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事件後



事件から数日、当初は混迷を極めるかと思われたセラフェリアだが既に事態は沈静化が済んでいた。

理由は簡単だ、エリート職員を育てる比連校が精霊と融合させられた人を含め死者0人という結果を出したため、それを前面に押し出し彼らを讃える事を前面に押し出したのが1つ。

レイガスが行った本部へのテロ行為は非戦闘員を狙った卑劣な行いであり彼の言葉は悪人の自己正当化でしかなく資料も全くのデタラメであったこと。


それでも本部襲撃の落ち度が無くなる訳ではないが戦闘員の多く配置されていた箇所に被害が無く研究関連の箇所ばかりが狙われたため、警備をつけるという具体的な対策を打ち出した事、一般に見える被害が小さかった事で不信感を煽る前に事態は沈静化された。


一方で傷跡が残る場所もある。



バターン!と勢いよく開けられたドアが壊れる。


「おいレント!お前は一人で勝手に動くなって言ったろ!」


「しょーがねーだろ!漏れそうだったんだから!」


「お前…トイレは壊してないよな?」


「正直…すまんとは思ってる…」


矜持は拳を硬く握り締め…レントを殴りつけた。


「どうせ全面的に補修しないといけないからちょっとくらいなら壊してもいいって言われてるにしてもそれはないだろ!なんで俺を呼ばないんだよ!」


「馬鹿野郎!大便の時にまで呼んで力加減ができないからトイレットペーパー巻いてくれとか…いや、拭いてくれになるのか?とか代わりに流してくれとか友達に言えるかよ!」


そう、命題の壁を越えて力が跳ね上がったレントが貸し与えられた比連校の一角で破壊活動を今も行なっていた。


「ああ、拭くのは俺も嫌だ。でもやらなきゃならん場合というのがある」


心底嫌そうにしながらもそれが必要なことならばやると矜持は宣言する。

矜持はたまたま仙術という力のコントロールを極める技術を修めていたため介護を必要としなかったが多くの翼階級が通ってきた道だ。


「俺の恥ずかしさとかはどうすればいい?」


自分が迷惑をかける側だとわかっていても消せない羞恥に涙目になりながらレントは質問するが答えはわかりきっている。


「その辺は諦めてくれ…まあいいや、手続きしてきたから明後日からは専用の施設でコントロールできるように練習するぞ」


「ありがとな、何から何まで全部してもらって」


「気にするな、今度なんかで返してくれたらいいし…それに施設のことなら俺は俺でそこでやりたい事があるから直接お前の面倒見てやるわけじゃないけどな」


なんでもない風に言うがここ数日レントの身の回りの世話を一番してくれたのは同性かつレントの力に耐えられる矜持の割合がかなり高い上に、早々に携帯を破壊したレントに代わりエレナを起点に家族への連絡を済ませたり、力の制御法を教わる施設への手続きまでしてくれている。


そんな矜持へ向けてのレントの気持ちは「ありがとう」と「お前エレナと仲良くなりすぎじゃね?」の2つでいっぱいだ。


…本当にいい友達だ、いろんな意味で。レントはだんだんこいつにならケツを拭かせてもいいんじゃないかとちょっと思い始めてくる。


不穏な空気を打ち破るようにエリアスが現れ、シスカが現れ、だんだんと賑やかになっていく。


外見は傷がやや目立つ比連校ではあるが内装はしっかりと守りきったために機能には何一つ問題がなく、多人数で協力して救出、救護を行った事で全体的に仲良くなった雰囲気さえ感じられる。


そんな中で誰よりも変わったのはルイスだろう。


「やぁ、おはよう皆」


爽やかな雰囲気とキラキラとした王子様のようなオーラを出しながら扉を開けた金髪の美男子こそがルイスだ。


思い思いにそれぞれが挨拶を返すがエリアス、レント、シスカは少し顔が引き攣り気味だ。

ルイスの豹変(ひょうへん)ぶりについていけないということらしい。


それに対してクリスは苦手意識を払拭して普通に挨拶を返している、矜持もその変化の理由を知っているのもあり素直に受け入れていた。


「ルイス、他の二人はどうしたんだ?」


「ああ、矜持とレントに不快な思いをさせたくないから待っててもらってるよ、彼女たちは二人に対抗意識持ってるから」


少し困ったように笑うルイスの姿に本当は仲良くして欲しそうな雰囲気を感じる。


「俺は気にしないぞ?」


「ああ、ルイスさえ良ければまた話す機会でも作ろうぜ、これからも何かと会うことになるだろうしさ」


レントも矜持も共に気にしないと言うと少しホッとしたように今度は柔らかな笑みを浮かべる。


二人というのは豹変したルイスに優しくされて惚れた子達の事でルイスとは正式にチームを組んでいる、来年こそはルイス主体で五君子戦に出るのだと意気込んでいるらしい。

そんな子達がなぜ矜持とレントに対抗意識を持っているかというと…


彼女達の決死の告白に対してルイスが出した答えが「僕が好きなのは傲慢だった僕を見捨てないでいてくれた家族とレント、矜持たちだけだ、君たちの事は何も知らないからまずは友達からでどうかな?」と答えたせいだ。


そこにエリアス達が入っていないのは直接的に救けたかどうかなのだろう、一緒に五君子戦に向けて訓練してはいたがやはり真っ直ぐにぶつかった男同士の友情には敵わなかったというところだ。


そんなわけで彼女たちは矜持とレントに対抗意識を燃やしている次第だ。


事件後であるというのに以前よりも和やかな雰囲気が比連校全体を包んでいた。



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