首領登場!
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ブラックキラー大佐からの報告で、怪人ブタニワトリとサボテンロブスターをヒーローたちに倒されたことを知った【悪の秘密結社S】の首領は、ヒーローたちをやはりこの『東京』から追い出すことを決意して永田町へと真っ黒なリムジンで向かっていた。
「ですから、私が初めから言っていたようにヒーローたちをさっさと『東京』から追い出してしまえば良かったのです!!」
「わかっておるわ!! しかし、奴らが公の場に姿を見せて…街を破壊するところを目の当たりにすれば…人間どもも、2度とヒーローなんぞを求めることもなくなるだろうとわざと好き勝手にやらせていたのだ!!」
「おお!! さすがは、我らが首領! そんな…お考えがあったのですか!? これは失礼いたしました!」
大切な怪人たちを立て続けに失った…首領の側近の部下であるダークミラー将軍が、リムジンの中で首領にさっさとヒーローたちを『東京』から追い出しておけば良かったのだと責めるように意見すると…首領は少し怯みながらもこれが、自分の作戦だったのだとダークミラー将軍を真っ直ぐ睨み付けていた。
首領の蛇のようなするどく邪悪な瞳で見据えられたダークミラー将軍は、慌ててその作戦に大袈裟に驚き…顔をひきつらせながらも首領を称賛していた。
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首領が永田町に到着すると、そこには大勢のマスコミ関係者たちが集まって記者会見が始まるのを今か今かと首を長くして待っていた。
「それでは、只今より…現在の総理大臣であるS首領から、ヒーロー対【悪の秘密結社S】についての今後の対策について皆様にご報告したいことがあるということですので、まずはS首領のお話をお聞き下さい。その他質問等はお話の後で随時お伺いしますので、よろしくお願いいたします」
進行を勤める政治部担当のマネジメントスタッフが、急遽用意された記者会見の会場の壇上から集まっている記者にこれから行われる会見の詳細を伝えてから、首領に壇上へ上がるように目で合図を送っていた。
「えー、人間の皆さまにも多大な不安と損失を与えてしまったことに総理大臣として、深くお詫び申し上げます。これまで我々【悪の秘密結社S】は、ヒーローたちの数々の悪行に寛大な心を持って対応してきたのですが、ハチ公前広場…そして、お台場の主要施設を破壊され…更に怪人を二人も亡くしたことで、首領であるこの私は決意致しました! 我々の生活を脅かす憎きヒーローたちをこの『東京』から即刻追放するということを!!」
壇上へ上がった首領は、記者たちに向かって憎むべきはヒーローだと声を高らかに訴えることによって、強く人間たちに共感させようとしているようだった。
「そうだ!! ヒーロー追放賛成!!」
「私たちには、ヒーローなんて必要ない!」
「「追放!! 追放!!」」
首領の思惑通り、会場にいた人間たちはヒーローたちを追放することに何の疑問も抱かずに首領の言葉に賛同して、立ち上がってヒーローたちを追放するのだと口々に叫んでいた。