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港町サザナミへ向かって



「少しマシになってきた」


「私はもう少し待ってほしいですぅ」


「わ、私ももう大丈夫です」


「よし!じゃあシスカは俺が運ぼう!」


エリアスとクリスが回復したところでレントがシスカを抱き上げる


「レレレ、レントさん!恥ずかしいですよぅ!」


「でも早く目的地に行かないと…ここから移動しないといけないし…」


「レント、あんまり揺らすなよ?」


「おーけー矜持、このままでいいってことだな」


「おう、じゃあさっさと馬車手配しにいこう」


転移装置は世界毎に主要な都市にしか配置されていないため最寄りの場所に転移しても時間がかかることはよくある。


「ねえ矜持、あんたこの世界には来たことあるの?」


「あるよ、多分日帰りとかも含めたら結構色々なところは経験あるはず。でもこの辺は初めてだと思う」


「そう…やっぱり異世界で地理に詳しい人がいないって不安になるね」


「大丈夫大丈夫、事前に確認した通り今日中に地震があった町、サザナミの森を挟んでこっち側の町まで馬車でいく。そこから森を迂回するルートをたぶんちょいちょい魔物と戦いながら徒歩2日くらいでいけるはず」


「ん、旅人歴11年のベテランさん信じてるからね」


「おう、代わりにめんどくさい事務仕事は頼んだぜお嬢様」


「ええ!お嬢様じゃないけど銅翼のお父さんがいるからそれくらいなら任せて!」


「エリアスって幼馴染の俺より矜持と息合ってる気がするんだけど気のせいか?」


「気のせいじゃないんじゃない?、矜持って勉強はできないみたいだけど頭は悪くないし、旅に便利な生活レベルの魔法ならある程度つかえるし」


「俺が魔法を使えないのは魔力経がないからだろ!俺だって勉強はしてないからできないだけだ!」


「あんたはやれる環境だったのにやらなかったんじゃない、矜持はそもそもできる環境じゃなかったんだから違うから」


「それを言われると耳が痛いけど部活とお前と一緒に戦える男になるための特訓で勉強なんてしてられなかったんだよ…」


「レント…」


「おーいレント、エリアスとイチャつくのもいいけど腕の中のシスカがむくれてるぞ、それからクリスがさっきから寂しそうだ」


「「イチャついてねーよ!(ないから!)」」


「あ、停留所見えた」


「無視すんな矜持!」


騒ぐがシスカを抱えてるので反撃できないレントをスルーして馬車の御者に目的地と人数を伝えてこっちに来る前に交換しておいた通貨を渡す。


馬車に乗ると酔うかもしれないがさすがに結構時間も経ってるしシスカも平気だろう。

全員揃ったところで馬車が走り出す。


「おー、馬車って初めてだけどなんか楽しいな」


さっきの怒りを一瞬で切り替えたレントがそんな感想を言うが


「多分すぐに飽きる、今日の夕方くらいに町に着くまでずっと馬車だぞ」


「そうだった…馬車つれえ」


「あ、お昼のお弁当は頑張ったんでその…なんというか…はい」


「まじで!?この前クリスが持って来てくれた弁当も美味しかったしそれは楽しみだ!」


チーム『スピリッツ』は女子全員が料理ができるハイスペックパーティーだ、男子は壊滅的だが


「改めてこのチーム女子が優秀過ぎるな…」


「そう言う矜持も引く手数多だったじゃない、微妙だったのはレントくらいね」


「それでもレントさんがいないと前衛不足でこまりますよぅ」


「はい…私とシスカさんは後衛しか出来ませんから…」


「俺も足止めとかはできるけどとどめの一撃をしてくれる人がいてくれないとな…」


「みんなぁ…」


「あんまり甘やかさないでよ、こいつすぐ調子に乗るんだから」


「エリアスが厳しすぎる…」


「まあ落ち込むなよレント、確かに剣士ってありふれてたしその中でレントはとくに個性も優れてるところも無かったけどこのチームには必要なんだ」


「それはもはや喧嘩売ってるだろ矜持!」


「おう!だからこれで勝負だレント!」


そう言って矜持が取り出したのはトランプ


「矜持…遊びに来たんじゃないって一番言ってたよね?」


「いや、やったことなくて…それにエリアスも普通に会話楽しんでたじゃん。今は警戒する必要もないし明日以降は大変なんだから今から気を張ろうとするなよ」


「矜持さんただやりたいのがほとんどですよねぇ」


「で…でも言ってることは間違ってる気はしないです」


「俺はもちろん賛成、どうせやる事ないんだし仕事中かもしれないけどこれくらいの遊びはいいんじゃないか?」


4人が賛成した上に意固地になる理由もなくエリアスも承知する。


「わかった、で、何をするの?」


「初めてならやっぱりババ抜きだろ」


「そうですね、矜持さんババ抜きは知ってますか?」


「ああ、勉強して来たからな!」


「なんの勉強をしてきたんですか…」


全員が若干呆れながらもトランプをした事がない矜持が楽しめるならとババ抜きを始める。

レント以外は子どもの時にそんな遊びをする暇も無かったと勘違いしているが暇が一切なかったのではなくこんな風に何人も集まって屋内にいることがなかっただけだ。

矜持とて多少は遊ぶ時間があったのだがそれについて今この馬車で語られることはない。


「さあ矜持、右がババだぜ、引けよ」


そうしてレントはレントから見て右のカードを取りやすいように上に上げる、実際にババだ。


一ゲーム目の佳境、レントと矜持の一騎討ちが始まっていた。


「ところで2人とも、負けた場合の罰ゲームは何かしら?」


「お前自分が上がったからって罰ゲームは卑怯だろエリアス!」


「次から負けたら私たちもしっかりと罰ゲームを受けるから、ね?」


「それよりレント、ババがどっちか教えたら俺の勝ちだろう」


矜持がそう言ってレントから見て左のカードを抜き取り上がる。


「はーい、レントの負けー、あの手の心理戦は矜持がもう少しゲームに慣れてからするべきだったのにね」


あんたほんとバカねーとくすくすエリアスが笑っている。


「次は絶対にエリアスを最下位にしてやる…」


「で、罰ゲームはどうする?」


「語尾を変えるなんてどうですかぁ?」


「そうね、じゃあ語尾をニャーでよろしくねレント」


「く、くそったれにゃー!」


その後昼ごはんを挟んでからは七並べや大富豪に勤しんだ結果


「レントちゃん、なにか喋ってわん」


顔を手で覆うようにしながらキメ顔でエリアスがそういい


「いやだニャーワンブヒポッポー」


もはや何かわからない語尾のレントが最後に投げキッスをするとかいう拷問を受ける


ついでに座席はいつものように男女で対面に座っているので女子に向けてだ。


「罰ゲームって怖えな…それと上腕二頭筋」


矜持は語尾に上腕二頭筋とつけた上で力こぶを作るポーズを取る。


「レントちゃんが負けすぎですねぇ」


「ちゃん付けで呼ばれるの似合ってます…!うぅ…私も語尾とかにして欲しかったです…」


クリスはいつも目を隠していた前髪をシスカが持っていたピンで止められて恥ずかしくてたまらないようだ。何気にシスカは無敗だ。


「まあでも結構楽しかったな、待ち時間も潰れたし…それと上腕二頭筋」


「上腕二頭筋はつぶさないで…ここら辺で罰ゲームはリセットするわん」


「だぁー!やっと普通に喋れる!それに馬車って乗ってるだけで疲れるな…体がバッキバキだ」


「町についたら宿取ってちょっと自由行動にするか、基本単独行動は禁止な」


「例外は?」


「俺」


「待て矜持、それだと俺が外に出れないだろ」


「そうね、じゃあ女子と男子で別れて行動にしましょう」


「了解」


それから少しして御者から着いたと言われる。


「んじゃ明日からはしんどいから今日はしっかり休むぞー」


「「「「おー!」」」」


そうして5人は町に踏み込んだ。

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