表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生しても私は私  作者: 柳銀竜
サヴァー 編
71/174

虚無君は!生物兵器じゃありません!

 

「私。虚無作れるよ」


 室内に沈黙が流れる・・今・・何て言った?

 ユリナは呆ける者達に、楽しそうに笑いながら自分を親指で指差した。


・・・かなり自慢げだ。


「だって虚無作ったのは、前世の私だから」


 サヴァーは目を丸くして、声すらでない・・だって・・虚無を作ったのは・・・・・


「カインは、前世の私のメモを見たんだろうな。教えた事 無いしね。私はね、カインのお母さんなんだよ。まあ私の前世がなんだけど」


「・・・レインなのか?」


 サヴァーは、幼い頃に読でいた。史実について記された歴史書を思い出していた。

 その歴史書の中には、異界の娘が出てくる。

 史実では教王をたぶらかし、国を傾けた悪女と言う事にされているが、ディオス公爵家では違っていた。争いを毛嫌いする小心者の少女。


彼女が、その少女の生まれ変わりだと言う・・・

 サヴァーはじっくりユリナを見た。


 すると・・話を聞いていたイデアが、あれ?と首をかしげた。


「え?ユリナは、柳田美里でしょ?」


 そう。ユリナの前世は柳田美里であり、レインではない。


 ユリナは、ニヤリと笑いながら楽しそうにイデアに言った。


「偽名だよ!ゲームで良く使うやつ」


 ユリナは楽しげに、イデアに話した。

 いつも一人でやるタイプの、ロールプレイングゲームばかりしていたから、何となく、人に偽名を呼ばれればウキウキする。

 ゲームの、主人公になったような気がするからだ。


「へー私はいつもユウコだなー」


「ああ・・大体みんな自分の名前つけるよね」


 イデアは余り考えず、自分の名前を入力するタイプらしい・・・


「そうそう!すごい子は英語の・・・」


 話が弾み、段々ユリナの声が大きくなる。

 ヒートアップしそうなユリナを、イグニスがイデアから引き剥がした。


「脱線しすぎだ」


 イグニスは叫びながらイデアの前に立ち、ユリナからイデアを完全に離す。


 そうでもしないと、二人は止まらない。腹立たしい程仲が良いからだ。


「そうだ!ユリナの前世のレイン・・いやミリの旦那は、サヴァーの先祖なんだよな?その・・似てるのか?ユリナの前世の旦那に・・・」


 グレルは、チラチラとサヴァーを見ながら、ユリナに聞いてきた。


 ユリナは・・ん~と考えながらサヴァーをじっと見る。


・・そうだな・・・・


「カインよりサヴァーの方が似てるね。

 私の・・ミリの血が、混じってないから良かったんじゃないかな」


 サヴァーは、北欧寄りの顔をしている。

 だがカインは、ミリの血が混じっているからか、東洋人ハーフみたいな顔をしていた。

いや、神族と人間のハーフだったよ・・・

 グレルは、サヴァーがユリナの前世の旦那に似ていると聞いて、グレルは悲しそうな顔をしながら、ユリナを見つめた。


「・・と言う事は好みなのか?」


 は?ユリナは間抜けな顔をしながらグレルを見る。何言ってんだこいつ・・・


「・・・好み?綺麗な顔ならそれだけで好みだけど・・ああ!赤い目は好みじゃないから、心配しなくていいよ」


 ユリナは考えながら、グレルに話していたのだが、顔が綺麗なら!と言った所でイグニスが嫌そうに顔を歪めた。

 それを見たユリナは、慌ててイグニスは好みではないと訂正する。そもそも自分から、王太子なんて面倒な相手に近づかない。

 ユリナがイデアを見ると、イデアは可笑しそうに笑っていた。


・・彼女は気にしてないみたいだ。良かった。友達無くしたくはない。


「心配してないわよ。

 それにユリナって、自分から口説くなんて面倒な事はしないもんね」


 イデアは、ユリナの性格をよく理解している。

 その通りだ・・それに・・・


「イグニス様が、私を口説く事もあり得ないよ。

 本当に・・フェンリルって一人を愛するとしつこいんだから・・・・」


 ユリナは、ハーとため息をつきながら呟いた。しょうがないなと言いたげに。

 そんなユリナの言葉に、イグニスはピクリと反応する。


「フェンリル?俺は人間だぞ?」


 イグニスは人間だ。


マクダリア王家の先祖を遡っても、フェンリルなんていない。

 首をかしげるイグニスに、ユリナはああ・そうだったと、イグニスを見て説明を始めた。


「イグニス様の前世だよ。因みに・・・前世でも、イグニス様とイデアは夫婦だったんだよ。イグニス様の一目惚れ。

イグニス様はフェンリルの族長だったのに、弟に立場を押し付けてイデアと結ばれたんだよね・・・」


 ユリナが、フフフと笑いながらイデアとイグニスに教えている。

 すると、今まで黙っていたシュエが重々しく、ジットリとした目でユリナに聞いてきた。


・・・何か・・・怖い


「この中に、前世の夫がいるだろう?誰だ」


 感が良い彼は、気付いたようだ。ユリナの前世の関係者が、全員ユリナの近くに居ることに・・


「・・・・」


「・・・・」


 シュエだけで無く、グレルも無言でユリナを見る。

 数秒。二人の重い視線に耐えきれなくなったユリナは、グレルを指差した。

 グレルは答えを予想してパアアアと、嬉しそうな顔をする。


「・・グレルが前世の旦那だよ・・シュエはその部下」


「やったああああ!」


「くっ」


 勝利の雄叫びを上げるグレル。


 そんな彼を、少し・・ほんの少し鬱陶しく感じたユリナは、シュエに優しく笑いかけなが口を開いた。


「シュエの前世は、スレイプはずっと私を庇い守り大切にしてくれたよ・・・グレルの前世、リームと喧嘩した時も一晩中慰めてくれたし、最後に言われたんだよ・・・・次は自分を選べって」


 フフフと笑うユリナに、シュエが抱きついた・・凄く嬉しそうだ。


「良くやった!前世の私」


「俺は!俺の前世は?!」


 前世の自分を誉め称えるシュエを放置して、グレルはユリナに叫ぶ。


必死の形相だ・・・怖い・・・・


「・・五月蝿いくらい毎日毎日私に愛してるって・・まあ・・今と変わらない」


「・・・そうか・・・」


 ユリナに変わらないと言われて、グレルはガックリする。

何か可哀想だ・・何も言ってはやらないがな・・・


「そんな事より!虚無を作れるってどう言う事だよ」


 話が一向に進まない事に、苛立ったサヴァーが叫ぶ。

 ユリナは忘れてた!とサヴァーに振り向き虚無にていて、詳しい説明を始めた。


「虚無は私。ミリが作ったんだよ。作り方なんて覚えちゃいないけど、虚無を作った時の部屋荷は、まだ材料と資料。作り方を書いたものがあるはずなんだ。

その部屋には、私しか入れない。登録した魔力と、合言葉がないと入れないからね。

 多分。ミリが死んでから、誰も入れて居ないはずだから、材料と資料が手付かずのままで、あるはずだよ」


「前世のお前は、物騒な奴だったんだな・・そんな生物兵器を作るなんて」


 ユリナの話を、大人しく聞いていたイグニスが、危険物を見るような目でユリナを見た。恐ろしい奴だ。


「と言うか・・・良く作れたわね」


 イデアは寧ろ、魔術が無い世界で産まれたのに、虚無なんて凄い奴を作ったユリナを凄いと感じたイデアは、尊敬の眼差をユリナに向ける。


「魔道書を片っ端から読んだからね・・・・・材料も豊富にくれたし」


 イデアに誉められて、ユリナはフフフフと自慢げに笑う。

 そんなユリナを見ながら、幼馴染みであり愛人2号のグレルが、ヤレヤレと首を振った。


「ユリナ。好きなことは、けっこう凝るよな」


 料理を・・凝った物を作ると、最終的に魔女鍋状態になるのが常だ。

凝ったからと言って、良いものが出来るとはか限らないのだ・・・


「当たり前だよ!と言うか虚無は、物騒な生物兵器じゃない!」


 ユリナが叫ぶと、イグニスが訝しげにユリナを見た。


「どういう事だ?サヴァーやミンスの話では、人を食べると聞いたが」


「うん食べるよ!」


 頷くユリナを見ながら、イグニスは頬をひきつらせる。


 ・・うんって・食人は物騒だろ!!


「人間を食べて、食べた人間の傷を癒すんだよ。

 だから・・食べられても、死ぬどころか大怪我も完治する」


 え?訳がわからない・・イグニスは呆れ顔で、ユリナを見ながらため息をついた。


「・・何故・・・食べる仕様にしたんだ?もっと・・・何か、良いやり方は無かったのか?」


 パクパク人を食べて、人を癒す巨獣・・・

 食べられる奴は、例え傷が癒えても精神的な病にかかりそうだ・・


「だって・・・敵を殺したく無かったんだよ。

 敵を無傷で捕まえられて、味方の治療もできる一石二鳥だと思う!」


 叫ぶユリナの言葉を聞きながら、イグニスは首をかしげた・・・・・


「一石二鳥?」


「一つの事柄で、二つの特をする事だよ」


 一石二鳥について説明を受けて、イグニスは理解したと言わんばかりに頷く。

そしてユリナは、話は終わりだと言わんばかりにソファーから立ち上がった。


 タッタッとドアノブまで行くと、ユリナはドアノブに手をかけて振り向き、楽しげに笑う。


「じゃあ。行こうか」


 部屋を出たあと、ユリナ達は皆でゾロゾロ地下室に向かった。


地下室は今。牢屋として使われていて、その奥一番古い牢屋の一つの部屋の奥に、ユリナは進む。

ユリナは記憶ではなく、自分の魔力を探って要るので、長い時間で変容した地下室もスイスイ進む。


 そして一つ拷問室の前で止まった。


「此処だ」


 ユリナは拷問室の中に入ると、拷問器具を取り付けている壁を指差した。


「退けて!これ」


 ユリナに言われて、グレルとシュエは拷問を外し壁板を外す。

 するとそこに、扉が現れた。部屋が使えないので壁板で塞いでいたらしい。


 ユリナは現になった扉に手をおき、触る。そして合言葉を叫んだ。


「開け!ごま!!」


 ズルズルズル・・大きな音をたてて扉が開く。


「変な合言葉だな」


「これなら誰も入れない」


 ユリナは、合言葉を酷評されたが気にしない。そんなに、合言葉に愛着はないからだ。


 そんな事より大問題が・・・・・


「うわっ・・埃っぽい!舞え(微風)集まれ(収風)よし」


 ユリナが呪文を唱えると、微風が部屋中を舞う。

 数秒間。魔術の風が部屋の隅々まで舞い、埃を空中に巻き上げる。そして風が集まり一ヶ所に埃が積もった。


 ユリナは迷う事無く、机の引き出しを開けて、袋を取りだし埃を魔術でいれる。


「魔術で掃除する奴・・始めて見た・・」


「ユリナはズボラなのよ」


 魔術は大体戦闘に使われる。今ユリナがした魔術は、結構・・大量に魔力を使う。

 普通は、そんな勿体無い使い方はしない。皆にユリナは、生暖かい目を向けられた。


 だが・・・そんな視線を全く気にせず、部屋をアサリ始めた。


 ガサゴソガサゴソ・・あっ!ユリナは瓶を一つ見つけて歓喜の叫びを上げる。


「あっ!虚無君自体が残ってる!」


 ユリナは、瓶を皆に見えるように掲げる。


「まじか!」


「まて!数千年も此所にいたのだ・・・・死んでるかも知れない」


 グレルは驚き、シュエは冷静に不安要素をつげる。


 ユリナも不安になった。ユリナは瓶を傾け中身を床に垂らす。

 灰色の液体はべちゃと床に落ち、ウネウネと動く。


一ヶ所に固まるとモコッと起き上がる。


「ムームー」


 アザラシ状のスライムが、ウネウネ動く。

 ユリナは、虚無が無事な事が嬉くて笑いながら叫ぶ。


「生きてた!!」


「アザラシ?!」


 イデアがムームー言う生物をツンツンつつく。

 女二人が可愛いね!ときゃいきゃい騒いでいると、男達が同時に叫んだ。


「「「「気持ち悪い!!」」」」


 嫌そうに叫ぶ男達を、ユリナとイデアは不思議そうに眺めた・・・・・


 

虚無君は兵器扱いでした・・・・・

可哀想です・・・・・

次は虚無くん再登場!です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ