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開始(妖界にて



『幸福の徒』に関して、そして現状保留ではあるが彼ら息がかかり災厄を起こす可能性のある『都市伝説(フォークロア)』について聞き込みを行おうとしている矜持に対してついて行くと言った(さとり)という心を読む妖怪の読だが、読がいると聞き込みが簡単すぎる。


「私はいい、出してあげて」


急に読から声をかけられる、必要な情報は読が渡してくれるとの事なので声をかけて回る必要がなく、ラティファを出してあげようかなと考えているのがわかったようだ。


「ありがとな」


「どういたしまして」


お礼を言ってから心の中でラティファに問いかけてみる、嬉しそうに出ると元気に返事をしてくれるのですぐに出してあげた。


「ふわぁあああ!兄さん!何かすごいです!こう、ふんいきがすごいです!」


セラフェリアの和風はこの妖怪の町などに見られるいくつかの世界が源流だが確かに本場は少し雰囲気が違う。

似たような風土であれば建築様式がどの世界でも似ていく、そしてどの世界でも言語が統一されているように名前も統一されている。

ルシファーさんに会った事も考えるとその辺は天使が調整しているのだろうか…管理のしやすさ的な意味で。

色々な世界を行き来する第0世界のセラフェリアはそれらを貪欲に取り入れているが特に和風と呼ばれる物はかなりの人気だ。


かく言う俺自身も和風に位置する刀を使っているのでかなり好きだったりする。


「せっかくだから和服きたら?」


読が俺の和風が好きという心を察して提案してくれるがさすがに仕事中に制服を脱ぐのは…いやでも現地に溶け込むためには必要でよくやる事だし…でもここでは普通に制服も受け入れられてるし…


「兄さん!一緒に和服着ませんか?」


「着る!」


現地に紛れるためだから仕方ない!



というわけで訪れたのは服屋、と言ってもラティファはハルディスがすぐに作ってくれたので買うのは俺のだけなので青紫の着物をすぐに買い、そのまま着替えた。


「兄さん似合ってます!」


「私の見立てに間違いは無かった…今夜は寝かせない」


2人の身長はどちらも10歳くらいに見え同じくらいなのに1人は純粋に、1人は含みを持たせて褒めてくる。

まあ実年齢で考えればそんな物か。


「ありがとう、でも読、そういうのは合意の上でだからな?読が本気なら俺は別に宿を取るんだけど」


「冗談…も入ってた、ごめんなさい。でも照れ隠しで軽く言ってるだけで本心なのも忘れないでほしい」


ストレートにこういう事を言われると照れてしまう…なんだかんだ歳上だし心を読める読には言葉で勝てる日はこないだろう。


「うん、ありがとう。でも少なくとも今の俺は読の気持ちには答えられないよ」


「うん、それでいい。とにかく聞き込みの続きいこ?楽しさと私の魅力で振り向かせるから」


横にラティファがいるからこそ彼女の笑みはとても際立った、あまりにも美しく蠱惑的な笑みが。


「お手柔らかに頼むよ」


「そうしたら矜持には届かない、私がこんな風なのは矜持に彼女ができたせい、すごく…すごく大切に思ってるのがよくわかる」


「うん、それは間違いない!」


今だって俺の気持ちが本物だって読のお墨付きを貰えて嬉しいのだから。


「むぅ…これは厳しい戦い…」


頬を膨らませた読だがそのあと遊ん…聞き込みを続けたらすぐに機嫌を直していた。



一方レントはいつのまにかそこにいるという特性を持つ妖怪、ぬらりひょんの六元(りくげん)に連れられ大きな屋敷へと連れてこられていた。


「とりあえず部屋に案内しよう、悪いが最初の確認があるのでゆっくりしてもらう時間はないのだがね」


町中でもそうだったがぬらりひょんであるからか彼の歩みはするすると淀みがなく無駄がない、『無明』という完全に無駄を省いた先にたどり着く境地を技とするレントにとってはその歩みがすでに学ぶべきものだった。


そうして自分もできないかと試行錯誤を繰り返すうちにすぐに割り当てられた部屋に来たようだ。


「ここを自由に使っていい、ただ出て行く時は買ったものを持ち帰る訳じゃからその辺は気をつけてな、二年居座った奴が居たんだが最後は大変だったんじゃよ」


カッカッカと笑う六元だが2年…そんな事もあるのかと少し怖くなる。

スッと急に部屋にあった障子が開く、現れたのは上下ともに黒の服の男。


「お、新入り?俺は隣のカモミール!よろしく!」


「え…どうも…ここ防犯意識やばいっすね、簡単に行き来が楽すぎません?」


あっけにとられながらレントは流石にこれはまずく無いかと思って口走った。


「んぁ?何言ってんだよ、比連の職員、それも翼階級が集まってるのに防犯も何もねーだろ」


言われて気づく、男の格好も腕輪で作り出す比連の制服の第一段階だ。


「あ、そう言えばそうすね、すいません」


「ではレント君は部屋を覚えておくように、わからなくなれば部屋番号の一三七を伝えるといい、ついてきなさい」



再び場所を変えたレントを待っていたのは壁…妖怪のぬりかべだ。


「どもども〜、うぃっすうぃっす、ぬりかべっすー、本名は覚えなくていいから気軽にべーやんて呼んでほしんで、よろしくぅ!」


やけにチャラい…その体と合わせて薄っぺらい奴だなんて言われてそうだ。


「俺はレントって呼んでくれ」


「おっけーレンレン、んじゃあまず俺の事殴ってみよーか!」


早速レントの言ったことを無視しているが殴っても問題無さそうな彼を殴ってみる、予想通り壁は泥のように衝撃を受け止めた。


「いっやー、ダメダメレンレン、本気でやろ?本気で!はいワンモアタイム!」


本気で…矜持も本気でやって掴むものがあると言っていた。魔法は別として身体能力の持てる限りで思い切り拳を放った。


しかしそれもぬりかべには受け止められた。


「オーケーオーケー!どう?自分の魂が力くれてるの感じれた?」


「いや、感じなかった…」


事態を静観していた六元が口を開く


「ではまずはそれを感じ取るための訓練コースじゃの、ちなみにここでは一番下の段階だから頑張りなさい」


こうしてレントの過酷な寮生活が始まった。


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