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受け取った光



司令室となった職員室では作戦が決まっていた。


「虎徹さんが言う10人ほどの完全に適合したタイプはクリヴァールさん、クオリアさんと合わせて3人で確保を」


「任せて、作戦開始次第全員跳ばすから」


頼もしく返事をするのはクリヴァール、彼の先天魔法は『空間』である、それに加え矜持よりも索敵などに優れた仙術の扱いを得意とする虎徹と合わせクリヴァールの作った空間へ跳ばした完全に適合した者達を一人ずつ拘束する。


「そして不完全適合側はヒカルさんの持ってきた5本の分離刀は『シャークバイト』の3人と現在リストアップ中の職員の中から追加で2人、分離後戦闘に巻き込まれて死傷者を出さぬように救出班を、そしてそのま精霊との融合で負荷のかかった体を治療する医療班、それらが揃い次第作戦開始とする」


皆が頷く中既に役目を終えたヒカルは友の、矜持たちの様子を映すモニターを見ていた。


「すまない、モニターなんだけど…これは大丈夫なのかい?や…やばいんじゃないのかい!?」


ヒカルが見つめるモニターの中悪魔となってしまったルイスの両腕から凄まじい破壊の力を持つ魔力が放たれる。

振り返り問いかけるヒカルの目には涙すら浮かんでいる。


「大丈夫よ、安心してモニターを見て?」


優しく微笑むクオリアを信じてヒカルは振り返りモニターを見る、そこには変わらずヒカルの友へ襲いかかる光が、無人世界にいる彼らを亡き者にしようとする二本の光がある。


しかし…一本はより強い光に飲まれ、もう一本はその方向を天へと変えて細かい粒子となって降り注ぐ。


「お、あの顔は…」


「全部うまくいく算段がついてる時の顔ですね」


光が降り注ぎ気絶していた人たちが目を覚ましていくのを優しい瞳で見つめる矜持の表情を見ただけで虎徹とクオリアがその声に喜色を混じらせる。


「んじゃまあ…こっちもうまくやらねーとな」


「ですね、矜持がみんなが笑顔になれるように頑張ってるんですから…私たちも失敗なんてできません」


希望の光はもはや絶望など振り払いきっていた。



意識が現実へ戻っていく、体に痛みはない。

光が迫る中レントの叫びが聞こえる。


「矜持!状況はわかってるか!?」


「ああ!完璧だ!」


ずっと夢としてハルディスに見せてもらっていた、あと少し意識を保っていたら…ルイスが悪魔に変えられることも無かった、紫陽花さんが心を折られる事もなかった、レントやジンさんが傷つくことも無かったと思うと悔しくてしかたがなかった。


だから…ここから先は守りきる!


『黎明よ、明けの明星よ、その輝きを我が身に』


ルシファーから教わった彼女の象徴である言葉を唱える、胸の内に暖かい光を感じる。


目の前から襲いくる魔力砲に意識を向ける、ただの魔力の塊であるなら支配するなんて簡単だ。


受け止め、力の流れを把握し…支配する。胸の内に輝く光と同化させ天へと打ち上げたそれが雨のように細かく分かれ降り注ぐ、その光を浴びた人たちが徐々に目を覚ましていく。

普通ならまだ目覚められないはずだ、さらに言えば脳が処理できなかった致死ダメージ以外の痛みは残っていてもおかしくないはずなのにそれすら無いようだ。


どこまでも優しい光…これがルシファーから授かった力。



意識が現実へと戻っていった、先ほどと変わらないはずの剣からは先ほどまでと違った重みを感じる。


ついに放たれた魔力を見て焦る、矜持はこの状況まで理解しているのか?


「矜持!状況はわかってるか!?」


「ああ!完璧だ!」


完璧とまで言われたら心配するのが失礼だ、俺は俺で目の前の魔力砲に集中しよう。


『黎明よ、明けの明星よ、その輝きを我が身に』


大剣が輝く、禍々しい剣だというのにとても綺麗な光だ…それでいて鋭く攻撃的な印象を受ける。


「オラァアアアアア!!!」


上段から振り下ろしたその軌跡は輝きまっすぐ伸びて魔力を切り裂いた。


あらゆるものを塗りつぶす程の強い光、例えその身を変質させても貫いたルシファーさんの強い光が、俺の受け継いだものだった。



「な…なんなんだ…どういうことだぁ!?」


「あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」


明らかに羽階級が対処できるはずがない魔力量の一撃をどちらも無力化された事実にピテロ悪魔は唖然とし、ルイスは怒っているようにも見える。


「わからなくてもいいさ、それで問題ないからな」


「ああ、全くだ…説明しようがしまいが結果は変わらない」


レントと矜持がその余裕を示すように悠然(ゆうぜん)と歩を進める。


「俺がお前をぶっ倒す!」


「俺がルイスを元に戻す!」


「「そんでもって皆で笑うんだ!」」


肩を並べるにまで至った二人が、高らかに宣言した。


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