お前から言ったくせに」
「そうじゃないのよ」
エリアスがレントとの言い合いを強引に切り次の言葉へのタメを作ったところへ
「シンちゃんとのぉ」
「連携…ですよね」
シスカとクリスに台詞を取られる。
「言われちゃった!?まあそうなの、今までって私の魔法とシンの魔法が被ってるからあんまり出番があげれなかったんだけど…シンに防御を任せようと思う」
最後は少しだけ真剣に言う。
「シン、エリアスはお前に命を預けるってさ。守ってやれるか?」
「シャッ!」
シンも任せろという意気込みを見せる。
「でもエリアス、わかってるな?」
「ええ、精霊が使う魔法の魔力も契約者が負担するわけだから避けれる攻撃に防御魔法を使えば魔力が無駄になる…よね?あってる?」
「おう、あってる。ただ精霊は権能って言ってそれぞれが司るものに対しては魔力を使わなくてもある程度干渉できるから魔力消費は少ないな、それでも完全に自立して動いてもらうなら息を合わせるの大変だぞ」
「私たちもそれでそれぞれの役割決めてのコンビネーション技か合図しての攻撃ですしぃ」
「そうなんですよね…私とフィーもそれは諦めました…」
「それをわかってて、それでも私はシンに任せるの。だからお願いね?シン」
「シャッ!」
「よし!それじゃあ今日の主な反省は終わりだな!飯にしよーぜ、飯!腹減った!」
「レント…もう少し余韻とかそんなの気にしようぜ…」
「そこを気にしないのがレントだから諦めて矜持、すぐに用意するわ」
エリアスはそう言って何度か詠唱して鍋とおたまを作る。
「やっぱエリアスってすごいよな、即興で鍋とおたま作るって」
「そうですね…私もシスカさんも自分がほぼ何も考えずにできる先天魔法以外はそれに近いものしか使えませんし…そういう意味では矜持さんも凄いですよ?水と火が出せるんですから」
「旅をしてるとどうしても必要な時があるからそれだけは頑張って暗記したんだよ、その場で魔法考えるのは先天で与えられた魔法だけ」
「俺は魔法使えないから凄さわからないけどな!魔道具もこの制服と実家にずっとあるらしいこれだけだし」
そう言ってレントが取り出すのは短剣、魔力を込める事で長剣になるそれは実家に伝わってきたものらしい。
「珍しいですよね…刀身を作るタイプなら最初から短剣である必要は無いですし」
「最初から武器の形してるなら鞘に入れると折れても治るとか、切りつけたら毒や電気を流すとかですしぃ」
「まあ最悪魔力が無くても戦えるしレントには向いてるんじゃないか?」
「おう!こいつは俺の相棒だからな!」
「そう思うんなら手入れしてやれよ、ちょっと貸してくれ」
「おう、すまん!」
レントは素直に矜持に鞘ごと渡す。
「ほら、持ち手に着いた血とかひどいじゃねーか」
矜持が手の平の方に球体の水を出しそこへ短剣の持ち手を入れて手でこするとどんどん汚れが落ちていく。
「道具とかも無いし適当にしかできないけどできることはしてやらないと可愛そうだろ」
「マジすまん…」
「矜持さんってたまに几帳面ですよね」
「命を預けるものは出来る限り手入れしないと異常が出たら困るからな」
そうこうしてるうちにエリアスの方が簡単なご飯を作り終える。
「はいはい、具のほぼないシチューできたわよー」
「「「「はーい」」」」
ほんの少しのトラブルはあったものの、原因を理解し改善案を出し確実にチームは成長していく。
このチームのこれからを表すように実戦1日目は終わった。