初めての友達
ディオス公爵が、防音魔術を発動させ。
少年キリクに、粗方作戦を話す。計画を話終わると、話が脱線した。
一度は奴隷に落ちたもの同士。嫌に気が合ってしまったのだ。
貴族に対す愚痴や悪口等を、ワイワイ楽しく話した。
そして、スッカリ気が合い。何故か、友人のような関係になってしまった。
キリクが気さくだったからか、はたまた奴隷一族であるせいか、公爵の身分のせいか、友達が出来なかった。
どれが原因かは、誰にも判断されたくない。
俺は・・ボッチじゃないからな!!!
まあ・・それは置いといて・・・・・
「分かった!」
キリクは、親指をたて任せろと言わんばかりにニカッと笑った。
それを見たディオス公爵も、ニカッと楽しそうに笑う。
「期待してるぞ!少年」
「少年じゃなくてキルクだって!」
ディオス公爵の(少年)と言う台詞に、キリクはムスッとする。
「すまん すまん」
ディオス公爵にかなり軽く謝られ、不満げにふんと鼻をならすキリク・・・・・
キリクは、ディオス公爵の名前を言おうとしてあれ?そういえば・・・・・
「そういえば・・・兄ちゃん姓は聞いたけど名前は?」
ディオス公爵はキリクに聞かれ、今気づいたとばかりに、明るい顔で手を叩く。
今まで、誰にも名前を聞かれた事が無いから気付かなかったなんて・・
そんな寂しい台詞を、夢多き少年に言いたくない・・・
「ん?ああ・・・・すまんすまん。俺はサヴァー。サヴァー・ディオスだ。キルクこれをやろう」
ディオス公爵。
改め・・サヴァーが、キリクに小さなタグの付いた首飾りを渡した。
キリクは首飾りを受け取り、タグを見る。
身分証に似ているが、幾つもの魔方陣が刻み込まれている。
「ん?身分証・・あれ?始めて見るやつだ」
キリクが、物珍しげにタグをいじくり回していると・・・
サヴァーがニヤリと笑う。
「ディオス公爵家の身分証だ・・・うまく使えよ」
うえっ!?
キリクは思わずタグを落としかける。
そして、キリクは思わず叫んだ。
「マジかよ!!!
公爵って・・王族じゃなかったか?あれ?サヴァー・・ディオスって・・」
キリクは、サヴァーをジロシロ見る。
三公爵家の貴族・・初めて見た・・と言うか・・・・・
「平民の俺に、こんな凄いもん渡していいのかよ・・」
公爵家の身分証なら、王宮でも歩き放題だ。どんな禁止区域にも入れてしまう・・凄すぎて恐いぞ・・・
不安げにキリクが、サヴァーを見上げる。
見上げられたサヴァーは、二ッと笑い安心させるようにキリクの頭を撫でた。
「不安がるなよ・キリク。
俺はお前を信用してる。それがあれば・どの町にも・・・査定無しに入れる・・頑張れよ。あと・・ほらっ!」
そしてサヴァーは、懐に入れていた金貨をキリクの手にドンと乗せた(実は、ユリナ為に用意した、シナヨの購入資金だ、後でまた屋敷に取りに行かないと、ユリナの保護者どもに殺される)
キリクは、渡されたズッシリと重みの袋をあける・・・あれ・・・えぇぇぇぇ!!
「金貨?!」
何で!!キリクはサヴァーを見る。
サヴァーは、イタズラが成功した子供のように楽しげに笑った。
「お前は、今から俺の部下だからな給金だよ」
「高すぎだろ!」
普通。給金が割高な兵士でも日給は、銀貨二十枚。月二回くらい休みがあるとして、28日位、仕事をしたとする。
すると金貨五枚に大銀貨六枚位だ。しかし・・キリクはジャラジャラ音を出す金貨の詰まった袋を触った。
どう考えても貰いすぎだ。
ウンウン唸るキリクの頭を、サヴァーがぐりぐり撫でまわす・・・実に楽しげだ。
「ガキは黙って受けとれ」
サヴァーは笑いながら、キリクを掴む。
そして、防音魔術を解いて部屋を出た・・
あまり長い時間 この部屋に隠れていると、勘ぐられるかもしれない・・カロル伯爵辺りに・・
二人が部屋を出る。
その時、偶然目の前にユリナが現れた。
「あっ!ユリナ嬢!もう出歩いていいのか?」
ダラダラ歩いていたユリナは、ん?と振り向く。
サヴァーを見つけると、親指を立てて後ろを指差した。
「保護者付きだよ」
サヴァーが指差した方を見る。
すると、ユリナの真後ろにシュエとグレルが立っていた。
二人はピタリとユリナにくっついている。
サヴァーは、顔をひくつかせながらユリナに聞いてみた。
「監視されてるみたいで、嫌じゃないのか?」
サヴァーに聞かれユリナは、ああ。と割りと平然とした口調で答えた。
「・・ん?・グレルには生まれた時から付き纏われてるし、シュエは王都にいる間。殆んど離れなかったし・・・もう慣れたよ」
ユリナはフッと、悟りをひらいたような顔で笑う。散々 シュエ達に言ったが、聞いてもらえなかったのが本音みたいだ・・
「・・・大変だな」
「・・まあね 。で?用事は何ですか?」
ユリナは、ため息混じりに笑いながらサヴァーを見る。まだ体調が悪いのか気だるげな顔をしていた。
早く言えと、言わんばかりに見てくるユリナに・・・
何故か胸がキュンとした・・何故かは分からないが・・・
サヴァーは、自分に起きた不思議な出来事に首をかしげながら・・ユリナにキリクを差し出した。
「この少年を鍛えてくれ。と・・シュエとグレルに頼んでくれ」
サヴァーは、チラリとシュエとグレルを見る。
ユリナは覚めた目で、サヴァーを見た・・は?・・・
「・・何で、私 経由で?」
ジロッとユリナが見ると、サヴァーは目をそらす。
・・・だって・・・・・
「俺の頼みなんて、聞いてくれるわけないだろう!付き合い短いが、奴等の優先順位は理解しているつもりだ」
サヴァーはビシッと、二人を指差す。
奴等は、俺やイグニス殿が土下座したとしても無視するが、ユリナが頼めば魔獣の群れにも飛び込むだろう・・・
「・・・・・」
ユリナは黙る。頼むのが面倒みたいだ・・
ならば・・・・・
サヴァーは懐から、木箱を取り出し蓋を開ける・・そこには・・・
「これは、最高級のシナヨ・・・」
「シュエ!グレル!この少年を鍛えて!」
サヴァーが言い終わる前に、ユリナがシュエとグレルに叫ぶ。チョロイ。
「分かった」
「暇だしな」
二人は大人しく頷いた。凄いな。ユリナ・・・
そして、呆けていたサヴァーの腕を、ユリナがグイグイ引っ張り現実に引き戻す。
ハイハイ。シナヨですね・・分かってますよ・・・・
「どうぞ・・」
「ありがとう!」
サヴァーが、ユリナにシナヨを渡した。
するとユリナは、パアアアアと幸せそうに笑う。
・・・可愛らしい笑顔にキュンとした・・何故だろうか・・・
・・・・可愛い・・・・・
シナヨを貰い、ウキウキしているユリナは放置して、サヴァーは恐る恐る二人を見た。
「・・・早速 今から」
サヴァーが、今からキリクを鍛えてくれと二人に言うと、案の定。怒鳴られた。
シュエにいたっては、完全無視だ・・・・酷い・・・・・
「いまぁぁ!?」
「うん!シュエ!グレル!駄目?」
シナヨで買収され、完全にサヴァーの味方に付いたユリナが、二人にお願いすると・・・
「行くぞ・・少年。」
「おう!行くぞチビ!」
ユリナにお願いされた二人は、人が変わったようにヤル気満々になり、少年を引っ張る。男二人に引きずられて行くキリクは叫んだ。
「俺はチビじゃない!キリクだ!」
キリクの左手を引きずっているグレルが、キリクの言葉を聞いて二ッと笑う。
「ん?キリクか・・・俺はグレル。グレル・アルシル。そこの愛想がないのがシュエ。そこの可愛い女はユリナだ」
グレルは始めに自分を指差し、次にキリクの右手を掴んでいたシュエを指差す。そして嬉しそうにユリナを見た。
・・・どんだけ好きなんだよ・・グレル・・・・・
「シュエ・メチェーリだ」
シュエはチラリとキリクを見た。キリクはビクッとする。
シュエの眼光にビビったようだ・・・・・
「私はユリナ・ウイングだよ」
ユリナはシナヨを抱き抱えながら、フフフフと笑って、二人の後をついていく・・上機嫌だ。
「俺はキリク。キリク・テーラだ!宜しく」
引きづられながら言うキリクに、サヴァーは心のなかで土下座する勢いでキリクに謝った。
ヤル気満々のシュエとグレルは、何をするかわからない。
焚き付けてしまって、大丈夫だろうか・・・・・
数時間後・・サヴァーの不安は的中する・・・・・
初めての友達でした!
ディアス公爵の名前はサヴァーです!
ユリナ達も誰も聞いてくれなかったので、サヴァーは数日後不自然に自己紹介しました・・・・・
哀れな男です。
次は厳しいよ!シュエ先生!です。
・・たしか・・・・似たような題名が




