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転生しても私は私  作者: 柳銀竜
前世の過去 編
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出し抜いてやろうぜ!

 

 晴れ渡る青空の下。

 広い草原に土煙が舞っていた。

 初陣の時に来た草原だ!そこを巨大な虚無達が縦横無尽に暴れまた。

 巨大な虚無の上にいるミリが、ノリノリで叫ぶ。


「イケー虚無君たち!」


「ムー」


 虚無達は、低い鳴き声をあげてズルズル移動する。

 その数五十・・研究を重ねて分裂出来るかずが増えた・・・・・


「わあぁぁぁぁぁ」


「逃げろぉぉぉぉ」


「あれは無差別攻撃してくる!逃げろぉぉぉぉ」


「ワアアアア」


 虚無達は、又もや無差別に喰らい続ける・・

あれから三月。人間兵士達の数は大分減った・・・


初めの半数位しかない・・


 しかし・・・


虚無たちには一つ弱点があった・・


動くのが遅いのだ・・・


アザラシ形だから、陸には適していないのである。

だってさ・・・


アザラシ形・・・可愛いでしょ?


 ・・・・・はい・・ごめんなさい・・・次はちゃんと陸型作ります。


 ミリは心の中で誰かに謝った・・・誰かに・・・・・


 ボーと、虚無達が蹂躙する草原を眺める。

 すると、いきなり真下から悲鳴の様な叫び声が聞こえてきた。


・・・いつぞやの上官・・・今は師団長だ。


「レイン様!もう良いですから!虚無を引っ込めて下さい!味方を食べてます!」


 ミリは、泣きそうな顔で見上げてくる新師団長を、虚無の上から見下ろす。

 直ぐ隣にいたアリンナも一緒になって見下ろした。


「そうですか?じゃあ帰って良い?」


 ミリは師団長に叫んぶ。

 師団長はミリ達に力一杯叫んだ・・・・・何か顔が疲れてるな・・・・・


「はい!もう、敵は粗方撤退しました!お帰りいただいて結構です!」


 師団長が叫ぶとミリはのんきな声で叫んだ。


「分かりました。行くよ虚無君!」


「ムー」


 ズルズル・・・ズルズル・・・虚無とミリ達は不気味な音を響かせ草原から去って行った。


 二人は、馬を繋いでいる場所につくと虚無達から魔力を吸いとり小さくしてから、何時もの瓶に入れる。


 それから二人は馬に乗る。スパルタ教育のお陰だ。


・・・・・余り嬉しくないが・・・・・


 馬を走らせて数時間・・・・・


 皇都につくと軍服の刺繍(階級が表されているミリは例外的に将軍の地位を貰っている)を見せて皇都に入る。


 貴族は家に帰る時馬車か馬を使う。

 なので、門から王宮がある貴族街までは馬を走らせても大丈夫な広い道が通っている。

 王宮につくと馬屋に馬を預けてミリ達はリームの執務室に向かう。


報告と・・・一つ頼み事をするために・・・・・

 ミリとアリンナはリームの執務室につくと軽くノックする。


「入れ」


 中からリームの声がして入室の許可がでた。

 ミリとアリンナは扉を開けて中に入る・・・・・

 中には椅子に腰掛け机の上の書類をおいているリームとリームの隣に立つスレイプが書類を持って立っている。


 リームは楽しそうにミリを見た。


「大活躍だったな。レイン」


 ミリは誉められて嬉しそうに笑う。


「はい!虚無君たち頑張りましたよ」


 リームは優しく笑って部屋で休むように言う戦場はとても体力的にも精神的にも疲れるものだ・・・・・


「そうか・・・・・では休め」



「はい・・・・・そう言えば捕まえた捕虜はどうしてます?・・・・・」


 ミリは敬礼しながら頭を下げて気になっていた事を聞いてみた。

 何時も、捕虜を渡した後どうなったか全然教えてくれない・・・・・


「ん?教王陛下に任せている」


 王様に丸投げであった・・てか・・・教王か・・・・・・


「そう言えば私一度しか会ったこと無いですね・・・・・教王に頼まないと捕虜に会えませんか?」


 尚も捕虜に会いたいと言えば、リームが首をかしげた。捕虜を気にするミリが不思議のようだ。


「何故だ?何故捕虜に会いたいんだ」



「話をしてみたいと思いまして・・・・・妥協案があれば戦わずに済むかな・・・・・なんて・・・・・」


 ミリはやはり戦いたくはない・・・・・戦わずに済むならそれに越したことはない・・

地球だって、問題がおきたらまず話し合いだ。

 妥協できるなら、妥協して、被害が少ないうちに戦争を終わらした方がいい。


「妥協案?そんなも無いだろう?アイツらが図に乗るだけだ」


 うわ・・・・


上から目線・・嫌だなこう言うの・・・・・


「図に乗っているかは私が判断します。お願いです!お話し出来ませんか?」


 ビシッと改めて敬礼する・・・・・一分・・・・・二分・・・・・三分・・・・・

 フー・・・リームが疲れたようにため息を吐いた。

 そんなに無理難題だったのか?


「・・・・・陛下に伺ってみよう・・・・・期待はするなよ・・・・・」


「はい!では失礼します!」


 ミリは元気よく返事をしてから執務室を後にした・・・・・どうやって忍び込もうか・・・・・

 ミリはリームは駄目だと早急に諦めて忍び込む策を考えるためにアリンナを連れて自分の研究室に向かって歩きだした・・・・・


 バタン・・・・・扉が閉まるとリームは苦虫を噛み潰した様な顔をした・・・・・面倒な約束をしてしまった・・・・・


「随分甘くなったな・・・・・リーム」


 頭を抱えだしたリームをスレイプがクスクス笑う。

 少し前までミリが無理な事を言えば無理だとハッキリ断っていた・・・・・

 しかし・・・・・今は出来る限り叶えようとしている。丸くなったものだ

 リームはバッといきなり立ち上がりスレイプに怒鳴る。


「五月蝿い!行くぞ!」


「ハイハイ」


 ドスドス怒ったように部屋を出るリームの後ろをしょうがないなと苦笑しながら出ていった・・・・・

 初めはドスドス・・・・・段々落ち着いてきたのか普通に歩く・・・・数分後。

 二人は教王の執務に到着した。

 コンコンとノックすると教王ではなく宰相が答える。


「入れ」


 許可をもらい中に入ると、教王は執務中だった・・・・・・機嫌は悪そうだ・・・・・


「失礼します」


 リームが頭を下げてから教王を見る。


「何だ?」


 鬱陶しそうに教王はリームを見た。

 仕事が山積みらしい・・・・・自分より少ないがな・・・・・


「お忙しいなか失礼します。捕虜についてお話しが」


 リームがそう言うと教王は大事な事を思い出したような顔をした・・・・・


「ああ。捕虜は晒し首にする。二十人づつだそれ以上は綺麗に並べられないからな」


 並べらられた首を想像したのかとても楽しそうだ・・・・・残虐王め・・・・・

 しかし・・・・・


「尋問は終わったのですか?」


 情報はとても大事だ・・・・・内容によっては優位にたてるかも知れない・・・・・


「いいや・・・・・そもそも拷問はしていない。それに。あの者達は全て奴隷だ。情報より見せしめの方が重要だろう」


 イヤイヤ・・・・・反乱軍には神経を逆なでする以外効果は無いだろう・・・・・クソジジイ・・・・・


「彼等と話をしても宜しいですか?」


 リームは結果は分かっているが一応聞いてみた・・・・・一応・・・・・


「許可できん。どうせくだらん嘘ばかり吐くだろう」


 教王はもう話は終わりだと書類を手に取る・・・・・

 やはり・・・・・駄目だった・・・・・


「はい。分かりました・・・・・失礼します」


 これ以上は無理だとリームは考え、再び教王に頭を下げてから教王の執務室を出る・・・・・

 部屋を出ると殺気を放ちながら、歩くものだから偶々通りかかった侍女は完全にびびっついた・・・・・すまない


 リームは自分の執務室につくなり雄叫びを上げた。


「・・・・・くそぉじじいぃぃぃぃ!」


 急いで扉を閉めたスレイプが、リームをたしなめた。


「聞こえたらどうする」


「フッこの部屋の防音は完璧だ!」


 下準備は完璧らしい・・・・・なんて奴だ・・・・・


「・・・・・そうか・・・・・」


「しかし・・・・・どうするか・・・・・」


 二人は唸る・・・・・・数分間・・・・・沈黙をやぶったのはスレイプだ。


「レインの部屋にこれを忍ばせよう。アリンナなら軽く忍びこめる」


 スレイプは捕虜を放り込んだ時に使った鍵をリームに見せる。

 リームは悪役の様な凶悪な顔で楽しそうに笑う。


「・・・悪い奴だな・・・ククク・・」


「じゃあ行ってくる。お前はそれを始末しておけ」


 スレイプは執務室の扉を開けると書類の山を指差してから言い捨てバタンと扉を閉めた・・・・・

 リームはスレイプが指差した書類の山を見て嫌そうに顔をしかめる・・・・・

 

「・・・・・うわ・・・・・・暫く外にでれんな・・・・・」


 リームはガックリしながら仕事をするべく机に向かった・・・・・



 スレイプはミリの私室に向かうが・・・・・・みりとアリンナがいない・・・・・もしかしたら・・・・・・と地下にある研究室に向かう。扉が空いていたので中を見ると二人がいた。

 なかに入り・・・・・捕虜の聞き取りは駄目だった事を告げると気にした風もなく淡々とミリは答えた


「そうですか・・・・・」


 ミリも無理だと考え付いたらしい・・・・・


「では・・・・アリンナ」


 スレイプは去り際に、アリンナのポケットに何かを入れる。


「え?」


「うまくやれ」


 驚くアリンナにスレイプはソッと耳打ちした・・・・・

 スレイプが研究室からいなくなると、アリンナはポケットの中身をだした。

 アリンナは楽しそうに笑いながらミリを見た。


「アララ・・・・・悪い人ですね」


「アリンナ?」


「今夜決行しますよ?」


 アリンナを不思議そうにしていたミリは、アリンナが手に持っているものを見てほくそ笑んだ・・・・・牢屋の鍵だ!


「・・・・・了解・・・・・じゃあ昼寝しょうか」


「え?私もですか?」


「当然」


 ミリはアリンナに寝るよう命令してから自らもベッドに潜り込んだ。





 静まり返る深夜・・・・・

 アリンナとミリは自分達の口元にハンカチを当てている牢屋は地下にあり入り口から煙上の眠り薬をまくと面白いくらいに地下牢に充満した・・・・・


「大丈夫?」


「ええ。眠り薬が効いてますわ」


 煙が消えてから、目の前で眠りこけている牢屋番を観察する。


「後でバレないかな・・・・・」


 奥に向かい、歩きながらミリがアリンナに聞いてみた。


「牢屋に変わりがなければ牢番も口を閉ざしますよ・・・・・居眠りがバレたら大変ですからね」


 それに・・・・・神族はプライドが異様に高い・・・・・不意を疲れたなど、損害がない限り口にしないだろう・・・・・・


「そうか・・・・・じゃ行こうか」


「はい」


 みりとアリンナの二人は奥に・・奥に・・消えていった・・・・・・

忍び込み成功です!

次は捕虜さんに・・・・・

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