表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/134

無明



空歩(うつほ)を使い一気に悪魔との距離を詰めるが速すぎて姿勢のコントロールが難しくすぐにはそのまま攻撃とはいかず、悪魔の目の前で立ち止まってからの斬撃となった。


「おらぁ!」


それでも急に距離を詰められ全力で振り抜いたこの一撃で倒せると思っていた。


「移動が速くても攻撃がおそければぁ〜、意味なんてありっませんっからっ!」


そう言った悪魔は(かわ)すどころか反撃の拳を剣の持ち手へと放ってくる、まともに食らえば指が剣と悪魔の拳に挟まれ折られてしまう。


だから無理に体制を崩してから空歩を使い距離を取った、向こうがこちらの動きに対応できるようにこちらも対応できる、ならば問題はない。


「急に余裕が見える態度になって…いやですねぇ…なんですか?土壇場で強くなっちゃって自分が物語の主人公みたいになれると勘違いでもしちゃいましたか?あ・わ・れでっすね〜!」


ケラケラと耳障りな笑いをあげやがる悪魔にかなりイラつく。


「んまったくぅ…実は天使だなんて展開かと思えば結局はただの人…ちょーっと命題の壁を越えて人間の枠から外れただ〜けっ!今まで君みたいに土壇場で壁を越えた人がいないとでも?いっくーらでもいて…私はその全てを(ほふ)ってきましたぁ?わかるぅ?君は特別でもないし…今から死ぬ」


たしかに悪魔は強いらしい、それこそ翼階級が複数人で挑むレベルには…だが…


「ナメんなよ…こっちはな…ダチに任されてるんだよ、ずっと戦い続けたすげー人に、託されてるんだよ!絶対に負けない!意地があんだよ!男には!」


俺の思いに呼応するかのように剣は輝きを増す、そして俺自身も強化を強くかける。

強くかけすぎてコントロールが難しくなるこの感覚は覚えている…だから…先程よりも速く、強い一撃を放った。


「はっ?」


ピエロ悪魔の首が宙を舞った


「ざまあみやがれ」


油断して無様な姿を晒したピエロ悪魔に勝ち誇ってやると悔しそうな顔をしたまま…ではなくその口角を上げた。

同時に腹部へ衝撃が走る、ピエロ悪魔の体が、俺に向かって蹴りを放っていた。


「ぐっ」


痛みを堪えるが体は少し飛ばされ後退する、その間に頭を掴んだ悪魔が自身の首に戻すとうじゅうじゅと(ぬめ)ったミミズのようなものがいくつも現れ頭と胴体を繋げた。


「ダメですねぇ…見てわかりませんか?私ピエロですよぉ?あのくらいでは死にませぇええん!悪魔歴も長いですし?さあ、どうします?」


相変わらずイライラさせられる話し方だが…よかった…


「本当に…よかった…」


「な〜にがよかったんですかぁ?自分の失敗を認められていないのですか?んっん〜、いやいやもしかして甘い考えにも関わらず死ななかった事ですか?そっれならっば!確かによかったですねぇ」


「そうじゃねぇよ…」


レントがルシファーから受け継いだのは堕天使としての力、独善的ではあるが悪ではない怒り、誰かのために怒る心に呼応する力。

レントの中で激しく燃える『義憤(ぎふん)』によりその手に握る剣はどこまでも強く輝き、その光は刀身となっていく。


「お前は…とことん苦しみやがれ」


「お断りで〜す」


おどけた調子だが確かな経験を持つ悪魔は魔法による弾幕を張る、空歩によって一気に距離を詰めるという戦法を封じ、剣士の苦手な遠距離で優位に立つ基本であり有効な戦法。


だが…それすらもレントは駆け抜ける、普通なら通れない弾幕ではあるがどんな場所も足場にできる彼は合間を縫って駆け抜ける。


「なっ、その球は触れれば消滅するんだぞ?効果もわからないのに突っ込む馬鹿がありますか!?」


「当たらなければ同じだし…こっち方が早いだろ?」


今度は速さではなく立体的な機動、安定した体勢により正しく剣を振るえる…放つのは師から授かりながらも未だに名前を決めれていない『無間』。


その斬撃は今度こそ…悪魔を斬った、両断した腹から噴出した闇が悪魔の体を包み球体となると、その内からまたも悪魔が出てくる…


「馬鹿だ馬鹿だとは思っていましたがここまでとは!まあ、死なないんですけど?どうです?まだやりますぅ?」


普通ならばここで絶望するのだろう、殺しても死なないという事に。

だが矜持が任せてくれたという事は攻略できるという事、だから…


「死なないのなら…死ぬまで殺す!」


間断なく攻める無駄を完全に省いた攻撃、だからこそ『無間』であった…正直そのままでいいと思っていたけれど師匠が俺に技の名前をくれた理由はきっと…その技を真の意味で自分のものにするため。

ならばオレが放つこの技は…


「お前に明日はない、二度と光を与えない…『無明(むみょう)』」


どういう技かではなく何をする為の技か、それを意識した途端から技に対する認識が変わった、そしてそれはそのまま結果として現れる。


目指すべき果てであった連続使用、それを可能としたレントの斬撃により細かく斬られすぎた悪魔は蘇る事もできず…正確には蘇り続けたが再生が追いつかず…死亡した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ