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あかり



比連本部では現在『比翼の鳥』の面々がレイガスの言葉を信じて戦闘を行う者が出ており、情報の精査を待つ面々もそれを止めるのに手を取られまともに動けていない。


そしてそれらを解決できる可能性を持つ、情報管理を行なっている『連理の枝』もまずい状況だ。

レイガスが残した情報の処理に全力で取り掛かっているが寄せられる抗議の電話や「自分はこんな奴の仲間じゃない」と押し寄せる職員までおり混迷を極めている。

これでは事態は進展しない、そしてまともに機能しなくなった比連本部、特に研究を司る部署にレイガスに手を貸す外道が姿を見せていた。


行われているのは虐殺と勧誘、幾人かにはその研究能力を幸福の(ともがら)にて活かすのであれば命は取らないというものだ。


死にたくないと誘いに乗る者もいるが、残念な事に誘われた者の多くは理由として「設備を整えた上でレイガスを手伝えば自分の研究も自由にしてよい」というところに魅力を感じたからだ。


人体実験…死刑囚を使って比連の下でも行われるがその頻度は低い上に自分にまで回ってこない、さらに言えば行う実験に対して規制も多くとても満足のいくものではない。


それが自由に行える、というのは彼らにとって魅力的であった。


魔法や研究成果を使い逃げる者もそれなりの数いるが追わない、今回の目的は第1に勧誘であるためそちらを迅速に終わらせ幸福の徒は早々に引き上げる。

まともに機能しない比翼の鳥の面々が何とか駆けつけた時には既に彼らの姿はなく、勧誘された職員と同じ研究チームであったなど近しい者が息絶えており、その数は全体の約1/3ほどにまで登った。


そして転移できない比連内部ではなく外壁周辺に転移用の穴を作り、そこに飛び込ませる事で次々と拠点に人員を引き入れたレイガスは非常に満足気だ。


「やあ、よく来てくれたね諸君。

まず最初にお礼を言いたい、君たちの力を借りる事で私の研究は先へ進める。

そして君たちが不安に思っているだろう比連についてだが…ここでその衰退を見守ろうではないか」


勝利を確信して余裕たっぷりにレイガスはモニターを見つめる、いや彼は既に勝利している、目的である研究者達を手に入れたのだから、後は適当に残してきた嫌がらせを眺めるだけだ。


「比翼連理本部に隣接する形で存在する比翼連理職員育成校、そこは今外部との接触を絶った状態で私の研究成果の相手をしていてね、まあ失敗作は言うまでもなく、成功したものも翼階級がいるとなれば対処されるだろう。

ただし救ける事はできない、なぜなら彼らには道具が無いからだ。

比連が救出法を確立していて私からも救ける方法はあると言ったにも関わらずエリートである彼らが被害者でしかない私の研究成果を殺してしまったとなれば…面子を保てなくなるだろう?

現地入りしておいてもらった悪魔にも協力してもらったんだ、これから楽しいものが見れるぞ」



精霊とうまく融合できず自身の体を傷つけながらその力を放出し暴れる人達、対して比連側は救う方法があるという事で慎重に防壁を下ろし建物内に立てこもった。


金翼のクルトが早急に指示を飛ばした事もあり、講堂などの隔離された場所にも伝令は届き現在動きはない…しかしそれも時間の問題といえる。


防壁などから響く轟音、破壊されるのも時間の問題だろう、そしてそれを行なっているのは…監視カメラから映った映像では他の人とは違い体から精霊の力が漏れていないながらもその体つきや動きを見る限り同じく一般人であろう者たちだった。


「まずは情報だ、あれについて少しでも知ってる人はいないのか…」


現状打つ手がなく、外部と連絡が取れないため放送で情報提供者を呼びかけたところだが、焦りからかもう随分と待っている気がする。


そんなクルトの願いを叶えるように司令室代わりに使っている職員室にノックの音が転がった。


「チーム『シャークバイト』『KOO』並びにクオリア・ラーゲル、情報提供に協力すべく参りました」


野太い、ハリルの声だ


「よく来てくれた!入ってくれ!」


気色に塗れる声を上げるクルトだが…事態はそう簡単には好転しない。


「私が知る限りでは魂に干渉できる特殊な技能がなければ彼らを救う事は不可能です」


「同じく、自分たちも前に相手をした時は彼らの命を奪いました」


その報告を受けてしまえば今度は魂に干渉できる人を探さなければならないのだが…そんな人がいるのだろうか…


「わかった…一応その特殊技能持ちを確認して、その実力も鑑みて不可能と判断したらーー」


「まだ間に合うかい!」


職員室の扉が勢いよく開き、現れたのは白い肌に白い髪、しかし走って来たのか息を切らしながら(うつむ)き頬を赤くしている女性…ひょっとこ面を被っていない薄井ヒカルだった。


「あれをなんとかする為の研究なら僕も関わったからね…ギリギリ使える試作品を…持ってきた」


暗闇に明かりが灯った、しかし彼女はどう見ても手ぶらで何も持っていない。


「はっはっは、重そうにしてるから持ってやったんだが…これそんなにすげーもんだったのか」


「だねー、私もびっくりだよ」


「いざとなったら通信回復させんのに全部ぶっ壊そうとしてたから手間が省けたなハッハッハ!」


現れたのは大柄な男とひょろ長の男、余裕のある態度で笑っている。


「どうしてここに…二人とも!」


「なんでってそりゃなぁ?」


「決まってるよねぇ…」


「「馬鹿弟子(娘)に会いにだよ」」


灯った明かりは強く強く輝きを増した。



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