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転生しても私は私  作者: 柳銀竜
田舎の村娘 編
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村外れの老人

魔術が存在する事を知ったユリナ。

魔術本が読みたい!読み書きと魔術を学ぶためユリナは先生を探す。しかし、此処は辺境のド田舎。読み書きできる者すら居ない。果たしてユリナは先生を確保できるのか!

 

 急に発狂したように笑いだし、バタンと倒れたユリナを慌ててユーグが抱き上げる。


「ジエイソル!」


 ユーグがジエイソルにユリナを見せると、ジエイソルは急いで脈と呼吸を確認した。


「・・・・・心配ない。脈は正常、呼吸もある」


「よっよかった・・・・・」


 ユーグとガキ大将は、安徳のため息をついた。

良かったよ・・・・・


「しっかし、魔術の話でこんなに興奮するとはな。

いつも何話しても(ふーん、そうなの)で終わるのに・・

魔術本を買やったら喜ぶかな?お父さん大好き!って言ってくれるかな!なあ!ジエイごふっ」


 ジエイソルは詰め寄ってきたユーグを、薬の入った手のひらサイズの麻袋で軽く殴る。


・・かなり鬱陶しかったらしい。


「ほら!!薬を持って帰れ!奥さん待ってるぞ!」


「あっ!そういえば!じゃあな!」


 ユーグはそう言うと、ユリナを抱えて走っていった。

足速いな・・・



「なーとうさん」


「なんだ?グレル」


「おれ。まじゅつ つかえるかな?」


「練習するか?まだ、お前には難しいかもしれないが、頑張れるか?」


「うん!」


 この時。ガキ大将改めグレルの人生が決まったかもしれない ・・・







 ユリナは、家につくまでに意識が回復したのでお父さんに頼んで地面に下ろして貰い(だっこは恥ずかしい)二人で急いで家に帰る。


 家につくとお母さんが玄関で待っていて、お父さんが慌ててお母さんに駆け寄った。


「アリナ!駄目じゃないか!部屋にいなきゃ!」


お母さんに心配そうに駆け寄る父を見ながら、ユリナは別のことを考えていた。


お母さんアリナっていうんだな。

そういや、父さん何て名前だっけ?さっきジエイソルおじさんが言ってたよな・・


 家に入るなり、ウンウン考え込んでるユリナ。


そんなユリナを心配した父親は、母親を椅子に座らせた後。


夕食用のスープを、暖炉で暖めながらユリナに聞いてきた。


「どうした?ユリナ」


「・・・おとうさん・・なまえなんだっけ?」


「あ゛っぢっわっよし!あ゛ぢいぃぃぃぃ」


「ユーグ!」


 私の質問を聞いた瞬間。


お父さんは、暖めていた鍋をひっくり返してしまった。


そして鍋を慌てて掴み、半分確保したのだが、素手で掴んだせいで火傷してしまった。


・・ああ・・・ユーグか・・・お母さん・・ありがとう。


 ユリナは、のんびりとした動作で慌てるお母さんを椅子に座らせる(転んだら危ないので)


そして、水の入った桶を持ってきて、プチパニックになっているお父さんの手を冷した。


それからユリナは、こぼれたシチューを綺麗に拭き取り残りを再び暖める。


煮たったら火から降ろし、布を敷いたテーブルに置いた。


  そして大人しく座っているお母さんに、包帯の在りかを聞く。


「おかあさん。ほうたいある?」


「ああ。そこにあるわ」


 言われたタンスを見ると・・・幾つかの包帯があった。


ユリナはその中の一つを持って直ぐにお父さんの所に行き、桶から出した手を拭いてから包帯をクルクル巻く。


我ながら綺麗に巻けた。


「おとうさん、て きつくない?」


「うん、きつくない普通に動く」


お父さんは、手を動かして見せながら笑う。


「よかった。じゃあ、ごはんたべよう」


 ユリナはそう言うと、皆の皿と自分の皿にシチューをよそう。


そして自分の席に座り食べ始めた。


・・食事中。いつも五月蝿いくらい喋るお父さんが静かだ・・・・


お父さんは頻繁に私をチラチラ見てくる・・・・・何だよ。


そしてみんなが食べ終わると、直ぐにお父さんは皿を台所に置き、行ったと思ったら直ぐに戻ってきた。


そして、腹が満たされ眠そうにマッタリしていたユリナを呼ぶと、自分の目の前に座らせた。


「お父さんはユーグ。ユーグ・ウイングだ。お母さんはアリナ・ウイング。じゃあ、お前は?」


「ゆりな・ういんぐ!」


「よし!正解。村の薬師はジエイソル・アルシル、奥さんはアリー・アルシル。息子は?」


「がきだいしょう!」


「・・・・・名前は?」


「くすしのむすこ!」


 ・・痛いくらいの父の視線・・・ユリナは目を反らした。


「グレルだグレル!」


「いやだ!よびたくない!」


 呼んだら来そうじゃないか!マジで。


「何でだよ!いつも、一緒で仲良しだろ!」


 ふざけんな!仲良しだと!


「あたしは、あいつがきらいだ!」


 ギャーギャー言い合う父娘。


 そんな二人を尻目に、アリナは皿洗いをしに外に向かおうとしていた。


その時。口喧嘩をしていた父娘はピタリと、言い合いを止めアリナに駆け寄る。


「妊婦が、こんな寒いときに外に出たらダメだろ!」


「わたし、おさら あらうくらいできる!かして!」


 二人はアリナから、皿を奪うように取り上げた。


二人はアリナに休むように言うと、二人仲良く皿洗いをした。


・・・・寒い・・・水仕事は大変だ。





 そして、数ヵ月後。元気な赤ん坊が生まれた。


 元気な男の子だ。


 皆。可愛いと言うが、私には分からない。


赤子を可愛いと思った事もないし・・・・あれだ。


親戚とか、友達の子供だか何だかを(可愛いでしょ!)と言われて写真を見せられたとする。


その場の空気で(うん!可愛いね)とか言ったりするが、本心ではない。


しかし可愛いと言わなければ、人でなしの烙印を背負う羽目になる。


なので私も、うん可愛いね!と適当に母や村人に合わせた。


ガキ大将が、何故か一番 喜んでたけどな。


弟が生まれると、両親が弟の世話で大忙しだった。


赤子を世話するのはとても大変だ。


そして必然的に、ある程度育った子供は放置ぎみになる。


普通の子供は、それを不満に思う事だろう。


だが私は、寧ろ干渉されないので嬉しい限りだ。


まあ。育児放棄されたわけではなく。

普通にご飯も食べさせて貰っているから、私を忘れた訳ではないようだが。



 弟が生まれてからのユリナは、毎朝。家事を手伝った後。

母に習って作ったアップルパイをバスケットに詰めて、弟をあやす母に皆と遊んでくる!と言って家を出る。


ユリナがそう言うと、母がいってらっしゃい!と嬉しそうに私を送り出してくれた。

・・しかし・・実は・・・村人と交流などしていない。



毎日私は、皆のいる広場に行くフリをして村の外れにある家に通っていた(母は、私に友達ができたと喜んでたけど・・・・実際はいません。

弟ができてから、ガキ大将が家に来なくなり。

ガキ大将に義理立てしてた子達も声をかけてこなくなった。

イェーイ!ヤッター!一人は幸せだ!)


 ユリナが毎日通っているこの家には、一人の老人が住んでいる。


「せんせい!きたよ!」


 家の前で元気よく言うと、低い声が反ってきた。


「入れ」


 ユリナが鍵の開いているドアを開けて部屋に入ると・・


其所は本の壁だった。


天井近くまであり凄い。


梯子があるので高い場所の本も問題無いんだと・・先生・・・・この家の主が言っていた。


「せんせい!おみやげ、アップルパンだよ!

きょうも、ごしどう よろしくおねがいします!」


「うむ。では そこに座れ」


 ・・・・この家には、村の人は寄り付かない。


この家の主は人嫌いなのだ。


きっと嫌なことがありこんなド田舎に隠居したんだろう。

そう考え皆。初めは同情して色々と声をかけていた。

だが、みんな無視された・・・

そしてユリナも、初めは門前払いされていたのだ。


 何を言っても無駄・・


ならばとユリナは・・・食べ物攻撃を開始した。


辛いもの、味の濃いもの、薄いもの。

友達にあげると母に嘘をつき、毎日作って、持って来て置いて(母に教えて貰いながら・・まあ、殆ど母が作った様なものだったが)


次の日。回収して自分の胃袋で処分する(辛いものは私も、ダメなので河に流した)


 ある日、甘いリンゴを置いた。


 次の日、来てみると五個のリンゴが、四個に減っていた。


 次の日、残った林檎でアップルパイ焼いてを届けた(林檎と相性がいいのか、母に習いながらだが、以外と上手く作れた。普通の料理と違い、私がお菓子好きな事もあって、直ぐに上手になった。まあ、母が作るときに全ての動作をメモ帳代わりの板に書き記したからでもある。)


 その次の日、アップルクッキーを。


 また次の日は、アップルパンを。


 また次の日は、アップルケーキを。


 毎日毎日・・母に頼んで作り方を学び、頑張って作って持っていく


菓子作りはかなり大変で面倒だったが、根性で作り続けた(分量は木のコップに傷を入れて、計量カップに改造したので何とかなった。まだまだ母の助けがいるが、作り方を感覚だけで覚えている母は凄い。

しかし普通の料理は、材料が硬い野菜や肉なので上手く、切れずに途中で面倒になって野菜が大きいまま、鍋に投入。その他そこら辺の材料も投入する。

味付けも、味見すると摘まみ食いと判断されるので味見無しで作り、最終的に闇鍋状態+生煮えになる。母に泣き付くと、母は直ぐにソレを食べれるモノに変えてくれた。主婦って凄い)

ユリナが、いつものように老人の家に行き、前日のバスケットを確認。


よし!中身がない食べてくれた!

ユリナはいつもの様に、新しく作ったアップルパイの入ったバスケットを置いて去ろうとする。


すると・・通い初めてから初めてこの家のドアが開いた。


そして・・低く唸るような声が響く。


「毎日、何のつもりだ」


 ユリナが声のした方を見ると、そこに厳めしい顔をした老人が立っていた。


苛立たしげに、自宅のドアの所に立っている老人。


それを見たユリナは、ドサッと地面に伏せて頭を地面につけた。


ジャパニーズ土下座である。


「はい!わたしはちしきををまなびたいのです!ほんをよんでみたいんです!」


「文字は読めるのか?」


「よめません!」


 ハー 。呆れた顔で暫く見下ろされ、ため息を吐かれた。


・・仕方ないじゃん!!習ってないんだから!


「立て」


「はい!」


 私は立ち上がり、軍人の様にビシッと背筋を伸ばしす。


「入れ。教えてやろう」


 ユリナは、老人がバスケットをじっと見ているのに気がついた。


「せんせい だいは、リンゴかしでいいですか?」


 老人はニヤリと笑う。


「ふん!分かって要るではないか、あれだけ貰っておいて無視したままは目覚めが悪い。

直ぐに勉強と言いたい所だが、アップルパイが先だ!」


 そのあと。ユリナは家にいれてもらい、二人で仲良くアップルパイを食べた(仲良くと言っても会話はない)ユリナが、黙々とアップルパイを食べていると、沈黙に耐えきれず老人が口を開いた。


「・・・・おい。なんか聞きたいこと無いのか?私の生い立ちとか何か・・・・・・」


 老人は、ユリナに五月蝿く詮索されるモノと思っていたのだが・・


 無言で食べ続ける子供に、無口で偏屈な老人ですら、少し気まずさを覚えたらしい。


なので老人は、気をきかせてユリナに聞いたのだが。

子供の方はと言うと・・


「え?どうでもいいよ?

おいたちなんか。てか、せんさくされるのいやでしょ?

あっあたしは、ゆりなだよ。せんせい」


 確かに老人は詮索が嫌いだが・・・


「先生?」


「なまえ、いいたくないんでしょ?むらのだれもしらないってそういうことじゃない?

・・・というか、どうでもいいし きをつかってまで ききたくない めんどくさいから」


 確かに自分は、貴族社会に疲れ果て・・・

嫌な事も有り辺境の田舎に、身を隠す様に住んでいる。


村の者は最初。

食事など持ってきてたが、私が嫌がると段々近づかなくなった。


 今では家の近くに人が来ることすらない・・・・・

私は人付き合いが壊滅的に下手だ。


 何を話していいか分からないだが・・・・上には上がいるようだ。


「面倒臭いって・・・」


「ときどき、かぞくとの かいわもめんどくさい・・・・・」


「そうか・・・」


 それが私が心の中で、この子に仲間意識をもってしまった瞬間だった。


 それから私達は、ポツポツとだが会話をした。


普通の奴なら、イライラするペースで・・・・・

ユリナに、私のここにくるまでの生活を教えると面倒臭いの連発。


ドレスは乙女の憧れの筈なのに、この子をは着にくそうだの重そうなど・・・・・

色々特殊な子だな。


「お前な・・・」


 粗方 話終わると、いつの間にやら夕方になっていた。


 子供は帰る時間だ。


「もう、夕方だ。文字は明日から教えてやる」


 ユリナは外を見て残念そうな顔をしたたが、バスケットを手に持ってスッと立ち上がる。


「ほんとうだ・・じかんがたつのははやいね。

じゃあ。ばいはい、せんせい。

またあした」


 彼女が帰った後・・

老人に言い様のない寂しさが込み上げる。

老人はその気持ちに蓋をして、立ち上がると夕食を取りに台所に消えていった。






 次の日から、毎日毎日。

ユリナは老人の家に通いつめた。


そして、読み書きから都会の常識まで様々な事を老人に教えてもらった。


中でも魔術の勉強は楽しかった。

それから月日がたち・・・・・



  「先生!来たよ」


 初めて、ユリナがタンペット先生の家に通いだしてから、四年の月日がたち ユリナは7歳になった。


ユリナが老人の家に通いつめて、一年位で親にバレたが、気のいい村人は老人を実は心配していたらしく、受け入れられた私に、タンペットの健康状態を調べる仕事を命じた。


実に好都合。皆と遊ばなくていいうえにお手伝いも免除される。


毎日、ルンルン気分だ!


「今日はアップルパイだよ!」


 ユリナはすっかり遠慮が無くなり、玄関のドアから普通に入る(魔術で許可された人間以外は、入れない様にしているから防犯上の問題はない)

そしてアップルパイを台所に置いてから、先生の書斎に向かった。


するとそこには・・

同い年位の少年がいた・・・・・


「お前は誰だ?」


 警戒心むき出しで少年が睨んでくる・・・

初対面の女の子に良いのか!とか思うけど・・だけど!!

ユリナはそんな事は、どうでも良かっただって・・・・・


「ウアアアッ先生が若返った感じの美形だあぁ!ねぇ!名前は?名前!」


「なっなぜ 貴様に名乗らなければならない!」


「あっごめんなさい・・・ウザかったよね。

あっ先生の知り合い?貴族?あっ!申し訳ありません。

私は先生。この家の家主の方に師事している者です。

名はユリナ。ユリナ・ウイングと申します。

本日は、菓子を献上と魔術の訓練のため参じました。」


  左膝を床に付け、右足90度になるように立てる・・

すると声を聞き付けた先生が駆け寄ってきた。

そして、呆れた声で私に・・・・・


「お前は何処の騎士だ!女はスカートの端を持って挨拶だと言っただろ」


「えー騎士の方が格好いい」


「そういう問題が?

まあ、お前はそうか・・・・シュエ。これが私の言っていた弟子だ。言うことがあるだろう?」


 膝まづいたユリナを、少年は立たし頭を下げる。


「私はシュエ。シュエ・メチェーリ。非礼を詫びる」


「私も申し訳ありません。ところで私は帰った方がいいですか?」


 先生と少年。

シュエを交互にみて聞く。


先生の名前は、タンペット・メチェーリ。


この少年は、確実に先生の血縁だ。

と言うことは・・・・込み合った話があるかも知れない。


私は退散した方がいいだろう・・・・・真っ赤な他人だしな。


「いや構わない。そう言えば今日はアップルパイだと言っていたな?三人で食べよう」


「シュエ様はアップルパイ平気?」


「苦手・・あたっ祖父を蹴るな!」


 シュエが先生の足を蹴ってから頷く。

嫌いでは無いらしい。

というか、シュエはタンペットの孫なのか・・・


「じゃあ。食べよう!パイはサクサク感が命だし。シュエ様、先生!」


 笑顔で言うユリナに、シュエはボソッと一言。


「様はいらない」


 ユリナはニパッと笑った。


「了解!シュエ!」


 三人での会話はとても楽しかった。


アップルパイは予算の問題から(砂糖は高い)甘さ控えめだがそれが良かったらしい。

シュエは甘味は余り好まないらしいが、このアップルパイは好きだと言ってパクパク食べてくれた。


シュエも先生も、余り喋るタイプではないが、適度な会話とテンポが心地よく。

生まれてはじめて人との会話が楽しかった・・・・・


どうてしたか?まだまだ続くので是非宜しくお願いします!

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