家族
ちょっと暴力的です!
・・・・・気持ちいい〜
翌日の早朝。
ユリナは与えられた客室の、寝台の柔らかい寝具を堪能していた。
しかし、その寝台に近づく者が・・・
微睡んでいたユリナは、いきなり殴られた。
頭がくらくらする・・・・・
「浮浪者!?何処から忍び込んだの!立ちなさい!此処は名門メチェーリ公爵家の客室よ!ぐずぐずしない!来なさい!旦那様に突きだしてやる!」
朝からよく、こんな大声だせるな・・・・・
あっ血がでてる・・・・・
ユリナは、烈火の如く怒っている女性の手に箒があるのが見えた。
あれで殴られたのか・・・・・
「早くしなさい!」
女性は再び箒を振り上げた。
ああ・・死ぬな・・・
ユリナは目を閉じる・・・・・
短い人生だった・・・・
「何をやっている・・・・」
地を這うような、凄まじい怒りに満ちた低い声。
怖い・・・怖い過ぎだ!誰だろう!
ユリナが目を開けて見れば・・・・・シュエが、女性の箒の柄を掴みながら彼女を睨み付けていた。
そんなシュエに、女性は震えあがっている。
しかし、それでも頑張って主張する 。
「しっシュエ様!あっあの、その浮浪者が、勝手に入り込んで!それで・・・・・・」
「この娘はお爺様の教え子。
訳あって王都で働く事になり・・昨夜・・・・この屋敷にきた。
遅い時間だったゆえ皆に言わず、私が此処で休むよう言ったのだ・・・・ところで、何故 此処に?」
「だっ旦那様の御友人が、今日泊まっていかれるらしく、メイド長の命令で・・・・そうしたら・・じっ女性が寝てて・・・服装が古いから浮浪者だと・・・・だって!不審者だし・・・・・」
泣き出した。気まずい。
「ねぇ?シュエ。止血したいんだけど・・・・・」
「おい」
シュエはメイドに顎で、行けと示す。
「はい!ただいま!」
命じられたメイドは、直ぐ様駆け出した。
そして、騒ぎを聞き付けた屋敷の人間達が、わらわら出て来る。
それを掻き分けるようにして、さっきのメイドの女性が、救急箱みたいなのを持って私のすぐ横にしゃがみこんだ。
メイドは箱を開いて消毒液のようなものを取りだし、ピンセットをもって綿を掴み液を染み込ませる。
「失礼します!染みますよ」
う゛っいったい。
「失礼します!」
女性は綿をゴミ箱に捨て、ピンセットを戻し包帯を巻く。
巻き終わると、女性は深々と頭を下げた。額が床についてる。
「申し訳ありません!」
私の方が申し訳ないよ・・・・・
「頭を上げてください」
「でも・・・私・・・」
「貴方の行動は正しい。
不審者がいれば排除しようとするのは当たり前です。
むしろ貴方は私が浮浪者で、なりふり構わない危険人物だと思ったのでしょ?ならば、屋敷の人間たちに危害が及ばないよう。
無力化するのは当然の行動です。
謝るのは私の方です。
申し訳ありません。あまりの剣幕だったので、弁解する気もおきませんでした。まあ、短い人生だったとは、思いましたけど・・・・・」
シュエはため息を吐く。
「弁解はしろ・・・・・」
シュエが溜め息混じりに呟いたその時。
人の山を掻き分けるように、何かゴツイ人がでてきた。
あっバルバロ様だ!綺麗なお姉さんと女の子もいる!シュエが小さく母上って!うっそ若いよ!女の子は兄様って!シュエが美人なのは血筋か!
まあ・・・どうでも良いことは置いといて。
「何事だ!って、何でお前が?!どうした!その怪我!」
「ああ。この傷はさっきその子に、浮浪者と間違えてられてボコられました。
此処にいるのは家出したからです!タンペット先生にお願いしたら。シュエ様が紹介してくれると言われました。あっ!あと、昨夜 此処に来ました。」
女性が青ざめる。あれ?事実言っただけなのに・・・・・
「そっそうか・・・・・」
バルバロ様が微妙な顔をする、その横のシュエの母親が私に話かけてきた。
「何故。家出したのですか?」
「元々、成人したら出て行くつもりだったのですが・・・・
昨夜。収穫祭と言う祭がありました。
そこでひどい目に遭い、逃げるように此処に来ました。」
「ひどい目って?何されたの?」
「幼なじみに求婚されました」
「それ。酷いことなの!」
「考えてみてください!辺境の小さな村の人気者の美男子が、引きこもりの幼なじみの女の子に、告白しました。回りは何を望みますか?」
「それは・・・・・二人の結婚かしら」
「でしょう?求婚断ったら私が悪者にされるでしょ?皆男の子の味方です。でも、結婚したらどうなると思います?」
「え?普通に幸せになるんじゃない?」
「男の子はね・・・女の子は回りの女達に嫌味いわれますよ?
大して、好きでもない者の子供をうんで世話して、したい事も我慢して、あんた幸せねとか言われるんですよ?というか、辺境の小さな村で結婚なんかしたら村から出れないです!
ぜっったいに嫌です!ね?酷いでしょ?酷いことでしょ!」
「まあ・・・・・酷いことですわね。貴女にとって」
「だから、家出したのです!」
「勝手に、家出するのは酷くはないのか。」
「酷いですよ?親不孝です!だから、仕事するんです!お金を稼ぎ家に仕送りします!私に今までかかったお金を返すつもりです!」
「貴様は!親の気持ちが分かっていない!」
「愛情をお金で返すなんて!」
「ご両親と、話し合いした方がいいわよ!」
三人に責められ、ムッとなった私を庇うようにシュエが弁解する。
「そのように、責めずとも・・・・・」
「シュエは黙って!」
「貴様は黙れ!」
「兄様。黙って!」
ユリナはふてくされた顔をさらし、三人に聞いた。
「ならば、どうしろと?」
バルバロが声を荒げる。
「帰れ!話し合え!」
ユリナは真面目な顔をして、姿勢を正したした。
「では、殺してください」
「「「「え!」」」」
ユリナを除く四人が目をむく。
「村に帰りると確実に結婚させられます。私はめんどくさがりです。
両親を説得など、途中で挫折するに決まっています!あの村で生きていくくらいなら、強そうな貴方に殺してもらいたいです!あっ出来れば一撃で塵にしてください!」
直ぐにバルバロが、突っ込みをいれた。
「根性だせ!」
即座にユリナは言い返す。
「無理です!両親は人が良いので息子みたいに中のいい、アイツが泣きついてきたら・・
結婚しなさいってなります!
それを説得ななんて・・流されるにきまってる!」
「・・・・・」
「・・・・・」
押し黙る三人・・・・・
流されるのか!!根性だせよ!
そしてユリナは、シュエの両親に説得されて村に戻って来た。
嫌々だが・・・・・
ユリナが村に戻ってみると、タンペット先生の家の外が、かなり騒がしい。
「ユリナ!!」
「ユリナ!出てこい!」
「ユリナ!」
「姉ちゃん!」
両親と弟とグレルが、タンペット先生の家の前で叫んでいた。
そんな中・・・・・タンペット先生は、割れ関せずでお茶を飲んでいる。
おい!!
「タンペット先生・・・・・」
「ユリナか?どうした?」
「両親と話し合いをしなさいって言われた
ゴメンね・・家の家族が・・」
「構わない・・・気にしてないしな」
気にしろよ!とは言わずに、ユリナは玄関に向かった。
すると・・・・・
ドンドン!!ドンドン!!
両親達が今度はドアを叩き出す・・・・・
「タンペット先生ろ・・・ブヘッ!!」
「喧しい!!」
「「ユ リナ !」」
勢いよくユ リナがドアを開けると、グレルの顔面にクリーンヒット。
グレルは痛みで、うずくまってしまった。
「入って。話し合いをしよう」
それから半日。
ユリナは両親を説得して何とか王都に住む許可が得られた。
疲れたよ・・・・
そしてグレルは・・・・・
「俺・・村を出る・・・・金持ちになって・・・アイツより強くなって・・・・・ユリナを振り向かせてみせる!」
「グレル・・・」
「頑張りなさい!!応援してるわ!」
グレルの運命はこの時・・・・・完全に狂ったのかもしれない・・・・・
家族と和解でした!
次でやっと
彼女の新しい生活が始まります!