鬱陶しい!鬱陶しい!!
ユリナちゃんの心の叫びです!
では。どうぞ!
よく晴れた日の朝。
ユリナは台所で、いつの間にか得意料理になったアップルパイを作っていた。
生地をこねて 伸ばし、バターを挟み、折り込み伸ばしまたバターを・・・
それを・・・・五回六回繰り返して、中にリンゴジャムを挟み、丸く形を作って網目状に飾りを作って焼く。
そして、ユリナは毎回・・・・お菓子ををもう一つ作る。
・・・何故かと言うと・・・・・
「ねぇちゃん!いいにおい!」
「火の近くは危ないから離れて!焼き上がるまで、三十分はかかるから!お母さんにでも 遊んでもらって!」
・・・・ユリナが初めてシュエに会ってから・・・8年の月日がたっていた。
ユリナは今15歳。そして弟は12歳だ。
ユリナは、弟にはたいして構わず、可愛がるのは回りに任せ8年間。
殆どの時間を、タンペット先生の家で過ごしていた。
朝。ご飯の支度を手伝ってから朝食ゆとり、パイかケーキを焼いて先生の家に行く。
そして夕方頃に家に帰り、夕食の支度を手伝い皆で夕食をとり、洗い物を手伝って就寝・・・の毎日だった。
そしてユリナは、いつもお菓子を家族の分も作る。
弟が四歳の頃から、何故か弟が私に付きまとうようになった。
冗談じゃない!ガキ大将の付きまといから・・
やっと・・やっと解放されたのに・・・・
他人ならば逃げられるが、身内からは逃げられん。
年々ウザさが増していき、最近は毎日毎日。
菓子作り中頻繁に弟が回りをチョロチョロして ウザイ。
弟の容姿は母に似ていて、可愛らしい顔に栗毛と青目。
妬ましい!怒鳴りたい!が、それをやれば私が母に怒られる。
イライラする!早くタンペット先生の家で癒されたい!
ここは五月蝿くてたまらない!
しかし、一番困るのは・・・・・
「俺も行く!姉ちゃんと行く!」
何時も弟がこう言ってグズるのだ。
・・・ええい。ウザイ!
「私は勉強しにいくの!それに、タンペット先生は小さい子が苦手だし・・」
「!!姉ちゃんは俺より 小さい時から先生の所に行ってたって聞いたぞ!!」
だから?何だよ!私とあんたは違うだろうが!!とは言わず・・
ユリナはしゃがみ込む。
そして、弟に目を合わせて、言い含めるように・・・
出来るだけ・・・出来るだけ優しく言った。
・・・・・メンドクサイ奴!
「ごめんね。はい。口開けて」
ユリナは前もって作っておいたベリータルトを、弟の口に突っ込む。
食い意地の張った弟は、モグモグ食べるのに夢中だ。
そしてユリナは、その隙にバスケットを掴み家を出た。
ハー・・・・今日もウザかったな・・・・・・
ユリナが、タンペット先生の家につくと、いつもの様に台所にバスケットを置く。
そしてユリナは、廊下を歩く。
そしてユリナは、ユリナが先生の家に来るようになってから、先生が作った術部屋に向かった。
( 術部屋は魔術を使ってもいいように、魔術で部屋を保護した部屋)
ユリナが部屋に入ると、中ではシュエが精神統一していた。
ユリナがその様子を暫く見ていると、シュエの目の前に置いている桶の水がみるみる凍り、逆氷柱になった。
そして、先生はシュエの側に立ち監督していた。
シュエは氷結魔術士。
水術士の亜流で、氷と水が操れる上位属性の術士だ。
水系統の術士家系のメチェーリ家には、希にその属性の術士が生まれる。
タンペット先生もその一人で、一時期に二人もいるのは珍しいらしい。
因みに魔力は瞳に現れるらしく、シュエとタンペット先生の瞳は蒼い。
その色は水系統の術士の色で、実は瞳の色は上位も下位も変わらない。
ならばどうして違いが分かるかと言うと、魔力が桁違いなのだそうだ。
シュエは美しい精悍な顔に蒼い目に銀色の髪、しかも上位術士。
剣も使えてオマケに上位貴族
・・・・・すごいなお前。
因みに私は、限りなく白に近い白銀のの瞳なので風系統の術士。
赤い瞳の炎系統は、貴族にしか出ない属性。
平民は、土系統のみで緑の瞳。
つまり。
土系統以外の平民の子供は、家系の何処かに貴族が紛れていて貴族の子供に土系統が生まれると、平民が混じっていることになる。
平民は問題ないが、貴族はデンジャラスだな・・・・・
下手すりゃ・・生まれてすぐに間引かれる。
自分が浮気してなくても、曾祖母や祖母とかが不倫したとする。
たまたま土系統が生まれなかったとして、孫や曾孫に出ないとは限らない。
コェーよ!!DNA検査みたいでコェーよ!
ユリナは曾祖父が貴族の六男で、下級貴族の貧乏貴族だったため、強制的に独り立ちし平民に身を落としたらしい。
しかし死ぬ間際。
農民の生活は楽しかったと、笑いながら逝ったそうだ。
そして、ガキ大将の曾祖父も下級貴族で私の曾祖父と親友だったそうだ。
私の曾祖父がこの村に落ちつくと、ガキ大将の曾祖父は、医者の居ないこの村で薬師を始めたのだそうだ。
なのでガキ大将は、青い目に濃い金髪。おじさんも同じ色だ。
まあ・・大体の人族の魔術属性はこんな感じだ。
因みに。闇系統は魔族と呼ばれる種族のみに、光系統は神族と呼ばれる種族のみが使えるらしい。
二種族とも長命種で、大体千年の寿命がある。
この世界には、その他に亜人種や森の民エルフは等もいて、中でもエルフは特殊で植物を操る事ができるらしい。
山の民ドワーフなんかは、岩を操る事が出来るらしくその能力で鍛冶仕事をしているそうだ。
この二種族と神族、魔族は純血ならば、皆人族の上位術士並の魔力をもつ種族の魔術を使えるのだが。
混血は、種族特有の魔術。
神族ならば光系統。
魔族は闇系統と言った魔術が、使えない子が生まれるらしい。
そういう子供は、基本的に、母子共々殺される。
ごく希に母親が逃げ切り、赤子を連れて人族の国に逃げ込んで生き残るケースもあるが本当に希だ。
それに、回り全てが敵になるのだから、余程強い者しか逃げられない。
人族の国もそれを理解していて、子の保護を条件に国の軍隊に入ってもらったりしている。
・・・・ギブアンドテイクだ・・・・・安全も無料ではない。
・・・・まあ・・長くなってしまったが、魔術を使える種族はこんな感じだ。
ユリナは、そんな事を考えながら扉をゆっくり閉める。
静かに閉めたつもりだが、シュエが目を開けて立ち上がった。
「ごめん。邪魔した?」
「いや、疲れたから休憩する。今日は何の菓子だ?」
ユリナは、毎日お菓子を焼いてくるのでお馴染みの質問。
シュエは、桶を抱えながらユリナに言う。
「今日はアップルパイだよ!」
「そうか、では・・・・サクサク感が消えないうちに食べるか」
シュエは、ニッと笑って桶を持ってない手で扉を開ける。
・・・・無駄にイケメンだな。おい!
そしてユリナは、台所に置いていたパイとナイフを持って机に向かうと、タンペット先生とシュエが机の上を片付けてくれた。
ユリナは、真ん中にパイを置き切り分け皿にもる。
行き渡った所で食べ始めた。
「あっ!そう言えばおめでとう!
叙任されたんだってね。先生から聞いたよ」
つい最近。シュエが、見習い騎士から騎士に叙任された(騎士になるため少年、少女達は、12歳くらいで見習いになり。三年位で叙任試験を受ける)
ユリナは、三週間前にタンペット先生にそう教えてもらっていた。
そしてシュエが忙しくなり、タンペット先生の家に来なかったので、お祝いが言えていなかったのだ。
「・・ありがとう・・・・」
シュエは、照れくさそうにパイを頬張った。
それを見たタンペット先生が、楽しそうに笑う。
それから、シュエが配属された王族の護衛任務つまり、近衛騎士の仕事について、話してくれたのだか・・
ほぼ愚痴だった・・
何でも・・王女殿下の護衛任務は苦行らしい。
王女殿下は、五月蝿いし鬱陶しい。
ベタベタ触ってくる上に、非番の日(休日)まで呼び出しがあるそうだ。
お陰で、タンペット先生の家になかなかこれなかったらしい。
実は今も呼び出しがあって鳥(魔術で作った伝書鳩のようなもの。
標的が何処にいても、迷わず短時間で飛んでくる。見た目はゴツイ鳩)が既に三羽目に・・・・
「ねぇ・・・・・」
「・・・・・」
「いいの?」
「今日は非番だ!」
睨まれた!相当御疲れの御様子だ。
いつも礼儀作法をかなぐり捨てて、ガツガツ八つ当たりするようにパイを食べている!!何したんだよ!王女殿下!!
そしてユリナが、アップルパイを大きめに切り分けて、シュエの皿にのせてあげるとシュエは嬉しそうに笑った。
「ありがと・・・!!」
バゴッ!!すごい音がした!
そして、ドスドス人が走る音がする。
バリン!あっ!多分廊下の花瓶が割れた!そして段々音が近づく・・・・・
バアン!!!
大きな音がして、私たちのいる部屋のドアが、壊れそうな位の勢いで開いた。
「シュエ!!貴様!!俺の呼び出し無視しよって!父上も無視したな!・・・貴様は誰だ!」
喧しい!!そしてゴツイ人だ!!
いきなり入って来た男は、全身筋肉。
ザ軍人ってな感じかな?色合い先生達と同じなのに。
かなり残念な人だな。
ユリナは、殺されそうに睨まれながら呑気にそんな事を考えた・・・・・
謎の筋肉 軍人登場 !でした。セリフで何者か解ると思いますが・・・・
説明文も、長くて申し訳なく・・・・
まだまだ続きます!次でシュエさんの苦悩が・・・・・頑張りますので宜しくお願いします!