結婚なんかしたくない!!
シュエとグレルが家に籠って数時間。
ユリナは、ビクビクしながら玄関を凝視していた。
母が、シュエ達に結婚を迫っていたらどうしょう・・・・・
ユリナは、本当に結婚などしたくないのだ。縛られるのが嫌だから・・・
シュエとグレルは、自分に嫌な事などけしてさせないとは思う。
でも・・世間は違うのだ。
女は男に尽くさなければならない。
それが常識・・・・・
男に尽したくないと言う、ユリナの方がとても非常識のだ。
シュエと関係を持ったのは、好奇心だった。
若気のいたりという奴だ。
それに・・・・・・
真面目なシュエなら、私を軽蔑すると思ったのもある。
しかし・・・
シュエは軽蔑するどころか、定期的に関係を続けていた。
もしも・・・・・
シュエが旅商人とかだったら、結婚しても良かった。
世界を旅出来るし、その場かぎりの人間関係なら私でも何とかなる。
しかし・・・・・
シュエは公爵貴族。しかも跡継ぎ息子だ。
公爵夫人など、面倒きわまりない。
社交しないといけないし、食事にも、歩き方にも気を使わなければならない。
そんなストレス生活は、絶対嫌だ!死んだ方がましだ!!
・・・・自殺はさせてもらえないだろうがな。
グレルと結婚したくないのは・・
まあ・・村が嫌なだけだな。
前世の私は田舎暮らしだった。
町には、6時に閉まる商店のみ。
服屋も本屋も無いし、回りを歩けば老人に話しかけられて、長い長い話が始まるし・・・
親戚は会うたびに、結婚 結婚 結婚 結婚 結婚・・・・・五月蝿いよ!!
何で、無理して結婚しないといけないんだよ!!
私は人間と同居するのに、向いてないんだよ!!
慌てて結婚して、失敗した芸能人一杯いるだろぉぉぉぉぉぉ!!
あっ!話がそれた・・・・・
まあ。結論を言うと、私は前世から結婚をしたくない派だった。
老後の、面倒を見てくれる人がいないだろうと言われるが、例え子供がいても、面倒を見てくれるとは限らないんだから、余程上手く育てなければお一人様と変わらないと思う。
と言うか、私の遺伝子が入っていると多分・・親を大事にする子には、ならないと思う。
ユリナが、そんな事を考えていた頃。
カタッと音がして、数時間ぶりにウィング家の扉が開いた。
扉を凝視していたユリナは、バッと立ち上がり出てきたシュエに詰め寄る。
・・そして、泣きそうな顔で喚いた。
「シュエ!!お母さんとなに話したの!!」
ユリナは、シュエを睨みながら喚く。結婚承諾してないでしょうね!!
ユリナに睨まれたシュエは、フッと笑い優しげにユリナを見下ろした。
「ユリナが、望むまで結婚しないと宣言しただけだ」
シュエが、安心しろと言いたげにユリナの頭を撫でていると、シュエの後ろにいたグレルが顔を出した。
「ユリナが、嫌がる事なんてしないから大丈夫だ」
ユリナは、シュエとグレルを交互に見ながら、疑わしげに首をかしげた。
「本当に?」
ユリナがすがるように二人を見ると、シュエとグレルが優しく笑う。本当らしい・・
「ならいいけど・・」
ユリナが、ホッと息を吐いていると・・・・・
「おい!早く来ないと無くなるぞ!」
イグニスがユリナ達を呼びながら、一口パイを頬張った。
「今いく!ほら!シュエとグレルも!」
「ああ」
「行こう」
ユリナは、楽しそうにシュエとグレルの手を握ると、庭に向かって駆け出した・・・・・
その日の夜。
寝室のベッドで横なっていたアリアは、隣で寝転んでいる夫に楽しげに話しかけた。
「今日は楽しかったわね」
「そうだな・・ところでさ・・・シュエ君達と、どんな話をしたんだ?」
リーグはベッドでゴロンと転がって、アリアの方を向くと、気まずげに口を開いた。
「ああ。シュエ君達・・・ユリナは最優先だから・・
ユリナがその場に居なければ・・・・・本音話してくれると思ったのよ。
それで・・ユリナを追い出したんだけど・・・・・
フフフ沢山の孫の顔が見るわよ」
楽しげに笑うアリア。
彼女を見ながら、リーグは寂しそうに口を開いた。
「シュエ君。結婚する気あったんだな・・グレルは可哀想だけど・・・しかたな・・・」
「法律変えさせて、重婚するって」
リーグはギョッと目を見開く。
・・・・え?
「じっ重婚!?」
「ユリナは、一人に絞れないからだって」
アリアが可笑しそうに笑っていると、リーグはボソリと呟いた。
「・・・どんだけ好きなんだよ・・」
「フフフ・・・私達はユックリ待っていればいいのよ・・・ユックリね」
その内・・・
確実にユリナは、結婚する事になるらしい・・・・・
「・・ユリナは逃げられないな・・・」
ユリナは、口にしたことは必ず実行する。だからシュエは、絶対言質をとって結婚を承諾させるだろう。
ユリナは、自分で決めた事は破らない・・・・・
ユリナを知り尽くしたシュエからは、けして逃げられない・・・
それを知っている(恐らくアリアは、あの二人にユリナの情報提供しているはずだ)アリアは楽しげに、リーグに向かって微笑んだ。
「リーグ・・・おやすみ」
「ああ・・・うん。おやすみアリア」
リーグは楽しげに微笑む妻に、複雑な感情を胸に渦巻かせながら目を閉じた・・・・・
今夜は眠れるだろうか・・・・・
ユリナの叫びでした!
次は・・・やっと旅がはじまります!




