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エリアスの悩み



二週間ぶりとはいえそれまでずっと一緒にいた分、感覚的には随分と長く感じていたレント達は、再会を喜びはしたが話そうとしても二週間分でそれぞれ鍛えていたくらいなので言葉が見つからなかった。


そして忘れてはいけないのはエリアス達は仕事で来ているという事、クオリアは単独行動していた矜持と合流した形であるためにここからの行動を共にできるが彼女らはそうではない。


矜持の案内で表側の人間界と裏側の妖界を繋ぐ門、その付近の宿屋に案内される。


「人間界側で調査してる人たちはちょっと前からここに泊まって情報交換してるから、生徒手帳の依頼のところ見せたら受付の人が色々と案内してくれると思う」


何かあれば妖界から人間界に応援に行くため、既に顔合わせを済ませてある矜持は特に問題は無いだろうと簡単な説明だけにしておく。


確かエルド、ミチル、健一…etc.6人ほど居たが最初に話した感じでは性格に問題がある人物はいなかったように思える。


というか普通にいい人、が多い羽階級の正規職員たちで挨拶して少し話したくらいの矜持はよく覚えていないのだ。


「じゃ、俺もクオリアと読がどうなってるか不安だからもう行くわ」


少し頭が痛そうな矜持について来て欲しい、とは自分たちが受けた仕事だから大丈夫、という意味よりも修羅場?かはよくわからないが大変そうだ、という同情的な意味で誰も言えなかった。


「私は慣れてますし大丈夫です、ご武運を…」


もともと少数で活動していたためこういう状況に慣れている悠里が快く矜持を送り出してやり、残された一年生組3人も特に不安を抱えることなくそれを見送ってやれた。


「色々と話したいからとりあえず2人にしてってクオリアさんと読ちゃん…さん?の2人に言われた時の矜持の表情、なんとも言えなさすぎて凄かったよね」


「初めてコーヒーを飲んだ子どもみたいでしたぁ」


「苦虫を噛み潰した…ってあんな感じなんでしょうか…」


「今どんな会話が繰り広げられているかも気が気ではないでしょうね…」


4人はますます同情を強くしため息を吐く、だがそれだけでは終わらない、彼女らもまた気が気ではない事があるのだ。


「それもだけどレントよ!デレデレして!私だって胸があれば!胸があれば!」


悔しそうにするエリアスの胸を見て可哀想なものを見る目でシスカが


「えっとぉ…ご愁傷様ですぅ…」


シスカの豊満な胸を見て涙まで流ししゃがみこんだエリアスだが、今はなにも言葉をかけてはいけない事をクリスはもう学んでいる、大きい訳ではないが確かに胸におもちを持っているクリスが慰めるとエリアスは余計に涙を流すのだ。


それを知らないのはシスカのように体型に不釣り合いなほど大きい、とは感じないがそれは高身長であるためで、十分大きい部類に入る悠里が慰めの言葉をかける。


「その…まだ16歳ならこれからも成長するから安心するといい」


「悠里さんは…悠里さんは16歳からも成長したんですね…そして『も』って事はそれまでも成長してたんですよね…わたしは!私は今まで成長を感じたことなんてほとんど無いのに!」


クリスの経験則通りエリアスの涙は強くなる、胸はありすぎてもなさ過ぎても服選びに困るなどの理由もあるが、エリアスがここまで真剣な理由はレントの気を引きたいというのが少なからずあるはずだ。


もう早く付き合ってしまえばいいのに…とクリスは思う、レントの方もエリアスに対して好意があるのは親しい人から見たらふとした瞬間に見て取れるのだ。


だがそれを口にしようとするとほんの少しつっかえるようにして出てこない。


でもこの感情を好きと呼んではいけないとクリスは感じている、今まで親しく接した異性がいないから何となくレントや矜持に惹かれているだけ。


自分の気持ちをそんな風に評価しているクリスが真剣にレントの事を昔からずっと好きなエリアスや、二人の気持ちを知っていても諦めないシスカの前でそれを口にするのは…もはや二人に対しての侮辱であるとまで考えている。


それほどまでに真剣に考えるほどにレントの事も、そしてエリアスとシスカの事も好き、それが答えだという事にはまだ気づけていない。


「配慮が足りない慰め方をしてすまない…私はどうすれば…」


あたふたする悠里だが、既に何度か経験のあるシスカとクリスは慣れたもので


「大丈夫ですよぉ、気にしなくても〜」


「まず仕事を進めましょう、エリアスさん!」


やるべき事を言えば立ち上がる、比連職員とはそういうものだ。


「うん、まずは宿を取るところからだけど…慣れてるなら悠里さんに任せてもいい?」


当然のようにスッと立ち上がり、泣き跡はわかるがいつも通りの表情のエリアスに戻る。


その変わり様に悠里も思わずふふっと笑う。


「その切り替え方を覚えるの早いですね、私はもっと経験を積んでからでないとできなかったので頼もしいです、もちろんやらせてもらいますよ」


今回は情報収集が仕事だ、危険が無いとは言えないため気を抜きすぎるという事はないが幾分か気持ち的には幾分か楽なため特に良い方向に働いたようだ。



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