ガイラ嬢。捕獲される!
ガイラ主役です!
ユリナは出てきません!
「・・・・私は人付き合いは苦手だし・・言った後で・・・」
ガイラは、先程の廊下で聞いた話を思い出しながら歩いていた。
能天気だと思っていたユリナが、あんなに悩んで自己嫌悪に陥っていたなんて・・
知らなかった・・・
あんなにマイナス思考なら・・グレルに好かれるのは、苦痛だったかもしれない。
私は自分に自信があるからいいけど、ユリナは自分に自信がない。
そんな状態で、好き好き愛してると言われても信じられないだろう・・
最悪。悪い冗談だと考えるかもしれない・・
そう考えれば・・・ユリナのグレルに対する態度は納得できる。
・・・私達。村の若者はグレルの頑張りを知っているが、村人と殆ど会話をしないユリナは、グレルが修行の為にユリナに余り逢いに行かなくなった事で諦めたと考えていたかもしれない・・・
私はあの収穫祭の時。グレルを振ったユリナに酷いと感じたが・・・
ユリナは、どんな気持ちだったんだろう・・・・
ユリナにしてみれば、突然。昔遊んだだけの男に求婚された事になる。
だとしたら・・・・・
突然求婚されて・ ・怖くなったのかもしれない・・・・・
村の同年代の女の子達は皆、私の味方にだった。
私は卑怯者になりたくないから、ユリナに意地悪しては駄目だと、村の女の子達に言い含めていた(収穫祭の時だけはやってしまったが)
だから、皆は嫌味すらユリナに言ってないだろうと思うけど・・・
ユリナの性格で、自分を嫌う人に近付くだろうか?
言葉にしなくても・・・伝わってしまう事もある・・・・・
「・・・・・・・」
ガイラは呟くように、さっきユリナが言った言葉を思い出した。
ガイラはユリナが嫌いだった。好きな人の想い人だから当然だしかし、口に出したことはない村の友達にも親にも、ましてはユリナに言った事もない。
でも、知らず知らずに態度に出ていたかも知れない。
無意識の内に気持ちが漏れだしていたのかもしれない・・・・・
嫌われれば嫌いになる・・・好かれれば好きになる・・・
絶対ではないけど、あり得なくもない・・
好きになるかは、本人次第だが・・・・・よく知らない人物を、自分のどうしようもない理由で嫌う人間を嫌いになるのは簡単だ。
好きでいたら・・・悲しすぎて自分が保てなくなる・・・・・
ガシャン!ガシャン!バリバリバリン!
激しい音がして、ガイラはハッと我に返った。
謁見の間にユリナ達が行っている間に、お茶のカップを片付けてしまおうと考えて片付けている途中だったのだ。
カップは今。無数の破片に変わっている。こんなミスをするなんて・・・・・
彼女が、割れたカップを片付けていると、ピリッと痛みが走った。
手を切ったようだ・・・・・
「あーあ・・・割っちゃったな・・・」
ガイラは、切れた指をくわえながら呟いた。
イグニスの侍女は今、私しかいない。
身分の高い女性がいろんなやり方で王妃になろうと画策したため、嫌になったイグニスはグレルについてきたガイラに、侍女をして欲しいと言ってきた。
グレルの推薦らしい。
嬉しい・・・ニコニコしながら指を口から出すが、血が止まらない・・・どうしよう・・・血がトクトクと溢れてる。
「え?!どうしたんですか!あ!貸して下さい!」
ガイラは、背後からいきなり声がして振り向く。
するとそこには、マグダリアの竜騎士団 副団長ワィズ・ソキウスが立っていた。
彼は慌てガイラの前にしゃがみこむと、自分の両手でガイラの手を包み込み治癒魔法をかける。
「ありがとうございます。ソキウス様」
ガイラはニコリと笑い、ワィズも微笑む。
治癒の光が消えてからワィズは、握っていたガイラの手を放す。
手を見ると傷痕すら消えている。相変わらず凄い・・・・・
「ガイラ嬢。塵取りと箒を御願いします」
指を見ていたガイラはハッとして部屋を出る。
塵取りと箒を持って来て、片付けようとしたらワィズに、塵取りと箒を奪い取られた。
・・・・・私のせいなのに・・・・・
床は、結構粉々なカップが散乱している。カップを入れる容器ごと落としたせいだ。
・・・・・ワィズはせっせと箒で、破片を集めてお茶のワゴンに乗せているゴミ箱に入れる。
手際いいな・・あれ?でも・・・
「ソキウス様。謁見の間に行かなくて宜しいんですか?」
「もう陛下の話は終わりました。
ユリナ嬢とイデア様は既に部屋でグレル達と・・・貴女に言うことではありませんでしたね・・・・・」
本当に・・聞きたく無かったわ・・・・・
ガイラはジワッと涙が出る。
下を向いていたら涙が落ちた。
「ガイラ嬢・・グレルが好きですか?」
破片を箒であつめながら、ワィズは背中越しにガイラに問いかけてきた。
背中を向けているので、どんな顔をしているか分からない。
「好きですよ・・・当たり前です!」
グレルは格好良くて、優しくて強くて素敵な男性だ。
ワィズは集め終わった破片を袋へ入れて、箒と塵取りはごみ袋の横に置いてから、クルリとガイラの方にツカツカと向かって来る。
ガイラが顔をあげるとワィズの白い目と目が合った。
ユリナと同じ白銀の目・・・・・
瞳の奥の灰色の光に何とも言えない気持ちになる・・・・・
ユリナと同じで違う瞳・・・・・
ユリナへの憎々しい気持ちは完全には消えない・・・・
消えはしないが大分和らいではいる。
・・私も悪いところがあると感じたからかもしれない。
でも・・・この瞳に・・・ワィズの瞳に見つめられると・・・何か・・・変な感じがする。
壁際に立っていたガイラは、近づいてくるワィズを見ながらそんなことを考えていた。
そして、距離を更に詰められる。
「ガイラ嬢。私はワィズです」
「でも・・馴れ馴れしいでしょう?」
ワィズは、ガイラを壁に押し付けるような・・・
いわゆる。壁ドン態勢で、ガイラの顎に手を添えて上を向かせる。
「ワィズです」
ガイラは、じっと見つめられドキリとした。
不味い!私はユリナとは違う!二股なんかしないわ!
「ワィズ」
「わっワィズ様・・・・」
負けた・・・私の根性なし!心のなかでガイラは自分を罵倒する。
ワィズはいまだに、顎を持ったままで憎々しげにガイラを見下ろしながら言った。
「あれの・・グレルの何処が良いんですか・・・・ここぞと言うときだけドジ踏むし、一言多いし。
自分の気持ちだけで突っ走る・・・・・あんなバカの為に、貴女が泣くのは許せない・・・・・
あれを好きでいる限り、貴女は傷つきます。あんなバカはユリナにあげてしまいなさい。
ユリナ嬢にも腹立ちますが、二股なんか論外でしょう。
許容する・・あの二人もバカですよ・・・・・」
ガイラは、悲しそうにワィズを見上げて笑う。
「そうですね・・・・・見込みは無いですし・・・・・」
ワィズは、グイッとガイラの顔に自分の顔を近づける。
「ガイラ嬢・・・ガイラ・・・私が忘れさせてやる。
辛い事すべてを・・・ガイラ君が私に今。キスをすれば永遠に・・・ガイラだけを愛する事を誓う。
・・・・・どうす・んっ・・・・」
ガイラ限界まで近付いたワィズの唇に、唇をつけて直ぐ離す、ワィズはニヤリと笑った。
「契約成立・・・ああ・・私は嫉妬深くてな・・・・・」
ワィズは、ギュットガイラに抱きつき耳元でゾクリとする低音で囁く。
「・・余り・・グレルに構うな・・嫉妬で何をするか分からないからな・・」
びっくりしてワィズを見ると、彼は悪人顔で笑っていた。
何時もの好青年は何処言った!
私・・早まったかな・・・・・
ワィズは少し、少しだけ青ざめたガイラを眺め、好青年顔でニコリと笑う。
「私の愛は返品出来ませんよ・・・・・諦めて下さいね」
やっぱり早まった!
ワィズは満足げに、再びガイラにキスをする・・・・・
やっと・・やっと・・やっと・・・
手に入れた・・・もう・・・離さない・・・・・
どうでしたか?
ワィズはユリナが、護衛騎士と呼んでた人物です!
次は本編に戻ります!




