愛の形
書くの遅くてすいません!
気持ちよく晴れた空の下。
井戸の近くで、三人の女性が集り洗濯をしていた。
その女性達の一人が、洗濯をしながら隣で洗濯している女性に尋ねる。
「ユリナ!もう仕事馴れた?」
「はい」
「ユリナが来てもう、3ヶ月になるんだね〜」
そう3ヶ月・・・・・
ユリナは3ヶ月前。シュエに、ある仕事を紹介してもらった。
それはメチェーリ公爵家のメイド。
つまり、シュエの実家の使用人である。
そして今。一緒に洗濯をしているこの二人は、先輩メイドだ!
ユリナに最初に話しかけた方が、初対面でユリナの頭をかち割ってくれたクレール・カッツェ。
そして、後に話した方がアン・メイプルという。
勤めだした頃。
クレールが罪滅ぼしのつもりだったのか、やたら世話を焼いてくれた。
彼女は村の人達と違い、やたらと貶してくる事がなく(グレルが元凶)とても仲良くなれた。
彼女達と同い年なのも大きいと思う。
ユリナの、生まれて初めての女友達だ。
ユリナ達は、毎日洗濯をしながら色んな話をする。
なんでも、二人は12歳でこの屋敷に務めに来たらしい。
二人ともメイドの家系で、メイドになるため厳しく育てられたとのことだ。
使える貴族家を全力で護れと、口酸っぱく言われていたらしい(だから・・・・私はあんな事になったのか)そしてメチェーリ家に使えて早 三年。
彼女達にとってシュエは謎の怖い人だったらしい。
口数が少なく表情筋が動かない。
シュエの表情は、家族と話していても多少変わる程度。
そんな彼が、ユリナのために激怒して、笑って・・・
一体・・・・どんな関係だと不思議がられた。
「友達、幼なじみが正しいと思う」
・・・・・二人は微妙な顔をした。
偶々(実際はユリナの様子を見に来た)通りかかったシュエは、メイド二人に憐れみの籠った目を向けられている。
・・・・・何故だ!
「ユリナ、洗濯は終わったか?」
シュエがユリナに、そう言いながら近づいてくる
・・・・・そう言えばシュエ・・・今日は非番だと言ってたな。
「これ終わったら終わり、」
「じゃあ。お茶しないか?」
「メイドがお茶したら駄目でしょ?」
ユリナのすぐ横にいたクレールが、シュエに聞く。
「シュエ様。メイド長に了承もらった?」
「もらった。お前達にも飲ませてやれとな。」
それを聞いたクレールは、満面の笑みで笑う。
「やった!今日のはユリナの作ったアップルパイでしょ!」
アンも、嬉しそうに唇を舐める・・・・・
アップルパイの味を、思い出しているんだろうな・・・・
「え!やったー!」
「早く終わらせるわよ!」
気合いの入った二人は凄い・・・・・あっという間に、洗濯物が減っていく。ユリナの倍の速度だ。
「・・・・では・・・あとで・・・・」
シュエは複雑そうに二人を見たが、暫くすると屋敷に入って行った・・・・
メチェーリ家の、屋敷の中心部にはお茶をするサロンがある。
サロンのガラス張りの天井は、美しく光を反射していた。
そこには既に、お茶の準備をしている
・・・メイドと妹が・・・・・・
「お前もか・・・・・」
ユリナだけでいいのに・・
「だって!私もユリナさんと話したいもの」
そうこうしている うちに、ユリナ達が洗濯を終わらしてやって来た・・・・・
メイド二人も一緒だ。
「お待たせ!あっラクス様!」
「ラクス様も、お茶ですか?」
「私達、同席して良いのかしら?」
「良いわよ!此所はメチェーリ公爵家のサロンよ?他所では駄目だけどね。」
カチャリ・・ラクスは自分の茶器にポットからお茶を注ぐ・・・・そして、ポットを元の位置に戻した。
「だから・・・今日は、皆自分のお茶は自分でいれるのよ?兄様・・・無視してお茶注がないで!」
シュエは、ユリナ(ユリナのみ)の分の茶器にお茶を注いでいる。
メイドの二人は、何時もの事と割れ関せずで・・・お茶を各々 自分で注いだ。
「・・・・火傷をするかもしれない・・・・・」
「いやいや!ユリナは、毎日私のお茶の時に、注いでいるわよ!」
「・・・・・しかし・・・・」
「・・・・そんなに世話したいの?」
「・・・」
「・・・・じゃあ・・私がシュエのカップに注ぎますよ。それなら良いでしょう?ラクス様」
ユリナは、そう言うとシュエのカップにお茶を注ぐ・・・・・
「ありがとう。ユリナ・・・」
それを見たシュエは、かなり嬉しそうに微笑んだ。
そしてラクスと外の二人は、ハーとため息を吐く。
この二人は、何時もこうなのだ・・・・
夫婦みたいにイチャイチャして、空気がピンク!
今みたいにお茶の時は、まるで妻のようにシュエがお茶を注ぎ、菓子を切り分け皿に盛る。
シュエは、当然の様にユリナの隣に座り・・・ユリナの口元が汚れたら、自分のナプキンを使い拭って・・・・・
あんたどうしたんだよ!ってな感じだ。
それを、疑問に思わないユリナもユリナだが・・・・・
「ねぇ、本当に付き合ってないの・・・・・」
ラクスは、ユリナに皆思っている疑問をぶつける。
ユリナは、アップルパイをシュエに食べさせてもらい(おい!!)モグモグしていた。
そして、口の中身を飲み込んでからラクスの方を向く。
「付き合ってないですよ」
明らかにシュエがしょんぼりした。
「ああ、付き合ってないな」
シュエは苦虫を噛んだ様な、顔をしながら言う。
・・・・・そんなに言いたくないのか!
「ユリナは兄様嫌い?」
絶対無いが・・・・・一応。
「好きですよ?」
「どのくらい?」
ユリナはうーんと考え込む。
シュエは期待に満ちた目を・・・氷結男は何処行った!
「えーと・・子供産んでもいいくらいかな・・・」
「「「え!」」」
とびすぎだろ!!三人は同時に思った。しかし、一人 違う事を考えた。
「じゃあ、産んでくれ!」
三人は再び仰天。
お前何言ってんだ!
「良いよ。妻は嫌だけど、愛人にならなったげる」
おい!愛人って!
シュエ!お前それでいいのか!
「分かった。じゃあ、今夜・・・・・」
三人は、一斉に立ち上がる
「「「茶会は終わりよ!!」」」
いきなり・・・・叫び去っていく三人を眺めながら、ユリナは首をかしげた。
「何で怒ってるの?」
シュエは興味すらない様で、ユリナに微笑む。
「さぁな。ところで・・・」
そして走り去った三人はと言うと・・・・・・
「何で!何でよ!私モテないの!あんな鈍感女がもてるのに!」
「私の方が髪も手入れしてるのに!なんでよー!」
「愛人って!愛人って何よ!結婚しなさいよ!私の婚約者は、長男だから公爵家継げないのよ!何で嫌なのよ!」
やけ酒を飲んでいた。
それから数時間後。
屋敷の二階。屋敷の主達の、私的な部屋のある場所にこの家の女主人。
シュエとラクスの母親である、アミーラは来ていた。
・・・・というのも・・娘のラクスが、夕食の時間になっても、部屋から出てこない為、叱るついでに娘の部屋に訪れいるであろう。
行方不明のメイド達も回収に訪れた・・・・・・のだが・・・・・・
「何をしているの・・・貴女達・・・」
部屋はひどい有り様だった。
其処らじゅうに酒瓶が転がり、ヴーヴー唸っている物体が三つ・・・・・
何処から持ってきたのか。呆れてしまう。
アミーラは、部屋から酒気が漏れ出さぬように直ぐにドアを閉めた。
そのままドアを開けていたら、廊下が酒臭くなる。
そしてアミーラは、廊下に戻りメイドを呼びに階段を下りた。
そして一階にある、メイドの休憩室に向かった。
歩きながら、アミーラは3ヶ月前を思い出す・・・・・
あの子が屋敷に来るまでは・・・・あのメイドの二人は、必要がなければラクスに近づきもしなかった。
表情も固たく、ラクスと中々打ち解けてはくれなかった。
あの子達は・・・・ラクスの使用人兼友人になって貰おうと考えて、私の懇意にしている使用人の家系の、性格の良く年の近い娘を選び雇い入れていた。
他家に嫁ぐ女は、嫁いだあと必ず苦労をする。
義母にだったり義理の姉だったり、女はとにかく大変だ。
たまにいい家族もあるが、私も結構苦労したのだ。
それでも何とかなったのは・・・気の知れた友人兼、側使えがいたから・・
だからアミーラは、彼女達を雇いいれた。
しかし・・・・
三年たっても、彼女達とラクスの関係は変わらない。
アミーラは半分諦めていたのだ・・・・・
しかし・・・・あの子。ユリナが、我が家にきた。
ユリナは、どうしょうもなく不器用で要領は悪く、覚えも悪い。
礼儀作法とお茶は、まあまあだが・・・・・・それ以外全滅だ。
顔も並み、挨拶はきちんとするが必要な事以外話さない。
村で、上手くいかないはずだ・・・
小さな村ほど人付き合いが密なのだから・・・
そして・・・
初対面で殴ってしまい後ろめたいクレールと、同い年で親友のアンが彼女の世話をした。
結果・・・三人は友人同士になった。
そして・・・ユリナに異様に世話し構いまくるが、嫌がらない一線をわきまえる息子(我が子ながら、恐ろしい世話ぶりだ何処の良妻だと叫びたい)を見て、シュエに構われないラクスがユリナに絡み、メイドが巻き込まれる・・・・・
シュエとユリナの異様なラブラブぶりに自棄になり、今日の様な酒盛りが、度々開かれていた。
ラクスは婚約者が忙しく中々逢えないせいだから、旦那様に言って彼に休暇を貰えるようにして貰おう。
うん、それがいい・・・・・
メイド達には、男の使用人を紹介しよう。
身軽な次男坊とかを・・・・
だってラクスについて貰うのだから・・・・・
アミーラがそんな事を考えながら歩いていると・・・・・
目的地であるメイド達の休憩室についた
メイド長に、二人がラクスの所にいた事を教えるためだ。
すると・・・・中から話し声がする。
扉に立つと・・メイド長と、その夫である家令が話していると言うのが分かった。
「あなた。見つからないの?いい人」
「何人か絞れた!あの二人の休暇を調整してくれ!私からカッツェ家とメイプル家には話をつけておく。本人には家から手紙がくるだろう。私達が言うより良いだろうしな」
「フフ懐かしいわね。私は手紙にビックリしたものよ」
「私も回りに言われた口だなだが、私はお前と夫婦になれて幸せだぞ?」
「もう!」
バタン!!アミーラは我慢出来ず扉を勢いよく開けた。
音に驚きながら、アミーラに気付いた二人は慌てて離れた。何をしようとしていた!何を!
「あっアミーラ様!」
「どっどうなさったのですか?」
「メイド二名が、ラクスの部屋で潰れています。片付けと介抱を頼むわ」
二人は一斉に頭を下げる。
「「はい!ただいま!」」
二人は慌てて部屋を出た。
メイド長は、何人かのメイドに袋を頼んでから駆けていった・・・・・瓶を入れるようの袋だろうな。
・・・・ああ
旦那様に逢いたい・・・・・
なんかむしょうに・・・・・逢いたい・・・・・
アミーラは、ムシャクシャ言い様の無いイラつきを覚える。
アミーラは淑女にあるまじき荒々しさで歩き、食堂に付くと息子がいない・・・・・
片付けをしているメイドに訪ねると
彼女は少し気まずげに・・・・・
「あっのっその・・・・用事があると・・・・」
アミーラは、ふと・・・・・あることにアミーラは気づく。
ユリナがいない・・・・したっぱのユリナが片付けにいないのは可笑しい。
「ユリナは?」
メイドは、ビクッとして恐る恐る他のメイドの方をチラミする
・・・・・ああ、やっぱり・・・・・
「あの子・・シュエが連れていったのね・・・・・食事いらないわ・・・・・下げて・・・・・」
「奥様・・・・・」
メイド達は、痛ましい目でアミーラを見る。
シュエはいつだってユリナ優先だ・・ユリナが来てから(いや・・・・来る前からか・・・・)
ドタドタドタドタ。バタン!!
その時。喧しい音をたてて大柄の男(この家の主人のバルバロ)が入って来ていきなり唸るように言った。
「腹が減った!直ぐに食事にしてくれ!ん?もう食ったのか?一緒に食おうと思って急いで帰っんだが・・・」
バルバロは、片付けられる食器を見ながら見るからにガッカリしていた。
アミーラはそんな夫の腕に、手を絡め嬉しそうに微笑む。
「私はまだですわ!一緒に食べましょ!貴女達支度をお願い」
「「「はい!」」」
メイド達は嬉しそうに食事を運ぶ・・・・
アミーラとバルバロは席つくと、美味しそうに夕食を食べ始めた。
「旨い!やはり家の食事は旨いな!アミーラ!」
「はい!旦那様!」
ああ、幸せ!
子供達はもういいわ!
勝手にすればいい!
私には旦那様がいる・・・・
それだけで・・・・・・
私は幸せよ!
どうでしたか?
補足すると、バルバロ様は脳筋野郎なので甘い言葉など吐きません。アミーラ様は諦めてます。でも、そこがいいと言う感じです。息子と娘に愛情はありますが・・・・・
次はクレールとアンが主役です!