表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/134

悪魔



比連に所属する中で上の階級でも有名な者とそうでない者が存在する、なぜそんな事になるのかと言うとメディア露出するか否かによるところが大きい。


なぜそんな風に分かれているのかと言うと、比連としては自分たちの活動を世間様に放送する為の広告の役割を持つ人が欲しいからだ。


そしてそんな役割をかつて無理矢理あてがわれた男がいる、熊谷(くまがや) 虎徹(こてつ)その人である。


彼を有名にしたのはテレビ番組の1コーナー、闇精霊に悩まされる地域へと派遣された彼はいとも簡単に殴って解決した。

その際説明された冠位名『武神』そしてその功績の数々、たった一度の出演ながらに強烈なインパクトを残した彼は年月が経ったいまでも知る人ぞ知る存在である。


そんな彼が…弟子と言った、その場が凍りつく。


「え…クオリアって武神の弟子だったの…」


メリルの間の抜けた声が響く


「違う違う、そっちだ」


虎徹が指差したのはモニター、隔離された状況で悪魔が現れた絶望的な状況により放送を続けるのはまずいと中断し、現在それを確認できるのはここだけだ。


見ているのが痛々しいほどに蹂躙され、それでも幻想世界のせいで死ねずにいる姿は悲惨に尽きる。


「士道 矜持、こいつは俺の弟子で馬鹿なんだが…こいつがいるんなら向こうもその内解決するさ」


断言、そしてここにいる面々は矜持と翼階級として面識があるため否定しない、だが問題がある。


「ですが彼は先程切り刻まれて致命傷になるレベルの攻撃を受け気絶しました、起きるまでには時間がかかるのでは?」


『KOO』のレガートがもっともな疑問を口にする、それを不敵に笑うのは虎徹。


「なーに、精神ダメージならこいつは普通の何倍もの速さで回復するさ、なんたって過保護な精霊が頑張ってくれるからな。

だから向こうは気にせずこっちの解決に全力を注ぐぞ」


力強い虎徹の問いかけに全員が頷いた。



悪魔が笑い声をあげながら意識のあるレント、ルイス、ジン、紫陽花を蹂躙(じゅうりん)する。

必死に鍛えてきた彼らの力は意味を無くしただただ弄ばれる、絶望の体現と言える。


「あーはー?すごいねーここぉ、本当に怪我しないや!ねえねえ!お腹を手でかき回される感覚はどう?痛いのに気絶もできない気分は?さいっこうに決まってるよなぁ?ひゃーはっはっは!」


虚ろな目で痛みを訴えて救いを求める事しかできていない紫陽花は当然返事をしない。


「やめろよクソ野郎ッ!」


なんとか立ち上がりレントが立ちあがりレントが叫ぶが悪魔は気にも留めない、レントだって散々痛めつけられ今だって辛くて仕方がない、しかしその手にある禍々しい大剣がその禍々しさとは裏腹に(すが)るかのように戦ってくれと言っているような気がするのだ。


そして立ち上がるのは彼だけではない…


「…っ!」


背後から無言で斬りかかる、だからこそ本気だとわかるジンの一撃、全身全霊を込めたそれも無意味であると振り返る事さえせずにピエロのようなメイクを施した悪魔が腕を振るう、それだけでジンが吹き飛ぶ。


「お前らさあ、つまんないんだよ…わかる?こっちは死ねない事に絶望して欲しいわけ、でもお前ら死なないから自分が痛めつけられたらいいとかおもってんじゃーん…ほんっとつまらないから!っんあー!もういや!」


悪魔の手に光が集まる、高密度に圧縮された魔力が空へと放たれ衝突音、それから破砕音が響く。


「はーい、便利な便利な幻想世界はもう終わり…ここから先は殺す…」


無慈悲な宣告その場の4人の顔が曇る。


「う〜〜ん…いいねぇ、いい絶望だ!実に心地いい!さてと、じゃあまずはお前ら」


悪魔が指差したのはレントとジン、たったそれだけの行動で何が起こるかわからない恐怖が胸を締め付ける。


「お前らの守りたがっている仲間を殺す、あいつか?あいつか?……」


さっきまで痛みをこらえ、自分を犠牲にしてでも守ろうとしていた二人にとって最も精神的苦痛を与える方法として選んだそれは、狙い通りに指をさしていくたび心臓を握り潰されるような気分になっていく。


「おいおいおい…残念だわー、本当にざんっねん!だわー!仲間の二人がそんなに辛そうな顔してるのに一人は諦めてもう一人はまさか安心(・・)してるなんてなぁ?」


諦めているのは明らかに紫陽花、なら必然的に安心しているのは…ルイスだ。


「他人がどうなろうと自分が助かればいい、実に人間的な感情だ、素晴らしい…そして利己的というのは悪魔の特徴でもある、だから君にプレゼンット!こっちへおいでよべいべー!」


目にも止まらぬ速さで移動した悪魔がルイスになにかを飲ませる。


「んぐぁ…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


絶叫と共にルイスの体が変質していく、肌は紫へ、角が額から二本生え足は逆関節に…それらの特徴はまさしく悪魔のもの


「ああ…あ…」


「ようこそ、悪魔の世界へ、試作品だけどうまくいってよかったよ」


「ウゥゥウガアアアア!!!」


「ちょっと理性は下がったみたいだけど…まあ悪魔なら問題ないね!」


変質を終えたルイスが憎しみや怒り、苦しみや悲しみ、あらゆる負の感情を込めたような瞳で周りを見る。


さらなる絶望が現れたというのに…未だにヒーローは現れない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ