大切な人を取り戻すために・・・・
虚無の民の話です!
ユリナ達は出てきません!
神族の住む大陸、ヘクセライ。
此処はヘクセライ大陸の北の果て、険しい山脈が連なる神族ですら住めない極寒の世界、そこにある深い深い洞窟の奥に一人の女性が眠りに着いていた。
彼女の眠る場所は、薄暗い洞窟の中に作られた実験室のような場所。
まわりは沢山のコードや機械が設置されている、しかし木材等は使わず洞窟をそのままくり貫いたような造りだ。
女性が眠る場所は無色透明な氷の中で、彼女の眠る氷ごと、液体の入った透明な筒型の装置の中に浸かっている。
そこに・・・・・くり貫かれた洞窟の側面から、一人の神族の男性が現れて、女性の眠る装置のに向かって歩いてくる、装置の前まで行くと男性は、眠る女性の前にある装置を弄る。すると、透明な筒の中に淡い金色の光が浮かび上がる。暫くすると氷が段々薄くなり溶けてなくなった。
男性は嬉しそうに笑いながら、食い入るように女性を見つめた。
数分・・・・・装置の中の女性がピクリと動く、男性は穴が開きそうなくらい女性を見つめる・・・すると・・・ユックリ女性が目を開けた。
男性は発狂しそうなくらい歓喜する。
装置の女性は身体を動かそうとする・・・・しかし・・身体は動かない。
女性は身体が動かない事が分かると、目だけをキョロキョロ動かした。
目の前の男性に気付き目を見開いて口を開いた。
同時に男性も歓喜の声をあげた。
「ああ!良かった・・・・・目を覚ましたんだな!」
「★×☆〓?」
女性が男性には、理解できない言語を話す、男性は原因に気づき目の前の機械を弄った。
「・・・ああ・・翻訳魔術が解けてるのか・・・・・少しまって」
装置の中に金色の光が舞って直ぐに消える。
「カイン?カインなの?」
女性が男性を見ながらかろうじて動く、手を装置につけて叫ぶ。必死に泣きそうな顔で
(装置の中の水は呼吸もできて声も出せる)
「そうだよ!俺だよ母さん!」
神族の男性カインは、懐かしそうな苦しそうな顔で泣きそうになりながら叫んだ。
「私・・あの時・・・どうして・・・・」
嬉しそうに笑いながら段々・・・女性は力が抜けて目を閉じる。
男性は慌て装置に近づき耳を近付ける。
装置の越しに女性の呼吸を確認した。
・・・大丈夫・・・・・生きている・・・・・
「大丈夫だよ!母さん・・・・・直ぐ良くなるよ・・・・・」
カインは母の眠る装置を、優しく撫でながら呟いた・・・・・
「この・・大陸全ての・・・命を使ってね・・・・・」
カインは・・・恐ろしいく憎悪に満ちた顔で、静かに静かに誓いを立てた。
バタバタバタ!騒がしい音をたてて小さな、人族の女の子達が走ってくる。
二人とも黒い髪に黒い目、魔族の特長を持ちながら魔族ではない・・特殊な少女達だ。
「カイン!大変です!」
「カイン!肉が焦げた!」
二人同時にカインに叫ぶ。
カインは頭を抱えた・・・シリアスな空気が台無しだ。
「どうした?ミリー・・・イティアはその肉の塊の・・・・表面の焦げた部分こ削ぎ落としてこい」
夕食の支度をしていたらしい、イティアと呼ばれる七歳位の少女が、真っ黒い塊を皿に乗せている。
・・発言からして・・・かつて肉であった 炭だ。
勿体無いので、試しに削いでみろと言うことである。
・・食べられるかな・・・・あれ・・・・
「はい!」
イティアは元気よく台所へ行く。
・・・・・コケるなよ・・・・・
イティアが心配でカインが、通路を眺めているとミリーと呼ばれていた十歳位の少女が声を上げた。
「神族の王が人族に助けを求めたようです!何でも異界の・・・・・ひっ!」
「異界・・・・・異界の・・・・・召喚したのか!恥知らずめ!」
ミリーが召喚と口にした瞬間。
カインかブワッと殺気を放つ・・・怖い!怖いよ!
ミリーがブルブルと、生またばかりの小鹿みたいに震える。
それに気づいたカインが、慌てて殺気を引っ込めた。カインは、ばつの悪い顔をしてミリーの頭をワシワシする。彼なりの慰めかただ。
「あっ!すまん・・・・・大丈夫か?」
心配そうにカインが、ミリーを除きこむとミリーはニカッと笑う。気にするな!
「大丈夫です!丈夫ですから。後、神族ではなく神様が召喚したそうです」
再びカインの顔が険しくなったら。
・・・・・神だと・・・・・
「神が?何故・・・・・神族の肩を持つ・・・・・」
再び殺気を振り撒くカインを、ミリーが必死で宥める。
カインの魔力は凄まじい。こんな場所位の簡単に破壊できる。
・・・不味い・・・・非情に不味い・・・・・
「押さえて!押さえて下さい!ここ破壊されます!ご母堂が危険になりますから!」
一気にカインは我に帰る。
・・・・・マザコン野郎め・・・・・
「あっ!そうだな・・・しかし・・異界の人間か・・・・・」
実は、カインの母は異界の人間なのだ。
カインは、母と同じ異界の人間に興味か有るらしい・・・・・
「女の子二人らしですよ?」
「え!」
カインは嬉しそうに声を上げて、身を乗り出した。
・・・・・ウザイ・・・・
「婚約者持ちです!」
「先に言えよ!先に!」
ミリーは誤魔化すように、にこやかに告げる。
しかし、カインは誤魔化されなかった・・・・・怒鳴ってきたカインを覚めた目で見る。
・・・・・本当にマザコンだね
「すいません・・・・・しっかし何で今さら・・・・・」
ご母堂が、封印されたのは遥か昔。
少なくとも、五千年は過ぎている。
・・・・今さら以外の・・なにものでもない。
封印か弱まった事と何か関わりがあるのかな・・・・・
「しかし・・封印されていたのは母だけなのにな・・・・・今まで危機感は無かったようだし・・・・・」
神族に危害を加えたのは、カインと眷族だけだ。
危害を加えた本人は、この数千年。普通に活動している。
「まあ・・あの時・・・ずいぶん・・・・・派手にやりましたね・・・・」
カインは遥か昔に、自分の身体の一部から、研究の末に造り出した眷族を虚無と名付け、それをヘクセライ大陸で暴れまわらせた。
大陸の神族達は大打撃を受けて、神や当時神族達が見下していた、人間達に助けを求めた・・・・・
「人間は知らないのか?私の目的・・・・・」
カインの目的は只一つ。
・・・・・今も昔も変わらない。
「知らないのでしょうね・・・・・」
ミリーは遠い目をした。知らないだろう・・・・・知ろうともしないだろうし
「人間は私を討伐する必要無いのにな・・・・・」
カインは人間達に危害を加えない。
・・・・・母が人間だからだ。
愛する母の眷族に、危害を加える事など絶対にしない。
「確かに・・・あの時も人間達には何もしていませんし。
それに・・人間の命って要りませんもんね・・・・・不純物一杯だし・・・使えない・あっ!怒らないで下さいよ!」
カインはブワッと殺気を放つ。
「人間を侮辱するな!神族の数千倍は尊いんだからな!」
詰め寄るカインを、ミリーは必死で宥めた・・・・怒りすぎた!
「ハイハイハイ」
「適当に返事するなよ!」
ミリーは怒るカインを見ながら、苛立たしげに呟いた。
「マザコン・・・・・」
キッとカインがミリーを睨む。
「良く分からないが・・・・・馬鹿にしたか?」
ミリーは、愛想笑いをしながら自分の顔の前で手を振る。
「イエイエ、その様な事は・・・・・」
「ふん!母さんの細胞で作って記憶を移植したのに・・・・・
全然ちがうな・・・母さんはもっと・・」
・・・・・母2号を作ろうとしたのか。 脳味噌の無駄遣いだな。
・・・・・マザコン野郎・・・・・
「そりゃね・・・・・ご母堂は子を生んで苦労した分、人間が出来てるんですよ。私が移植されたのは異界の記憶だけだし、考えの薄い小娘ですよ〜」
ハッハッハとミリーは笑う。
カインには言わなかったが、カインの母に対する言動は理想が混じってる。
ご母堂が復活したら、色々きいてみたいな・・・
主に・・闇の部分を・・・・・
カインはムッとしたまま、ミリーを見下ろして自分の頬をカリカリとかく。恥ずかしい時の仕草だ。
「・・・まあ・・・此で良かったのかも・・お前達が要るから・・・・・長い時を過ごせた・・・・・
一人は寂しい・・・・・母さんも・・・目覚めさせられ無かったかも知れないしな・・ずっと・・・・・」
カインはミリーにニッと笑った。私まで恥ずかしいよ!
バタバタバタバタバタバタ!
騒がしく走ってきたイティアが、生暖かい空気を切り裂いた。
・・・・・いつもの事だ
「カイン!どう?」
イティアは先程、炭になっていた塊をカインに見せる。
カインはしゃがみこみ、イティアの持つ肉を見た。
「おっ!きれいに・・・・・生焼けだな・・・・・」
カイン側は焼けているが、イティア側は殆ど生・・・・・腹を壊すぞ!
「イティア・・・・・肉は切って焼きなさいよ・・・・・」
ミリーが言うと、イティアはブスッとしてそっぽを向く・・・おい!
「めんどくさい・・・・・」
「生焼けを食べたい?」
ミリーがイティアの目を見て言う。
すると、イティアはボソリと呟いてから台所に向かう。
とぼとぼ歩く姿は・・・何か可哀想に見えた。
「・・・切ってくる・・・」
「俺も・・・・・」
ついて行こうとしたカインを、ミリーが止める。
「甘やかしては駄目です!」
喧嘩を察したイティアが、二人に駆け寄ってくる。
二人の前まで来るとカインを見た。
「カイン!ありがとう・・・・・でもあたしの仕事だから!カインは仕事して!」
「ああ・・・・・・可愛いな・・・健気だ・・」
必死でいい募るイティアの頭を、カインは優しく撫でる。
それを見ながらミリーがカインに怒鳴った。
「カイン!狡い!私だって!甘やかし担当になりたいけど・・・・・」
ううぅぅと唸る。ミリーの頭をイティアはヨシヨシと撫でる。
「ミリー!あたしミリーも大好きだよ!ミリーはなんだかんだ言っていつも優しいし、心配してくれるもんね!ミリーの愛情はちゃんと分かってるよ!」
イティアはニコニコしながらミリーに言う。そしてカインの方を向くと・・・・・
「カインもミリーも大好きだ」
カインはイティアの持っている肉を、装置の上に置いてから(皿が割れたら危ないので)ガシッとイティアに抱き付く。
「私も大好きだよ!」
カインの抱き付いている、反対側にミリーも抱き付いた。
幸せそうにカインは笑いながら叫ぶ
「イティア!ミリー!大好きだぞ!」
イティアとミリーはクスクス笑いながらカインの耳元に囁いた
「「知ってるよ」」
雪深い山脈に小さな小さな笑い声がこだまする・・・・・
虚無の民の真実でした。
次は王様に不思議アイテムを貰います(貸すっていってますけどね)




