囚われた女性達
シュエが洞窟内で、次々と盗賊達を切り殺す。
そして動くモノが居なくなるが、奥からまだ人の気配がする。シュエは、まだ盗賊が居るのかと奥に向かった。
奥に行くと、そこには黒々しい鉄格子のはまった牢屋があり、牢屋の中には獣耳や尻尾のはえた人間。獣人の女が捕らえられていた。
獣人の女が、数人。ボロボロの服を着てグッタリしている。
シュエは、牢屋の鍵を握り潰すと(恐ろしい握力だ)牢屋の入り口を開けた。
「・・・・・出ろ」
シュエが短く言う。
すると、グッタリしていた女達が、ビクッと反応し顔をあげた。
女達は声をかけてきた人間が、盗賊達ではないと気付くと、皆一斉に這うようにして牢屋を出てくる。
そして彼女達は、涙を流しながらシュエに頭を下げた。
「ありがとう御座いました!!」
「何と・・・お礼を言えばいいのか・・・・・」
「ご恩は必ず・・・・・」
口々に感謝を口にする獣人達。
その中で一人が、恐る恐るシュエに(シュエは反り血で酷い有り様だった)声をかけた・・かなり必死だ。
「あの・・犬獣人の少女を知りませんか?
私の娘なのですが・・・盗賊達に連れていかれてしまって・・・・・」
獣人の女性は、ビクビクしながら聞いてくる。
シュエはチラリと、ユリナ達が居る馬車の方角を眺めてから、獣人の女性に向かって口を開いた。
「ああ。私達の馬車を襲ったから・・・・・」
シュエが、何でもないようにサラリと言い捨てる。
すると獣人の女性は、泣きそうな顔でシュエにすがり付きながら、悲鳴のように叫んだ。
「殺したのですか!」
シュエは血塗れ。よく見ると、遠くに自分達を捕まえた盗賊達の死体が折り重なっている・・・・・
もしかしたら・・あの子は盗賊達と一緒に・・・
「・・いや。私の仲間が縛っているだろうとは思うが、無事だろう。
・・・まあ。屑な盗賊達が逃げる際に囮にしようてして、足を切られているがな」
シュエがそう言って女性を引き剥がすと(シュエはユリナ以外の女性にくっつかれるのが嫌い)牢屋のある空洞を出る。
獣人の女性は安堵のあまり、その場にへたりこんだ。
「そうでしたか・・・良かった」
へたりこんでしまった獣人女性を、仲間の獣人女性達が手を貸し立たせて、彼女達は胸くそ悪い牢屋のある部屋から出る。
部屋を出ると、ある部屋の中でシュエが何かをしていた。ここは何の部屋だろう・・・・・
勇気ある一人の女性が、血塗れでガサゴソしているシュエに問いかけた。
「・・・何をなさってるんですか?」
「金目のものを探してる」
シュエは振り返りもせずに答えた・・かっ金目!?
女性達が、シュエの発言に固まっていると・・・・・
洞窟の入り口で物音がした。盗賊達の生き残りか!と女性達が怯えていると、物音をたてた人物は、うっかり死体を踏みつけ転びそうになりがらも、若さと足の強さで転倒は免れていた。
彼がドジなのではなく、薄暗い洞窟内にまるで床のように、大量の死体が転がっているせいである。
男は遠慮無しに死体を踏みながら、シュエに向かって来た。
男の正体は、盗賊ではなくグレルであった・・・・
彼の自慢の金髪が、反り血で赤黒く染まっている。馬車にいた奴等も始末し終わったらしい・・・・・
グレルはズンズン奥に行くとシュエを発見して声をあげた。
どうやらグレルは、中々戻らないシュエを探しに来たらしい・・・・・
「シュエ!!何してんだよ・・うわっ血塗れ!生臭っ!ユリナに嫌われるぞ!」
シュエは荷物あさりを中断して、自分の臭いを嗅いだ。
・・・・確かに血生臭い。
「・・・・ああ・・・グレル・・術でなんとか出来ないか?」
シュエは旅の間の船旅で、グレルがしていた体と服を一緒に洗う術を思いだした。そしてグレルに、ダメ元で頼んでみる・・・・
シュエに頼まれたグレルは、笑顔で頷いき魔術を発動させた。
「オッケー! 魔術 (洗濯 発動)!」
グレルの魔術が発動すると、シュエの回りをぐるっと囲うように丸く水の膜が出来た。
そして、嵐のように球体の中があれ狂う・・・・・
ユリナがこの場に居れば必ずこう叫んだだろう・・・・・洗濯機だ!!!
「ぐっ・・・うっ・・・かはっ・・・・・ハアハア・・・・ゲホゲホ」
数分間。水の中で、右回転左回転と暫くの間グルグル振り回され、解放された頃。
シュエは水を大量に飲んでしまっていて、ゲホゲホと咳き込んでいた・・・今にも死にそうだ・・
心配になってきたグレルが、シュエに話しかける。
「・・・・・大丈夫か?」
「大丈夫に見えるか!」
シュエはギロッと、グレルを睨み付ける・・・・・冗談抜きで死にかけた。
グレルは、ビクビクしながらモゴモゴとした声を出した。
「・・何で・・・あっ!もしかして水中で息出来ないのか!?」
グレルが驚きながら叫ぶと、シュエがグレルを怒鳴り付ける。
「人間は、水中で呼吸など出来ない!」
「え!!」
シュエが叫ぶと、グレルは目を丸くする。
グレルは本気で・・皆、水中で呼吸が出来ると思っていたらしい・・バカだ!
そして、そのやり取りを聞いていた女性達の一人が、グレルを上から下まで眺めると首をかしげた・・・・・あれ?
「・・・鱗がありませんし・・人間に見えますけど・・貴方は半魚人ですか?」
「俺は人間だ!」
グレルは半魚人(魚人と人間のハーフ)に間違えられ、洞窟の隅っこでいじけた。
罪悪感を覚えた女性が、必死でグレルを慰め続けること三十分・・・・・
ようやく復活したグレルに、シュエがリュックサックを放り投げる(グレルがいじけている間に、シュエが盗賊達の荷物をあさり金目のものを詰めた)
そして女達を外に出すと、洞窟内を死体ごと燃やした。確実に盗賊達を始末するためだ。
燃える洞窟を、シュエとグレルは数分間洞窟を眺める。
シュエは洞窟内が燃えさかるのを確認すると、氷結魔術で洞窟の入り口に氷の蓋をした。
これで森が燃える心配は無いだろう。
そしてシュエとグレルが、女性達を連れて(放置するのは良心が痛むので)森を抜けて街道に置いてきた、ユリナ達が待つ馬車に戻る。
馬車まで戻ってみるとユリナが馬車前に布を敷き、犬獣人の少女を寝かして栄養薬を飲ましていた。
・・死体は見当たらず・・・草むらに黒い山があったので・・多分死体をイグニスが燃やしたのだろう。
「あっ!シュエ、グレルお帰・・・」
栄養薬を飲ませていたユリナが、近づいてきたシュエとグレルに気付き声を出そうとしたら・・・・・
「スズぅぅ!!」
「お母さん!!」
シュエの後ろにいた犬獣人の成人女性が、いきなり泣きながら少女駆け寄り抱き締める。
少女も、泣きながら女性を抱き締めた。
親子らしい・・・・・
助けを求めるようにシュエを見ると、シュエの後ろから、数人の獣人女性が現れた・・・・・
ユリナは暫くの間親子を放置する事に決めて、シュエとグレルに事情を聞いた。
数分後。まだ親子は抱きあっていた・・・・・
・・・・・長い!!
ユリナは心の中で毒づきながら、顔だけは弱りきった笑顔を浮かべて、親子に話しかける。
「・・・涙の再開の所悪いんですけど・・・・・これからどうします?
馬車じゃ定員オーバーですし・・・」
ユリナはチラリと馬車を見る。
いくらスレンダーな女性達でも、流石にこの人数は入らない・・・・
すると最後尾にいたグレルが、数頭の馬を連れて歩いてきた・・・・・
シュエは、馬をチラリと見るとユリナにを見る。
「あいつらのアジトに馬がいた。
女性達は近くの町まで送ろう・・・馬に乗れる者はいるか?」
シュエはそう言うと、ユリナから目をはずして女性達を見る。
問われた女性達は皆、一斉に笑顔で頷いた。
「ハヤワーンのは、皆私乗れますよ」
・・・皆・・・乗れるらしい・・・・・
凄い民族だ。
それならばと、ユリナは女性達に話しかける。
「じゃあ、シュエとグレル達は馬で・・・・・
怪我人の貴女と、お母さんは馬車に乗ってください」
ユリナは女性達を見た後。抱き合って涙を流す親子に話しかける・・・・・
すると、親子は泣きながら笑い頭を下げた。
「ありがとうございます!!」
「ありがとうございます」
話が終ると、イデアとユリナは少女の治療に入る。
ユリナは水筒(国宝様々だ)の水で少女の傷口を洗い、消毒液をかけると少女から離れてイデアを見る。
「イデア。お願い」
「分かってるわ」
イデアは頷く。
そして、さっきまでユリナがいた場所に座り込み、少女の足を触って癒し系の魔術を発動させた。
数秒。イデアが術をかけていると、少女の母が心配そうにイデアに話しかけた。
「どうですか?」
「大丈夫・・・・・
軽く斬りつけられただけみたい・・・・これなら、直ぐによくなるわ」
「良かった・・・・」
イデアは笑顔で少女の母に答えると、少女の母は安堵しながら呟いた。
その時。魔術で傷を塞いでもらい、痛みが消えて余裕が出てきた少女が、消え入りそうな声を出してきた。
「・・・・・ごめんなさい・・・・・」
泣きそうに呟く少女・・・・・
ユリナは少女を安心させるように笑顔で答えた。
「いいですよ。大して害は無かったですから・・・・・(カマイタチ)!」
ユリナは笑顔で風魔術。(カマイタチ)風を圧縮させて切り裂く魔術を発動させた。
少女を傷つける為ではない・・・・・狙いは
「!?首輪が!」
少女の首にはめられた奴隷の首輪が、真っ二つに切れる・・・
太く硬い首輪は、ユリナの腕力ごときでは千切れない。だから魔術を使った。
いきなりのことで慌てた少女の母が、唖然と地面に落ちる首輪の残骸を眺める・・・・・
「貴女も」
「でっでも・・・・・」
ユリナが短い(カマイタチ)と言うと、首輪が真っ二つになって落ちていった・・・・・
呆然とする親子に、ユリナは優しく笑いかけた。
「首輪がなければ奴隷とか分からないですよ・・・・
登録とかされてないみたいですしね」
親子はこの時初めて知った・・・・・
奴隷の首輪は。本人以外なら誰でも破壊出来てしまうと言うことを・・・・・
奴隷にされた女性達でした。
次は、水浴びで女性達がキャイキャイ騒ぎます!




