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転生しても私は私  作者: 柳銀竜
虚無討伐 編
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カインとイティア

 

「おはようございます!昨日は迷惑をおかけました!申し訳ないです!」


 早朝。

 船の中にある食堂で、ユリナは船員とシュエ、グレル、イデア、ミンスを次々に見ながら頭を下げた。


 昨日の奇声は、船中に響き渡っていたらしく、逢う人逢う人皆が心配して声をかけてきた。

忙しいのに・・・ごめんなさい!


「いやいや・・気にしてないよ!」


「迷惑なんて、かかってねぇよ!」


「ユリナさん!元気になって良かったな!」


 船員達は、にこやかに笑う。

何か・・ヤクザ集団みたいな顔ぶれだ。 厳つい野郎ばかり・・・・・


 次にシュエ、イグニス、イデア、グレルが次々にユリナに笑いかける。


「ユリナが元気になれば、それで良い」


「元気になって良かったな!」


「心配しなくて良いわよ。あれは忘れるわ」


「ええ。私も」


「俺も!」


 頭を下げるユリナ。

 シュエはユリナの手を引き立、座る様に促した。

もういいと・・

 ユリナはシュエに促され渋々座る。


「さあ。朝食にしょう・・ユリナが立ったままでは、食事ができないだろう?」


「・・うんそうだね・・・・・」


 ユリナが席に座る。

 ユリナが座るのを確認してから、船長が水の入ったコップを掲げた。


「では!朝飯だ!」


「「「「「おう!!」」」」」


 船長が高らかに宣言すると、の太い声が食堂に響く。


 食堂で、賑やかに食事が始まった。

 ガチャガチャ。ガチャガチャ。船乗りには食事のマナーなど存在しない。


 ボヤボヤしていると・・・・・


「貰い!」


 若い船員がオッサン船員に、自分のお盆に入っているパンを、素早く奪われる。


「あっ!俺のパン!」


 取り返そうとするが、既にオッサンの口のなかに消えていった。


・・・・・酷いな・・・・・


「てめぇ!」


 若い船員の横にいた船員が、隣の船員に肉の欠片を奪われる。


「へへへ・・・・・油断大敵だぜ!」


 肉を奪った船員は、笑いながら戦利品を口にする。

 その横で、そろりと皿に手が伸ばされる。

凄いな・・・船員達は食事は戦争だ。と言いたげに、争奪戦を繰り広げている。


 しかし、ユリナ達の皿には手を出さない。

 怖い人が三人と一人・・・睨みを聞かせているからだ。


誰かは言わずともだ・・・・・

 騒がしい朝食が終わり、船員達は其々仕事に向かう。

 しかし、ユリナ達にする事は無い・・・・・


「本があればな・・・・・」


 なんの目的もなく、船内をブラブラしていたら、船長が甲板で潮風に吹かれているのを発見。

 彼は、ユリナと一緒にブラブラしている、シュエとグレルを見て笑った。


「おお!ユリナさんとシュエ。それからグレル!どうした?」


「ヒマなので・・・・・ブラブラしていました・・・・・」


「そうかい!海を見てたらもしかしたら、イルカとか出るかも知れないぜ!」


 ユリナが暇だと言うと、船長が海を指差す。

 ユリナは、シュエとグレルと一緒に手すりまで行って、手すりを掴み海を眺めた。

穏やかで・・静 かな・・・あれ?


 ユリナは、海の一点を指差しながら隣の男二人を見る。


「シュエ!グレル!あれって・・・」


「ん?・・・人が!船長!」


 グレルが船長に叫ぶ!船長は急いで船員を呼んだ。


「おい!お前ら!小舟を出すぞ!急げ!」


 船員達は船長に言われて、急いで甲板にある小舟のうち1隻を、数人がかりで海におろす。


「船長!下ろしました!」


「よし!てめえ等もこい!」


 船長は数人の船員を連れて、小舟に乗って急いで海で溺れている人に近づく。

 近くまで行くと、船長はロープを輪っかにした物を投げた。


「これに掴まれ!」


 ワップワップしながら、人がロープに捕まる。どうやら子供の様だ。


 子供がロープを掴むのを確認し、船長がロープを引く。

 小舟に子供が近づくと、船員が子供を引き上げる。


「大丈夫か?餓鬼?」


「ゴホゴホ・・あっありがとう・・・」


 子供は咳き込みながら、船長と船員達を見渡した。それから息も絶え絶えに、船員達と船長にお礼を言う。


 船員達は子供が無事であることにホッとして、体が冷えきっている子供を船長が抱き抱えて温める。


 そして、船員達が小舟をこいで帆船に戻った。

 船に戻ると船長が船に叫ぶ!


「梯子くれ!」


 船に残っていた船員達が、梯子ロープを投げる。


「ほい!船長」


 始めに子供を抱えた船長が、器用に片腕でスラスラ登る。


 小舟に残っている船員達は、船長が登り終わるのを確認してから次々に登ってくる。

 船長は子供を抱えたまま船室に向った。


「おい!洗ったシャツとタオル持ってきてくれ!」


「わかった!すぐに持ってくる!」


 船長が船員達に指示を飛ばすと、バタバタと洗濯室に走って行った。


「何かする事あります?」


 ユリナが聞くと、船長は少し考えてからユリナに言った。


「ん〜あっ!湯を沸かしてくれ!体拭いてやらないといけないからな!」


「俺が魔術で、沸かしてやろうか?」


 船員達の慌ただしさに疑問を持って、宛がわれた部屋からイデアとイグニスが出てきいた。


 船長とユリナの会話を聞いた、イグニスが船長に言う。

彼は火術を使えるから、湯を沸かすくらい一瞬で出来る。


「イグニス様!ありがとよ!じゃあ、餓鬼行くぞ!あって暴れるなよ・・・」


 話を聞いていた子供が、いきなりシタバタし始めた。

 イヤイヤと、おもいっきり暴れる。

 たまらず船長が手を離すと、子供はユリナの背中に隠れた。


・・・・・あれ?もしかして・・・・・

 ユリナはしゃがみこんで、子供に目線を合わせる。


「お名前は?」


「イティア」


 やっぱり女の子だ。ユリナは呆れたように船長を見る。


気づけよ・・・・・船長はというと・・・・・

 彼は目を見開いていた。


「え!女の子?!まじか!胸無いのに?!8歳位でもう少し・・ぐはっ・・・」


 船長が胸と口にした瞬間。

 イグニスの隣にいたイデアが、動くイデアはある魔術を発動させた。


顔を水で覆う魔術を・・・・・

 一般的な胸のイデアはまな板ユリナに親指をたてる。

イヤイヤ、私。気にしてないよ・・・・・制裁は必要無いのに・・・・


 イデアは数秒で術を解いた。

 船長はゴホゴホしてうずくまる。


 女の子に対して胸の話題は禁句だ・・・・・

私は良いがこの子は・・・・・


「胸?ありますよ?触りますか?」


 気にしないらしい・・・・・


 ユリナの横に退避していた子供。イティアが、船長の方に向かおうとしたが・・・・・ユリナはイティアの、着ていた服の襟を掴み引き留める

おい!・・・やめなさい・・


「あんた・・船長に着替えさせて貰うのが恥ずかしかったんじゃないの・・・」


「うん!着替えくらい自分で出来る!」


 恥ずかしいのは、子供扱いの方だったか・・・・・


「・・・男の人に胸を触らせたらいけないよ・・」


「駄目なの?胸を触られたくらいじゃ孕まないよ?」


 ユリナの顔が歪む。


「・・・誰に教わったんだよ」


「教わってないよ?知ってるだけ」


「知ってる?・・・もしかして・・・・・転生?」


「違うよ。日本の記憶があるけどね」


 にこやかに言う少女に、ユリナは混乱した・・・どういう事だ・・


「どういう事?転生じゃないの?」


「違うよ。私は・・・・・」


 イティアがユリナに言おうとする、すると突然。辺りに突風が吹いた。


 甲板にいた人間達が吹っ飛び、甲板の物が空を飛ぶ。

 ガジャンドカジャン!凄まじい音が辺りに響いて、船にいる全員が飛び出てくる。


「イティア!」


 突然上空から叫び声が響いた。

 全員、一斉に空を見上げる

 そこには一人の男性が宙に浮いて立っていた。


 彼は真っ直ぐ下降して、イティアの側に着地すると、イティアの前にしゃがみこんで、イティアの脇に手を入れて持ち上げ抱き抱える。


 彼は金の髪と目をしている。

 神族だ!


「カイン!」


「心配したぞ!無事で良かった!チーも心配してたぞ!」


「ごめんなさい」


「チーとミリーにも謝れよ」


「うん!」


 カインはぐりぐりと、イティアのおでこに頭をくっつける。

 イティアはキャイキャイ言いながら笑っていた。


 とても仲が良いらしい。

 吹き飛ばされていた船長と、船員達が立ち上がり様子を伺うようにカインを見ながら立ち尽くす。

 シュエとグレルはユリナを庇うようにユリナの前に立ち、イグニスはイデアを背に庇い臨戦態勢をとる。


 船室から甲板に出てきたミンスは、カインを見ながら絶望的な顔で呟いた。


「カイン・・・・・カインと言いましたか・・・・・」


 ミンスはカインを凝視する。

 ミンスの視線に気づき、カインはイティアに向けるのとは真逆の・・・・・氷の様な目で彼女を射ぬいた。


「俺の名を知っている・・・と言う事は・・・貴様・・・貴族か?」


 ミンスに向けて、殺気を放つカイン。

 その頬を、イティアはペチッと叩く。


「やめて!カイン!あの人達は私を助けてくれた!酷い事はしないで!」


 カインは殺気を引っ込めた・・・・・変わり身が早い。


「そうか・・・」


 カインはイティアを、抱き抱えたままユリナ達の側に行く。


 ミンスには・・・近づくのは嫌みたいだ・・・・・


「ありがとう・・・・・イティアを助けてくれた事・・・・・礼を言う」


 カインはユリナに、深く頭を下げる。

 固まったままのミンスは放置して・・・・・


「助けたのはアッチよ」


 ユリナは、船長を指差しながら言ったがイティアは首を降る。


「見つけてくれたのは、お姉さんでしょ?お姉さんがいなかったら・・死んでたよ・・・・・」


「じゃあ・・二人に礼をしよう・・・此れを」


 カインは懐から、金色に光る魔石を二つ取り出した。

 1つをユリナに渡そうとしたが、シュエとグレルに阻まれたので一歩前にいたシュエに差し出す。

 シュエは大人しく受け取った。

 次にカインは、ビビって船の手すりから動かない船長達の側に行く。


「お前らにも・・・本当にありがとう・・・・・」


 カインは、魔石を船長に渡す。

 船長が受け取るのを確認してから、カインは手すりに手をかけて海に飛び降りた。


「え?ちょっあんた・・・・・うわぁぁぁぁなんだぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 船長が、飛び降りたカインを助けようと手を伸ばす・・・・・その時・・・・・

 ザバァァァと音をたてて、巨大な生物が現れた。

 カイン達は、アザラシの頭の上だ。


「うわっ!でっかいアザラシだ!」


「つぶらな瞳は可愛いけど・・・・・大きいと・・・・・微妙だ・・・・・」


 イデアが叫びユリナが呟く。

 アザラシ擬き・・・・・チーが不満げに声を出した


「・・・微妙って酷くない?」


「「喋った!!」」


 チーの言葉にユリナとイデアが叫ぶ。

 他の人間は臨戦態勢だ。

 カインは海底の魔法陣を発動させ、転移陣を発動させる(海を荒れさせた時に設置したもの)

 海底が光。光の柱が現れた・・・・・

 彼らはその中に入る。


「本当にありがとう。人間達と神族」


「ありがとう!」


 カインが頭を下げて、イティアが手を振る。


「ロワン・サファル・カイン」


 カインが叫ぶと、二人と一匹は光に消えて行った。


 その場にいた男達は、ヘタリとその場に座り込む。


 ユリナとイデアは、二人がいた場所を唖然と見上げた。


・・あっという間だった・・・


 シーン・・・・・

鎮まりかえるその場で、ミンスだけが憎しみに満ちた目をしていた・・・・・



イティアの飛ばされた先は海上でした・・・・・

次はミンスが語ります!

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