何となくそんな気はしてた
矜持が施設の調査を終えた時点で、レントと矜持が第43世界に来てから既に2週間が経っていた。
第43世界、裏の面である妖界とは逆に表の人間'しか'いない人間界、そちらに現れ始めたという噂の知名度が力になる存在『都市伝説』の調査、当然正規職員が担当するのだが.矜持の受け持った調査と違うのは『存在している事は確かである事』。
つまり見つけるまで終われない、人手の必要な仕事だということになる、であれば比連校にも依頼が掲示される。
「これ、受けよう!」
エリアスがサイドテールの金髪を大きく揺らし掲げるのはまさにそれ、レントと矜持がいるのは裏の妖界側と表の人間界側で違うにしても向こうに行けば会う機会があるだろう、という事だ。
「賛成ですぅ」
エリアスと同じようにレントのことが好きなシスカも小さく手をあげて賛成する、動きが小さいのもあり彼女の緑色のおさげは乱れない。
「で…でもクオリアさんとの特訓は…」
赤い前髪で目が隠れていて表情が読みにくいが申し訳なさそうにしているのが全身の雰囲気から伝わる少女がクリス
「そうですね…でも特訓はクオリアの時間をとってしまうわけですし、どちらにしても止める気は無いでしょう?」
硬い喋り方、しかしどこか優しい雰囲気の口調な黒髪をポニーテールにした美人、悠里がクオリアに問いかける。
「ええ、どっちでもいいと思うわ。特訓なら短期で魔法の技術があがるけど、仕事で得た経験は長期的に見たら色んなところで役に立つだろうし」
美しい銀髪、余裕のある表情でどちらを選んでもいい事はあると伝えるクオリアの意見でクリスは否定する理由がなくなる。
「私は行きたい!」
再度自分の意見をはっきりさせるエリアス、まっすぐと伝える彼女に反対意見は出ず、依頼を受ける事が決まった。
すぐに諸々の手続きを終えた彼女たちは一度妖界を経由してから人間界の方へ向かう、今から向かう43世界の人間界は魔法などがほとんど失われた世界であるため比連の支部を置く事が認めてもらえなかったためだ。
「ごめんね、私は向こうについたら矜持と合流するから」
「いえ!もともとチームが違うので仕方ないですよ、いくら強くても基本単独行動は良くないですし!」
少し申し訳なさそうなクオリアにそんなのは当然だと首を振るエリアス、それに合わせて動くサイドテールの動きがどこか面白くてクオリアは意識を取られる。
「さすがに調査だけなら大丈夫だと思うけど…なんなら私と矜持のどっちかは調査に回れるか向こうについてから考えるわよ?」
「どちらにしても別行動でしょうし気にしなくていいですよ、お互い仕事ですから」
そんな会話をしているうちに事務的に転移は進められていく。
そして光に包まれた後、彼女らの目に映ったのは矜持とレントの姿。
人間界側の調査をする人員の中で比連校の生徒がもの凄い速さで依頼を受けたと聞いた、たぶんエリアス達だろうと思って出迎えにレントも連れてきたら予想通りだった。
「あ、ほんとに矜持の言う通りになった」
あれだけ会いたがっていたのに矜持の言っていた事が本当になったことに対する関心が強くぽけーっと答えるレントに対して女性陣はそのうち会えると思ってはいたが急すぎて言葉も出ていない。
「なぁ〜にレントくん、彼女ー?」
そしてそのレントの後ろから青い肌に黒い目、凄まじいまでのボリュームを誇るその胸部、額にはツノも存在している明らかに酒乱ですというような酒瓶を抱えた女性が現れ、そのままレントにしなだれかかる。
「「は?」」
エリアスとシスカの声が重なる。
「ん、矜持すごい…それで、あの人がクオリア?」
矜持の後ろにもピンクの髪の10歳くらいの見た目の少女が隠れていたようで、矜持に寄りかかるように抱きつきクオリアの方を指差している。
「そうよ、私がクオリア、あなたは?」
「読、こう見えても矜持より歳上、あと矜持が好きだからあなたに認めて欲しい」
あちゃー、というように額に手を当てたクオリアだが、頭ごなしにダメだと言うつもりはない、矜持の利益に繋がるならクオリア的には認めてもいいのだ。
「わかった、私が矜持に有用だとあなたに証明する」
何も言っていないのに理解した読にクオリアは一瞬驚くが頭の中で何パターンかその理由をすぐに弾き出す、その中の一つには当然正解がある。
「ん、心を読むであってる」
それはもう大いに有用だろう、ならクオリアが気にするのは読の性格だけだ。
「そっちもこれから証明していくから、よろしく」
「ええ、よろしく読さん」
2人は早々ににこやかに握手を交わす、うって変わってレントの方は収集がついていない。
「みんな落ち着きなさいよ、レント君はエリアスさんとシスカさんが惚れた相手だし、矜持も私が惚れた相手よ?正直こうなるって、なんとなくそんな気がしてたじゃない?」
「「ぐっ…」」
その言葉に反論は無かった。