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港町サザナミへ向かって2



「「何もねえ…」」


宿はもともと港町サザナミと近くの主要都市の間という事でサザナミが機能停止していて空きは沢山あったので簡単に取れたのだが問題はそこからだった。


自由行動で街へ出た矜持とレントにとって楽しめそうな場所が一つもなかったのだ。

逆にどこなら楽しいのかと聞かれても困るのだが適当に歩いて露店などを見ていて惹かれるものが無かった。


「くそー!せめて面白そうなお菓子でもあればよかったのに!」


「時間的に宿に帰ってから飯は食うしあんまり重いのは食えないもんな…」


「いや…矜持!よくよく考えたら重いもの食えばいいんだよ!俺ら大食いじゃん!」


ご飯の前に食べ過ぎてはいけないと育てられてきた矜持にその発想はなかった。


「朝昼晩晩の4食…レントお前天才だな!宿は小洒落たの出すだろうし…がっつり肉いきたいな」


「よっしゃ!今からは旨そうな肉料理探しだ!」


細身な割によく食べるレントとそのゴツめのガタイらしくよく食べる矜持は集合時間までに厳選した店で肉料理を食べることにした時女子側では


「か…かわいい…」


「「えぇ…」」


雑貨屋に置かれたタコのぬいぐるみにクリスが食いついていた。

そのタコのぬいぐるみというのが妙にリアルで他の2人からすると気持ち悪かったのだがクリスはかなり気に入ったようだ。もちろんかさばるので購入はしないが…


矜持とレントと違って点々とある雑貨屋で1人が気になったものに3人でいろいろと話せるのでこちらは簡単に暇が潰せそうだった。


極端に暇を作ろうとしないのは初仕事への不安をできる限り紛らわすためだ、明日からは魔物とのはじめての実戦…その恐怖を矜持を除く全員がうっすらと感じていた。


そして集合時間となり宿の大部屋で全員で(・・・)食事をとる。つまりは同じ部屋に泊まるのだ。


「ねぇ、今更だけどなんで一部屋にしたのよ矜持」


「みんな初仕事で結構不安だろ?一緒にいる人数は多い方がいい。男女同じ部屋については明日に一回、帰りに一回どうせ一緒に寝るしこれから先チームとして活動するならよくあることだろ」


「そうね…というか矜持は緊張してないみたいな言い方ね?」


「それも旅で慣れましたかぁ?」


旅はしていたと言ったが比連に所属していたとは言っていないのでこれは失敗したと矜持は思う。


「魔物と遭遇するのには慣れてるからみんなよりはマシ…仕事には少し緊張してる」


「わ、私なんて緊張で死にそうです!」


「とまあそんなわけで一部屋な、いっそのこと不安とか打ち明けといた方が楽だと思う」


経験則からそう言う、自分はそうやって吐き出して支えられてなんとかやってきたのだから。


「じゃあ私から、実戦でちゃんと体が動くのか、魔法も剣も使って戦うのにパニクって変な行動をしないかとても心配」


そう告白するのはエリアス、レイピアと土魔法を使うテクニカルな戦闘スタイルの彼女はどちらにおいても頭を使う必要があり実戦でそれを発揮できるのか不安なのだ。


「大丈夫だ、俺に任せろ!」


それに応えるのはレント


「俺は魔法が使えない上に武器は丈夫な剣だから単純だしな守ってやるよ!代わりに遠距離は任せた!」


「レントさんは不安が無さそうですねぇ、私はちゃんと皆さんを癒せるか不安で…間に合わなかったらどうしようと…それに攻撃はルールーに任せっきりですし」


そう言ってシスカは胸のあたりに手を皿のようにだすと手のひらに7cm程度の頭と両腕が蕾になっている人型の精霊が現れる。


その精霊、ルールーは任せて!というように自分の胸をとんとん叩く


「シスカの活性魔法があるだけで多少の怪我は平気って安心できるから助かるわ、それにルールーとのコンビネーションもね」


「わ…私はですね…その…魔法使いって言ってもお二人のように自分の得意な系統なら自由に…なんて事もなくて…戦闘中にできるのは爆弾を出すか元になる火薬を出すか頑張って直接爆発させるくらいで…役に立てるかどうかすら…」


「パーティー最高火力が何言ってるんだよ、俺なんて魔物相手の戦闘じゃ全く役に立たない局面もあるんだからな」


「矜持はそれでいいわよ、罠を張るのが基本なんでしょ?とどめは他人に譲らないとダメでもレントと真っ向勝負で縛り上げれるんだし」


「レントは動きが読みやすいからな」


「それに、今も『安定』の魔法使って私たちの心を落ち着けてくれてるでしょ?」


「あれ?バレてた?」


「そりゃもう最初からね、言わせようと思ったのに隠すから…チームのみんなに自分の貢献をもっと誇っていいのに」


矜持が得意な魔法は『安定』それによって異常な密度まで魔力を収束させられるし今のようにみんなの心を落ち着けることもできる。

それにエリアスは気づいていたのだ。


「恥ずかしいんだよ、見た目の割に魔法が優しすぎるって言われるから」


「得意な魔法なんて自分で選べるものでも無いじゃない、気づいたらそれだけは簡単に扱えるようになってるんだし、恥ずかしがらなくても素晴らしい魔法じゃない」


「そうです!矜持さんがそれを使ってくれるとわたしでも少しまともに話せるんです!」


エリアスに続きクリスまでも続ける。


「あー、もう早く寝よう!明日からは大変なんだから」


「何言ってんだよ矜持、こんな修学旅行の夜みたいな空気楽しくてなかなか寝れねーよ。でもベッドに入って電気を消すのは賛成だ、そっちの方がそれっぽいしな!」


「そうね、馬車に乗ってたからあんまり疲れてないけど眠たくなった人から寝れるようにベッドには入っておきましょう」


そして左から順にシスカ、クリス、エリアス、レント、矜持の横並びで寝ることになった。


「ほ…ほんとに修学旅行みたいですね…あ、でも恋バナは無しですよ?男女混合ですし」


「クリスさんのほうでも修学旅行は恋バナって決まってたんですねぇ」


「私たちの方もよ、あの時は大変だったなぁ」


「修学旅行ってそういうもんなのか」


「いや、男はそんな事も…いやあったわ、そんなもんだわ」


恋バナなるものは昔、護衛依頼を師匠ペアの虎徹とクリヴァールが受けた時に矜持とクオリアも依頼とは名ばかりの遊び相手の場合もしっかりと護衛する場合でもよく振られたものだ。

師匠ペアに訓練で挑むうちにお互いの次に欲する行動が読めるようになった頃には最高の相棒と言っていたのだから今の関係は収まるべきところに収まった感じだ。


それこそ約束しなくてもクオリアが矜持を待ってくれていたように他の誰と組んでもハマらない(・・・・・)と感じるほどに


「そうか、ならいつかそれも経験しないとな」


「そのうち比連校のイベントで泊まりがあるさ、あの学校生徒間の繋がり増やすためにアホほどイベントやってるし」


「それはいいな、じゃあ俺はもうほんとに寝るわ」


「つれねーな、しゃあないじゃあ俺も寝るわ」


その晩レントの寝相が悪いせいでエリアスに抱きついたりやらシスカが寝ぼけてレントに覆いかぶさったり色々あったらしいがいつも通りクリスと矜持は蚊帳の外だった。

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