表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/134

五君子戦4



「マグマ停止…」


木の上で山の様子を伺っていた蝙蝠(こうもり)の獣人守谷が先ほどまで激しくうねっていたマグマが自然に山の上を滑り落ちて行くようになったため報告する、手を組んでいて合流している可能性もあると最初は思っていたがすぐに石英のマグマがうねる様を見て単にライバルと万全の状態で戦いたかったのだと結論付けた。

そしてその戦いが終わったとなれば残るはこちら側の2チームだけ罠は張った、待ちの一択。


「勝ったのはどちらでしょうか」


紫陽花が一人言をつぶやく


「個人的な希望としては石英さんに勝っていてほしいですね、レントならおそらく勝てるので」


それに対して願望で返したのは矜持、最終的に仕留めるための陣形はエリアスが固めた地盤の上で円形で囲むこと、その中で石英又はジンにレントをぶつけて全員で1対1に集中できるようにその他の敵を引き受けてて適宜(てきぎ)サポートをすることとなった。


「理由を聞かせてもらっても?」


「あいつは真理に到達しているので…魔法を斬れます」


「本当ですか!?」


心底驚いたという表情を見せてくれる紫陽花さんだがそれも当然、魔法主体の人にとって魔法をかき消す真理に到達した人物達は天敵だからということ、そしてその真理に到達するというのが途轍もなく難しいことからだ。


「本当なんです、すごいでしょう?」


集中して放つ『無間(むけん)』限定ではあるがレントの一撃は確かに真理に到達した。


レントが無間を使った後、レントの師匠、石動(いするぎ)源逸(げんいつ)…過去俺にも無間を授けたその人に挨拶に行った事を思い出す、一言で言うなら「これは酷い…」だった。



道場の入り口で頭を下げてから中へ入る、入口が低いとかではなく礼儀作法だ、基本型の練習をしている門下生の邪魔にならないよう壁沿いを抜けて源逸さんの元へと辿り着く。

門下生の中には剣を扱う子もいるがレントの背負う禍々しいそれは圧倒的な存在感を放っている。


源逸さんの横顔を正面に門下生の稽古を眺める邪魔をしないように正座をする。


「師匠、話があります」


「そうか、今忙しいから今度聞こう」


ニヤリと笑いながら冗談を言う姿は俺が知っている源逸さんの表情が見える、つまりこの前は猫を被っていたのか、こっちが覚えてないのをいいことにからかわれていたようで少し気分は悪いがこの人はこういう人だったはずだ、俺の師匠と同じで…師匠って人はみんなこうなってしまうのかもしれない。


「えー…」


自分の師匠だからか強く言えずに困っているレントの姿は確かに少し面白い。


「お久しぶりです源逸さん、この前は気付けずすいませんでした『アレ』今もとても助けられてます」


俺がそう言うと驚いた顔をして


「お前がこのタイミングでそれに気づいたって事は…」


そう言ってレントを見る、レントは頷く。二人の間に漂う空気は独特でだんだんと源逸さんが口角を上げていく程にヒリヒリと痛むような雰囲気が漂い始めてくる


合図をしたわけではない、しかし二人は立ち上がる。


目印があったわけではない、しかし二人の立つ距離は試合形式を取るときの為の開始位置の間合いと等しく


掛け声は必要としなかった、極限まで集中が高まり…重なり…爆発した


互いに放つ技は『無間』予備動作無しに最速で最短で最効率の一撃、同じ技であるのに一人は拳でもう一人は剣で、全く違う動き、しかしそこにある理念は等しい


技と技が交わり…そして共に弾かれ…次の瞬間レントが吹っ飛ぶ


「まあ確かにできてるな、だが一度撃ってそれで終わりじゃあ『無間』を使う意味がねぇ、名前の通り間断無く攻め立てれるようになれ」


奥義を会得した弟子に対してあんまりな対応だ、しかしその嬉しそうな雰囲気から、どうだと言わんばかりのドヤ顔でこちらを見る様からやはりレントはこの人自慢の天才なのだと確信した。


レントが痛みに顔を歪ませながらも戻ってきてから大事な話…流派の話になった。


俺の師匠熊谷(くまがや)虎徹(こてつ)の熊谷流では奥義の開発をする事で真の免許皆伝であり流派を持つ事に繋がっていた。


同様に源逸さんもレントに奥義開発をさせるのかもしれないと思ったのだが…


「お前は基礎の理解が足りていない、それでは人に教える事なんてできるはずがない。つまり自分の流派を持つ云々(うんぬん)はその後だ」


途轍もなく心にぐさりと刺さる言葉を貰って「へへっ…いい拳撃ってくるぜ…」なんて呟いているレントだが源逸さんも鬼ではない…本心では手放しで喜んでしまいたいのだろう、だから


「ただ、『無間』の名前はお前がつけていい、あれの名前をお前が変えて本当の意味でお前の技にしろ」


自身の磨き上げた技を弟子に完全に与えた。


はたから見れば酷いものなそれは、素直になれない男の精一杯の祝い…それは何よりも重く誇らしく、レントにとって最高のプレゼントだった。



ツイッター

@hiyokurenrisks

風邪ひいたウホッ

ブクマとか感想くれたらメンタルだけは元気になるウホッ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ