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転生しても私は私  作者: 柳銀竜
虚無討伐 編
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カインの正体は・・・・・

 

 イティアの事件の後。

 皆は自室で自由に過ごし、夕暮れ時にユリナ達は船長と船員達と一緒に夕食を食べた。


 ミンスは夕食の後。

 ユリナとイデアと、グレルとシュエをコッソリ自室に招く。


「揃いましたね?皆さんにお話しがあります」


「何?」


 ユリナは椅子に座り聞いた。


「(カイン)と(虚無)についてです」


 虚無についてなら分かるがなぜ・・・・・


「カインってさっきイティアを迎えに来た人でしょ?虚無と何か関係があるの?」


「虚無は巨大なアザラシのモンスターなのです。あの(チー)と呼ばれたモンスターは伝え聞く虚無と一致します。そして・・・・・虚無が現れる所に必ず神族の男性が現れる・・・・・彼は(カイン)と名乗ったそうです・・・・・正にあの位の年頃で・・・・・彼は先程の(カイン)は凄まじい魔力を持っていました・・・・・間違いありません!私の・・・・・私の先祖達を殺し回った男です!」


 ミンスは怒りに満ちた目をしながら声を絞り出した。


「じゃあ・・・・・さっきの人がラスボス?」


 イデアが不思議そうに聞く・・・・・

 カインは傲慢そうでも、冷酷そうでもない。

妹を守る優しい兄。と、言った印象だった・・・・・

 間違っても、大量殺戮をする人物には見えない。


「・・・・・虚無ってモンスターじゃなかったの・・・・・」


 ユリナは震えながらミンスに言う。

 ミンスは、ユリナが震える姿を見て驚いた。


「ユリナ様?」


「あの神族の人はモンスターじゃないよ!あのアザラシも人の言葉を話してた!話が通じるなら話し合えば良い!殺す必要は無いじゃん!」


 ユリナは初めは穏やかに・・・・・言っていたが、段々悲鳴の様な声になる。


「化け物です!話し合いなど必要ありません!」


 虚無を、庇うような事を言うユリナにミンスは怒鳴る。


「神族を襲う理由は?」


 ユリナは静に、怒鳴るミンスの目を見て言う。


「あの人達は、私達を襲わなかった。小さな子供を迎えに来ただけ・・・・・彼等は理性的だよ・・・・神族は何をしたの?」


 ミンスはユリナに必死に叫んだ。


「何もしてませんわ!」


 ユリナは静にミンスを見る。


「遥か昔は?」


「昔?」


 ミンスは言葉に詰まる。

 遥か昔の神族達の行いなど、彼女は知らない。


「うん。虚無が暴れたのは遥か昔でしょ?ミンスが歌ってたやつだよ」


 ユリナに聞かれ、ミンスは聖歌を思い出した・・・・・

虚無の行いは許されない事。しかし・・・虚無が何者で何処で生まれたのか・・・・・

 カインと呼ばれた存在についても・・・・・

破壊をしたと言うこと以外。語り継がれていない・・・・・


「知りません。歴史書を詳しく読まなければ・・・・・」


 困惑するミンスを見て、ユリナほ優しく笑う。


「神族の大陸に行ってする事・・・・・決まったね・・・・・ミンス。王都・・・皇都だっけ?そこに図書館ある?」


 ミンスはためらいがちに頷いた。


「はい。あります・・・・・貴族しか入れませんが・・・」


 ユリナはニィと笑いながら、ミンスを見て肩をガシッと掴む。


「ミンス・・・・・貴族だよね?私の言いたい事・・・・・分かるよね?」


 ミンスはうっと呻いて、渋々頷いた。


「・・・・・分かりました・・・・・案内しますわ・・・・・ユリナ様達が・・・・嫌な思いを・・・・するかも知れませんが・・・・・」


 ユリナはピクッとしてミンスを見る。


「嫌な思い?」


 ミンスは頷き、言いにくそうに口を開いた。


「神族の大陸にいる人間は、貿易している港以外。全て奴隷なんです」


 その場にいた、ミンス以外の人間は心底 驚いた。

 人間の大陸に、奴隷制度がある国は無い・・・・・

 昔はあったらしいが・・・・今は無い。 奴隷制度があった時代に、大規模な反乱がおきたからだ。

 その時代の王達が、反乱を収めるために奴隷制度の廃止を宣言した・・・

 それほどの事をしなければならない程の・・・・・

 大規模な反乱だった・・・・・

 そしてそれ以来・・・・

 人間の大陸では、身分制度はあるが、奴隷制度は廃止されている。

 たまに人さらい等もあるが、犯罪なので捕まれば監獄行きだ。

 初めの頃の、ミンスのユリナに対する態度の悪さは、人間は奴隷と言う、固定観念があったからだった・・・・・


「うわー・・・・・行きたくないな・・・・・」


 ユリナが嫌そうに顔を歪める。


「私達も見下されるのかしら・・・・・」


 イデアが頬に手をあて、困ったわと言いたげにミンスを見る。


「助けを頼んできたのは、あっちだぞ?」


 イグニスが不満げに言うと、ミンスが口を開く。


「巫女様とユリナ様は神の眷族ですから、教王と同じ扱いですわ」


「俺は?」


 グレルが、自分を指差して聞くとミンスが目をそらす。


「・・・・・使用人扱いですわね・・・よくて・・」


 ・・・・・よくて・・・・・

 ユリナは益々顔を歪める


「嫌な国・・・・・」


「嫌?どうしてですの?」


 ミンスは不思議そうに聞いた。

 ・・まあ・・生まれた時からなら・・・疑問感じないんだろうな・・・


「奴隷を見るのが嫌」


 ユリナが、ウエーと吐くような仕草をする。

 ミンスは、母国の奴隷達を思い浮かべて口を開いた。


「奴隷が汚ないからですか?」


「同じ人間を使い捨ての道具みたいに使う人が嫌」


「?奴隷ですよ?同じではありません」


 ミンスが不思議そうに言う、とイデアがミンスを見た。


「奴隷は言葉を話さないの?」


 ミンスは、イデアに問われて答える。


「話しますわ。言葉が分からないと仕事が出来ませんもの」


 イデアが苦笑いをし、イグニスは嫌そうに顔を歪める。

 ミンス回りの反応に困惑しる

 ユリナは苦笑いしながらミンスを見た


「まあ・・・・・奴隷国家だもんね・・・・・」


 その場にいた人間達は、皆嫌な顔をしていた・・・・奴隷国家は嫌だよな・・・・・・

 ミンスは思いっきり印象の悪くなった母国の、良いところを必死で探す。

 どうにかしようと考えたが、綺麗な花にはユリナ様は余り興味ない。

・・・・美しい建物が・・・・・ユリナ様は青い建物以外余り興味がない。

・・・・・あっ!あれがある!


「シナヨがありますわ!」


 ミンスが叫ぶ。

 ・・・・・シナヨ・・・・・ユリナがピクッと反応した。


「甲板に行ってくる!風魔術で船の速度を上げてくる!」


 駆け出そうとするユリナを、シュエがガシッと捕まえた。


「まて!もう遅いから明日にしろ!イデア様。イグニス様。グレルにミンス!先に休ませて貰います」


 扉の近くにいるシュエが、部屋の中にいる者達に言うと、イデアが立ち上がりイグニスとグレルが扉の近くに向かう。


「じゃあ私達も」


「詳しい話は大陸についてからにした方が良いみたいだしな」


「そういう事だ」


 イデア達に三人が言うと、ミンスが仄かに笑い頭を下げる。


「はい・・・・・お時間取らせてしまい、申し訳ありませんでした・・・・・」


「「「お休み」」」


 三人は一言、言って扉を開けて出ていった。

 ユリナは、興奮し過ぎて気絶している。

・・・・・どんだけシナヨ食べたいんだよ・・・・・




 ミンスは皆が帰った後。

 部屋で一人考える・・・・・

 神族、奴隷、人間。教王、神・・・・・

 ユリナ、イデア。カイン、イティア・・・・・そして、虚無・・・・・

 私は、何を信じれば良いのか・・・・・

 ミンスがベッドに座り込んで、考えていると・・・・・

いきなり頭に老女の声が響く。


(ミンストレル。ミンストレル・メディウム。聞こえますか?聞こえたなら返事をなさい。)


 念話だ!ミンスは急いで、念話魔術を発動させた。


(教王様。ミンストレルです!応答願います)


(ミンストレル。今どの辺りですか?)


(マグダリア沖ですわ。マグダリアを出発して一日たっているので・・・・・あっ!ですがユリナ様が風魔術を使用すると仰っていましたので、一週間かかりませんわ)


 老女の声が、明らかにホッとする。


(良かった・・・今・・虚無が町を襲ったと報告が上がりました・・急ぎなさい・・ミンストレル)


(はい・・・・教王様)


 プツリと通信が途絶える。

・・・・・ミンスは念話の為閉じていた目を開ける。


「・・・・・私も休みましょう・・・・・」


 一言呟くとミンスは自分のベッドに横になった。






 神族の大陸。

 その大陸の中心には皇都があり、その皇都の中心部に聖神殿と呼ばれる神殿がある。

 一国の城より大きい神殿だ。

 その中心部に教王の居住区がある。

 その居住区の豪華な一室で、ネグリジェ姿の老女がベッドに座っていた。


「良かった。思ったより速いわね・・・・・」


 誰もいない寝室に、老女の声が響いた。


「・・・速く・・速く来なさい・・・・・神族の為に・・・・・」


 老女はほんのり笑うと、静にベッドに横になって目を閉じた・・・・・



ミンスの迷いでした・・・・・

次はユリナが頑張ります!

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