綺麗なドレス 着ましょうね!
面倒な事になった・・・
ユリナの脳裏にそんな人でなしな考えがよぎる・・・・・
此処は王妃様の自室で、あの騒ぎのあと無理矢理引っ張り込まれた。
シュエ達も一緒だ。
王妃様は直ぐ様お茶の準備を侍女にさせて席に着く、王妃はイデアとユリナに座るように促して座らせた。
席順は王妃の横に王が座りその横にイグニスが座る。
護衛騎士の三人は、警備上三人は座らない。
シュエはツカツカとユリナに近づくと、彼女の泣き腫らした目に手を当てる。
小さく呪文を唱えると淡い光が・・・・・治癒魔術だ。
光が消えてシュエが手を離すとユリナの真っ赤になった目が治り、頭痛も収まった。
「ありがとう・・・・・」
シュエは、フッと笑ってユリナから離れる。
シュエはイデアの後ろに移動して警備兵のように立つ、イデアの護衛騎士が侍女の後ろにいたら可笑しいからな。
治して貰い王様たちの涙か引っ込むと、ミンスは侍女達が用意したお茶を飲みながら、目の前でお茶を飲んでいる王に聞く。
「マグダリア王船は準備出来ましたか?」
ミンスが尋ねると、王は苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。
彼は申し訳なさそうに答える。
「ああ、準備はすんでいるが・・・・
海が荒れていてな・・二三日・・船が出せないそうだ」
ミンスはカップを置くと、深刻そうに呟いた・・・・・
「そうでしたか・・・・・」
深刻そうなミンスに、イデアは心配になる。
「・・・・・ミンス、虚無の民はどのくらいで目覚めるの?」
ミンスは、言いにくそうに口を開く・・・・皆も息を飲んでジッとミンスを見た。
「実は・・もう目覚めたらしいのです・・・・・」
「え!不味いんじゃない?!」
イデアは、ガタッと思わず立ち上がる。
ミンスは、イデアに座るよう促して話を続けた。
「はい・・でも・・・今のところ、封印されていた山岳地帯から出ていないらしいので・・被害はまだ出ていないのですが・・・」
封印の地は神族の大陸の北。
神族の集落から大分離れた場所にある。しかし、相手は虚無の民・・・・・
千年の寿命を持つ神族ですら、数世代前の話だ。
どんな力を持っているかわからない。
「困ったわね・・・・・」
王妃が呟く。
「海さえ・・・荒れていなければな・・・・・」
船が出せなければ、神族の大陸のに行くことすら出来ない。
どうする・・・・・皆で唸っていると、いきなりイデアが声を上げてユリナに叫んだ。
「・・・・・あっ!ユリナ!断熱!断熱よ!あれ使えばいいんじゃない!」
ユリナは最初ポカンとしていたが、段々顔色が代わり叫ぶ。
「・・・・あ!バリアね!」
「そうそう!」
回りをおいてけぼりにして、二人はキャイキャイはしゃいでいる。
王は声を張り上げて二人を止めた。
・・・・・ちょっと待って!
「詳しい説明をしてくれ!国王と言う立場上。危険なことなら止めないといけないからな!」
何を発見したのか・・・サッパリ分からないが、何か対策が見つかったと言うことだけは分かる。
しかし、危険なら止めるしかない。同盟国の姫であり、将来娘になるイデアを死なせるわけにはいかないからだ。
ユリナは王の方を見ながら、元気良く返事をして話始めた。
ユリナは、もうイグニスと王に対する恐怖心は少ない・・・・・
この国の王族は本当にビックリするくらい優しかった・・・・・
「はい!先ずは(断熱)について説明をいたします!(断熱)は私が作り出した術で、空気で幕を作り、外気の寒さや暑さから逃れる術です。此を応用して、船から十メートル位の範囲を此で覆えば嵐の影響を受けずに進めます!」
王妃かちょっと待ってと遮る。
「船は帆船よ?それだと風がなくて、船が進まないのではないの?」
ユリナは王妃に顔を向けて笑う。
心配ないと言いたげに。
「魔術で風を起こします!空を飛ぶ時と原理は一緒です!」
しかし、ミンスが心配そうな顔をユリナに向けた。
「ユリナ様・・・・・大陸まで数週間はかかります。魔力が尽きてしまいますわ」
ユリナはドンと自分の胸を叩いた。任せなさい!
「大丈夫!神様から力を貰ってるから・・・・・それに・・・・・」
ユリナはチラリとグレルを見る
グレルは疲れたように頷いた。
実際、この薬は作るのが大変なのだ。
数千の植物やら、動物やら魔石を擂り潰さなくてはならない。
私は出来ない・・途中で飽きる・・・・・
「分かった・・・・・魔力回復の魔法薬だな。直ぐに作る」
グレルは、イグニスと護衛騎士の人に頭を下げて部屋を出ていった。
・・・材料集めが大変そうだ・・・・・
「問題解決だな!では、直ぐに謁見の間に来てくれ。正式に命令書を授与するから、ああ!正装してから来るように」
ミンスは王の台詞を聞いて、カップを置いてから立ち上がる。
「では・・私は御祓をしてから、正装用の神官服に着替えて参りますわ・・・・失礼します」
ペコリと頭を下げてから、ミンスは退室した。
神職者は大変だ。
王はミンスを見送ってユリナ達を眺めたあと、イグニスを少し睨む・・・・
「俺もか・・・父上・・・・」
バックレようとしていたらしい。
・・いつもの事なんだろうな・・・・・
「お前も行くんだろうが!今回はマクダリアの依頼ではなく、七国連盟の命令書だから逃げるなよ!他国の使者もいるんだからな!」
イグニスは驚いて父を見る。七国連盟だと!
「連盟なのか!何故?」
驚くイグニスに、王妃が厳しい顔で語りかけた。
「世界の危機なのよ・・・・・各々の国からの討伐に役立つ品々を預かっているわ。
品を持ってきた使者達も要るから・・大々的にやらないと駄目なのよ!さあ!殿方は出てくださいなわたした着替え出来ませんわよ!」
王妃が男性達をシッシと追い払う、イグニスと護衛騎士か退室して王も出て行こうとしたのだが・・・・・
「・・・・シュエ殿・・・」
出て行こうとしないシュエに、王が振り向きながら声をかける。
「ユリナ・・・着替えの手伝いを・・・・・」
ユリナの着替えを、手伝おうとしたシュエ。
シュエの発言を扉の向こうで聞いていたイグニスが、バンと扉を開けてツカツカとシュエに近付きシュエを羽交い締めにする。(扉の近くで王が、鼻を押さえてる・・・・・運悪く扉に当たったようだ・・・・・) 護衛騎士は足を掴んで、シュエはそのまま持ち上げられた。
「城の侍女達がやる!いいから行くぞ!」
イデアの婚約者である俺が、部屋を出なきゃいけないのに・・・
テメェが残れるわけないだろ!とでも言いたげに、イグニスはシュエを睨んでそのままシュエは外に連れ出された。
シュエは、唯一自由になる手をユリナに向かって伸ばす・・・・・
「ユリ・・・・・」
バタン!!扉は閉められた。
王を残して・・・・・
王は、忘れられて項垂れながら扉を開けて出ていった。
・・可哀想だな・・王様・・・・・
そんな騒ぎが起こったのに、王妃は何事も無かったように優雅にお茶を飲んでいる・・・良いのか・・・・・
なにも言わず(なにも言えず)ユリナ達がお茶を飲んでいると、コンコンとノックの音がした。
「失礼します。ドレスをお持ちいたしました」
「入って」
王妃がそう言うと、残っていた侍女が扉を開ける。
そして、数人の侍女達が幾つかのハンガーにかけられた大量のドレスを持って入ってくる、全て王妃様のドレスだ。
王妃様はユリナ達の鞄を指差しニッコリ笑った
「ドレスを見せて頂戴」
コーディネートする気満々だ。
申し訳なさそうに王妃を見ながらユリナは鞄を開ける
一枚、二枚、三枚、四枚・・・以上。
・・・・・ごめんなさい・・・・・
「以上です・・・・・」
「・・・・・」
ユリナは王妃を見上げて、イデアはうつ向く。
ドレスの色は一色で形も古いドレス・・・・・下級貴族でもこれよりましだ。
「・・・・大体分かったわ・・・貴女、私のドレスの中から比較的裾の短いドレスをイデア王女に!」
「はい!」
王妃の侍女はその場にあるドレスの中から、幾つかドレスを撰んでイデアの所に持ってくる。
どれも裾が少し短いが、王妃よりイデアの方が身長が短い(マクダリアは皆 長身だ)のでサイズ的にはピッタリだ。赤や緑、青や白色とりどりのドレスを見せられてイデアは困惑する。
ドレスを広げたユリナは手早く広げたドレスを片付ける。もう要らないから片付けていると、近くにいた侍女が手伝ってくれた。
・・・・・優しい国だな・・・・・マクダルアって・・・・・
「王妃様・・・・・」
困惑するイデアを、王妃は優しく見つめる。
「イデア王女のドレスはかなり古いものね?」
「はい・・・お母様のドレスです・・・・・・・」
イデアは悲しそうに、なるのを恥じるように俯いた。
王妃はそんなイデアの頭を優しく撫でて、優しい声で話始める。
「話は聞いているわ・・・身を守る為だと・・」
「はい・・・・お母様も、古い時代遅れのドレスを着ていました。
一度・・一度だけ・・・・ルィン・・・母の恋人が、私にドレスを買ってくれたのです。
嬉しくて、嬉しくて・・それを着て・・・王宮にいってしまって・・・・・・
王妃様・・ゼルギュウムの前王妃に見つかり・・・自分のドレスだと・・・・・盗みの濡れ衣をきせられかけました・・・ドレスも奪われて・・・・・それからは・・・・・」
王妃は慰めるように、自分の豊満な胸でイデアの頭を包み込む。
「ごめんなさい・・・・・嫌なことを思い出させて仕舞いましたね・・・・・さあ!イデア王女!この中から好きなものを選びなさい!」
胸からイデアを解放して、選べ選べとドレスを指差す。
イデアはドレスを端からはしまで眺めたあと(優に30着はある)1つのドレスに目が止まる。
深紅のシンプルなドレス。
あの方と同じ色だ!
「このドレスを・・・・・」
イデアが指差した、深紅のドレスを侍女が持ってくる。彼女は楽しそうに笑いながら、途中で宝石箱を開けてから、深紅の首飾りと髪飾りを持ってくる。
「では髪飾りはこれはいかがですか?」
侍女達はニヤリと笑う。顔からしてからかっている感じだ。
バレてるイグニス様を想像したの・・・・・バレてる!!
「・・・お任せするわ・・・」
「「はい!」」
イデアは赤くなりながら、ニヤニヤしている二人の侍女に任せる事にした。
・・恥ずかしい・・・・・
フフフと上機嫌の王妃は、クイッと隣に立つユリナを見る。ユリナはいきなり見下ろされビクッとした。
「さあ!貴女もよ!ユリナ!」
ユリナは目を見開き必死で、手をブンブン振って叫んだ。
「え!私は侍女ですよ!」
拒否するユリナに、侍女達が詰め寄る・・・綺麗なドレスを持って・・・・・
「貴女も神の力を頂いているのでしょ?それなら巫女姫と同じ身分よ?ドレスを着ないと!」
「えっ!でも・・・・・」
「どれにします?」
ズイッと淡い青から濃い青のドレスを見せられる。
何で好きな色知ってるんだ!グレルだな!アイツしかいない!
「では・・・・・これを・・・・・」
ユリナは、濃紺のシンプルなドレスを指差す。
侍女達は選ばれなかったドレスをシワにならないようにハンガーにかけ指定の場所に戻しす、
「髪飾りはどれに?」
「これにします」
侍女は、青いケースの宝石箱を持ってきた。
ケースは赤、黄色、緑、白・・・・・有りすぎないか・・・・・
青い宝石箱には、やはり青い髪飾りが入っている。
ユリナは青く丸い宝石に、銀の縁と青い羽根のついた髪飾りを選ぶ。
「耳飾りは・・・・・あら!クリスタルサファイアではないですか!凄いです!」
侍女はユリナの耳を見て驚きの声を上げた。ユリナは反射的に耳をなでる。
「え?私もクリスタルサファイアは、装飾品二つしか持ってないのよ!・・・・ああ・・・・・本当だわ!ユリナ!これどうしたの!」
王妃は困惑するユリナの耳を除きこんで、穴が開きそうなくらい凝視してきた。
・・・そんなに凄いのだろうか・・・・・
「シュエに貰いました・・・・・そんなに凄いんですか?」
聞いた瞬間。
ズイッと王妃がユリナに顔を近づける。
・・・・・何か恐いよ!
「クリスタルサファイアはね。聖霊の涙なの・・・・・聖霊は自然を司る精霊の上位種よ・・・・貴族程度で買える品物ではないわ・・国宝モノなのよ!」
そんなに貴重な品物なのか・・んむぅぅん・・・・・
「・・・・・どこで入手したのかな・」
ユリナが呟くと、王妃がニヤリと笑う。・・・その顔は、悪人顔だった。
「まあ・・・・・後で・・・シュエはたっぷり問い詰めるとして・・・着替えるわよ!」
「「「「「はい!」」」」」
ユリナ達は、侍女の手を借りて着替える。ドレスはどれも一人で着れるタイプではない・・・・・シンプルなドレスにしたが、やっぱり着るのは大変なのだ。
数十分かかり着替え終わる。
やっと・・・やっと終わった・・・・・
ユリナ達は休む間もなく謁見の間に向かう。
廊下を歩くと、私を見た侍女達が何処の姫だと騒いでいた。
・・・皆さん・・ごめんね・・・・・私は只の侍女ですよ!
豪華な廊下を進み暫くすると無駄に豪華な赤黒い扉が・・・
何か・・・本当に魔王城だな。
王妃達が、扉に近付くと衛兵が声を上げた。
シュエ達三人は、正装して扉の前に待機している。
「王妃陛下。ご到着です!」
声に反応し、中にいた衛兵が扉を開けると、扉を傷つけないよう気を使っているのか無音だ。
王妃が最初に入室して、次にイデア、ユリナ、イグニス、シュエ、ミンスの順で謁見の間に入る(グレルは薬を製作するために、既に城の外に出ている)中程までくると、イデアとユリナは止まり膝をつき頭を下げる。タンペット先生に教えて貰った作法で、シュエ達 三人も同じように膝をつく。
王妃はだけは、そのまま玉座に進み王の隣に座る。王妃が座ると王は厳かに口を開いた・・・・・
王妃様は大量のドレスを持っています!
王妃にしては普通です!
次は虚無の民達の話です!




