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五君子戦5



レントとその師匠、源逸の事を考えていた頭を段々と現実へ引き戻してくる。


俺だってそうだ、師匠から自分の流派まで持たせて貰った、その誇りがある。

だが今日はそれを出し切ることはできない、それでも大切なものは随分と教えてもらった筈だ…生きるための努力を…


それを詰め込んだ罠で迎え撃つ。


「そろそろ罠のエリアに4人、来る」



その場にいた誰もがそれぞれの大切なものを胸に石英又はジンを迎え撃つ覚悟を決めていた、それを嘲笑う(あざわらう)かのように…二匹の猛獣は駆けた。


「嘘!?いくらなんでも移動が早すぎる!」


一人動向を探れるエリアスが悲鳴をあげる、それを裏付けるように中盤に仕掛けた大掛かりな爆弾が爆ぜる


「仕留めた!?」


そうであってほしいと願うように誰かが言った、そう願うという事はどこかで理解していたはずだ


「いえ、速度以前変わらずダミーも全て無視して最短でこちらへ来ています」


罠は相手が来るであろうルートに満遍なく張るものだ、その上で無駄にならないようにダミー人形に匂いの染み付いた服を着せるなどで惑わせるようにしたはずだった、そして今いる場所に関しても紫陽花の結界により外に情報は漏れていないはず…


その認識が甘かった。



回復を終えた石英とジンが取ったのはまずリキュールによる探知だった、そしてリキュールはあっさりと2チームの居場所を見つけた。


事前に生き物を探知できるとい情報があったにも関わらず誰もが勘違いしていた、情報量が多すぎて脳が疲れるリキュールの探知は生き物…植物にまで及んだ。


つまり何も映らない空白は逆に居場所を教える行為に他ならないものだった。


嘘はつかない、されど全ては語らない、矜持が秘密を隠すように、ルイスが奥の手を隠したようにリキュールもまた自身の力を根本から誤解させるため生き物という範囲に植物が含まれないと誤解されるように受け答えしてきた、このような時のために評価されるところを隠してきた


だから強い。


罠などものともしないと打ちはらい薙ぎ払い飛び越え、例え受けたとしても怪我はしない空間だ、動かなくなった部分はリキュールが癒す。


最短距離で仕留めにかかる一刃の閃きとなり彼らは駆け抜ける



張られたワイヤーに触れて連動する爆弾の威力を受ける前に、巧妙に細く張られたワイヤーを寧ろ切り裂いて、石槍が敷き詰められた落とし穴を飛び越え…疾走

どこまでも速く、ただ速く…


ぬかるみがあった、底なし沼だ、大掛かりで複数人で仕上げたそれを石英が踏みしめた…それだけで干上がった…


表面は通常の土地に見えるようにカモフラージュしてありもしひっかかっていれば転び、埋まってしまい今降ってくる沢山の石槍にやられていただろう、だがそんな事はありえない、リキュールが指し示した方角に真っ直ぐ突き進んだ彼らはその目的地であるところの結界をマグマで、剣で、こじ開けた



悪夢だった、結界が壊されて現れたのは石英とジンの両方、どちらかしかいないと思っていた全員に一瞬の思考停止がもたらされる。


それからいち早く立ち直った者だけが対応できた、竜巻に雷に炎にそして…マグマ


エリアスとルイスは持ち前の魔法で壁を作り、紫陽花は結界を張り、身体能力を高める香りを使い回避した杏、残念ながらクリスを含め石英のマグマの側に位置していた人は全員落とされた、彼1人を除いて


「うおおおおおおお!!」


空を踏みしめて(・・・・・・・)レントが石英に肉薄する、その姿を目に入れた石英がマグマの壁を作りながらその足元から槍を噴出させようとする、しかし壁は存在ごとかき消された。


真理に到達した一撃は魔法そのものを消し去る、残念ながら別の式で構築されていた槍に関しては消えなかったため回避のために一撃離脱


「うっそだろ…」


石英は今の一瞬でレントが真理に到達しているとわかった、そしてそれは石英にとって初めての到達者との邂逅(かいこう)、戦慄が走る。


そしてもう1人、ジンの側には矜持がいた。


「ハハハハハ!銅羽と聞いていたが技術は俺より上か!もっとも…魔法を含めなければ、だが」


ジンの剣の間合いから少し外、魔法によってストックされた剣戟(けんげき)に当たらない距離であらゆる攻撃に反応できるように構えながらワイヤーを動かしジンの気を引く、それでできた一瞬の隙を突いては拳を入れてから離脱


「いやー、本当に攻撃が当たってもダメージにすらならないのは辛いです」


「ふむ、理不尽に感じるかもしれないが魂のレベルが違いすぎる。どれだけ優れた技術を持っていようが精進(しょうじん)が足りない、それが現実だ」


どれだけ上手く立ち回ろうと矜持のやっている事のレベルは相当高く集中力も必要なためいつまでも持つものではない、少しずつ食らってもいい攻撃とダメな攻撃を分けながら傷つき時間を稼ぐ。


そう、あくまでも時間を稼ぐ


「よくやった!下がれ矜持!」


「サンキュールイス!」


万能型剣士には万能型剣士を、駆けつけたルイスに立ち位置を譲り矜持が退がる


1対1で石英に勝てると太鼓判を押されたレントをそのままに、雲母(うんも)とリキュールに対してエリアスと杏が、そして金羽として高い能力を持つ紫陽花が戦場全体を見渡す位置に、五君子戦は大詰めを迎えていた。



その様子を見ていた多くの者はジンと石英の強さにばかり目を向ける、だが一部の…正規職員として場数を踏んだ者たちはそれだけではない、仲間を倒された事にも動揺せずに動いた他の全員のレベルの高さにも満足する、若い世代は育っていると



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