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信じ2



職員手帳に指名依頼が届く、実際にはただの指示だ。

職員手帳は機能を絞る事による長時間の稼働と耐久性にリソースを割いているのでその機能を応用する事がままある、内容は妖界に都市伝説(フォークロア)が出現したという事態に対応するため作戦を練り直すという事らしい。


「おかしいですね」


悠里が呟いた。


「何がです?」


それを拾ったのはエリアス


「クオリアがこんな指示を出すとは思えません、妖界に戻ったところで私たちにできることはほぼありませんし、これが新規の依頼としてトップに来たのならともかく指名依頼としてくるのはおかしいです」


「なんで指名依頼だとおかしいんですかぁ?」


「指名依頼だと通知音が鳴るので呼び出しに使うのはおかしくありませんが、それなら新たに補充された施設の人員だけで良いはずです。それをわざわざ私たちにまでというのはクオリアらしくありません、何かあっても一人でだいたい対応できるはずです」


「そ…それなら対応できないほどの事が起きてるんじゃ…」


「それなら余計に私たちが手を出せません…避難誘導にしても妖達が暴れてしまえば抑えることのできない私たちが行っても危険なだけでしょう」


言われてみればおかしな点は見えてくる、一方で自分たちには考えつかない何かが起きていてそれに対応するのに自分たちが必要な可能性もある。例えば


「私たちの精霊が必要な場合…とかもありません?」


「そう…ですね…それはあるかもしれません…」


「どうしたんですかぁ?指示に従わないなんて悠里さんの性格にしたら珍しそうですけどぉ?」


シスカが気になるのも当然だ、真面目一辺倒な悠里が指示に違和感があるからと言って難色を示すのはらしくない、あくまで違和感でしかないのだ、実際に居合わせて全てを把握した上で間違っていると思ったのなら従わない事はあるだろうがわからないことに対しては何か事情があるのだろうとまずは知ろうとするタイプの人間のはずだ。


「矜持さんが失踪…おそらく死亡というエルドさんの言葉を疑う気持ちはありません、ただそれは事実では無いと思います」


「ど…どういうことですか!?」


まだ失踪という段階であるのでその希望にすがり平静を装っていた悠里以外の三人は露骨に表情を変えていた。


「そのままの意味です、エルドさんにはそのように見えたのかもしれませんが事実とは異なる、という事です。具体的な例をあげるならば矜持さんがエルドさんに催眠をかけた、直後の化け物の消失も合わせて見えない速度で行動した、などでしょうか」


「そ…そんな事をなんで!」


「必要だと感じたから、しか無いかと。あの時矜持さんは資料に目を通して知った事、彼独自の能力による化け物の在り方についての見解、などもありますし何より…あの場にいた明らかに怪しい人物…朱さんに対するアドバンテージを取る為の行動だとすれば納得がいくんです」


「朱ちゃんが怪しい、って事ですか?」


エリアスの問いに悠里はコクンと頷く。


「矜持さんの力の一つには夢というのもあったはずです、彼自身が使うには相手に死を感じさせてできた意識の隙間から侵食して眠らせるという方法ですが、力の元である精霊が行使するなら話は変わるはずです、それが朱さんが意識不明になった原因…というのはどうでしょう」


「てことは矜持は!」


「十中八九生きています、というより話に聞く限りの実力なら死ぬはずが無いかと」


「でもぉ…それがどうして指示に対する疑念にかわるんですかぁ?」


「クオリアなら私と同じ考えのはずです、その彼女が妖界からせっかく遠ざけたはずの…朱さんから遠ざけたはずの私たちをまた妖界に戻す…なんてあり得ますか?」


「「「……」」」


悠里が最も警戒しているのは朱だ、この指示がクオリアのものでない可能性、それを悠里が警戒している。


「まだあります、私が朱さんを疑う理由は…彼女の服装、彼女と同じ服を着た人を見かけませんでした、その割に周りの視線を集めなかったこと、そして彼女がどのように生計を立てているのか一切見えない事です。

学生ならバイト先や学校、親元の事を考えてこんな何日も突然の予定を入れるなどできない、もしくはなんらかの連絡をしてから妖界へ向かうはずです、ですが私たちが妖界に案内した時の彼女はそのどちらも行わなかった…もし…もしですよ?彼女が悪人であった場合なら身軽さにも納得がいきます、そして矜持さんが身を隠したのにも…」


「たしかに…もしそれで支部を乗っ取っていたり…いいえ…街中で視線を集めなかったこと、私たちが彼女を疑っていなかった事を含めて認識をいじる力を持っていたとしたら…」


「クオリアとして指示を出して私たちをどうにかするつもりかもしれない…」


違和感を追求した悠里の目に灯るのは自身の考えへの信頼だった。







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