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転生しても私は私  作者: 柳銀竜
虚無討伐 編
26/174

馬車は・・・きつい!!

マグタマリアへの旅路です!

 

 清々しい空気を放つ森林を、一台の馬車が走っている。


 此処はゼルギュウム国の北部、マグダリア国との国境は目の前だ。



「うっ゛うっ゛ぅぅうぐっ」


 その馬車の中でグロッキーになる者が一人・・・

ユリナだ・・


「馬車を止めてくれ!ユリナが吐きそうだ!」


 うっと呻くユリナを見て、シュエは慌てて馬車を止めさせる。


 止まると同時に、シュエはユリナを連れて馬車を飛び出し草むらに向かった。


そしてユリナはしゃがみこみ、ゲーゲと嘔吐する。

その後ろでシュエは、心配そうにユリナの背中を擦っていた。


イデアとミンストレルは、馬車の中からその様子を心配そうに眺めている。


「ユリナ・・車酔い激しいわね」


 イデアが心配そうに、隣に座るミンストレルに言うと、彼女も心配そうに頷いた。


「船・・大丈夫でしょうか・・・・」


 ミンストレルは16年前に船に乗った時を思い出す。


揺れようは、馬車よりも激しかった・・・・・かなりユリナが心配だ。


「・・ぐっ・・・駄目ですよ・・

だから、グレルに薬頼んでる・・うぐっマグダリアに着くまでのがまうぐっ」


 二人が話していると、死にそうな顔のユリナがシュエに支えられながら馬車に戻ってきた。


・・・喋るのもキツそうだ。


「ユリナ・・分かったから寝てなさい」


 イデアは!向かいに席を移動してからユリナを手招きする。


 ユリナはフラフラしながらイデアの横に座った。

イデアは座ったユリナの頭をひざに載せて寝かせる。

ぐったりしているユリナは、なされるがままだ。


 シュエが、何か言いたそうにイデアを見るが気にしない・・


男の硬い膝より、女の柔らかい膝の方がいいだろ!イデアを羨ましげに見るな!


 そして、シュエは嫌そうにミンストレルの横に座った。


そんなにユリナの横がいいのか!


「もうしばらくの辛抱ですよ・・・すぐに宿場町につきますから・・・」


 ミンストレルは、シュエの態度は気にせず(いつもの事なので)横になるユリナを元気付けようとする。


ユリナはゆっくり声を出した・・・陸に上がった魚の様な感じだ。


・・・・・・つまり死にかけ。


「・・・うん・・」


 ユリナは、辛うじてそう言うと目を閉じた。しかし、眠れないようで、気持ち悪そうだ。


 ユリナが呻いている間、馬車は森林を駆ける。ユリナがグロッキーなので、三人は刺激しないように静に座っていた。


 数時間。馬車は走り続けやっと国境の町に着いた。

馬車が止まると、ミンストレルがユリナを見る。


「つきましたよ、ユリナ様。大丈夫・・・・・ではなさそうですね・・・・・」


 ぐったりしているユリナを見て、ミンストレルが呟く。

シュエは、イデアに膝枕されたユリナを優しく抱き上げた。


「ユリナは私が運ぶ・・ユリナ・・・」


 シュエが言うと、ユリナは呻きながら口を開いた。


「・・ううう・・・ありがとう・・・・シュエ・・・・・」


 ユリナ達は、馬車をゼルギュウムの王都に返し(雪深いマグダリアでは、普通の馬車は使えないので、ここからは対雪仕様の馬車を使う)宿屋を探す。

 此処は宿場町なので、直ぐに泊まれる場所が見つかった。


 直ぐに二人部屋を一つ。一人部屋を二つ頼み(二人部屋を二つでいい。と、言う馬鹿がいたが無視)部屋に入る。


二人部屋をイデアとミンストレルが使い。一人部屋をユリナと、シュエがそれぞれ使う。


一人部屋の方が、ユリナがゆっくり眠れるだろう。


 ユリナを部屋に寝かせてから荷物を其々の部屋に置いて、ユリナの部屋に三人は集まる。


三人がユリナを心配そうにながめていると・・・突然。扉がバタン!と勢いよく開いた。


そこに居たのは・・・グレルだ。


「ユリナ!うわっ大丈夫か!」


 入るなり、呻くユリナに駆け寄る。

 騒がしいグレルに、シュエは心底嫌そうな顔をした。


「喧しい・・・」


 シュエが呟くと、ユリナは顔を歪めてノロノロと目を開けた。


「・・ううんんん・・・頭に響くよ・・・・・」


 ユリナの言葉に、グレルが慌てて頭を下げる。


「あっ!ごめん!ユリナ・・えっと・・はい・・・・酔い治しと酔い止めの薬」


 グレルは大きな鞄から、豆粒の様な薬を取り出した。


「・・・ううぅぅぅ・・ありがとう・・・・・グレル・・・・・」


 ユリナにお礼を言われて、グレルは胸を張った。


「へへっ!薬師の息子だからこのくらいの薬の調合は朝飯前だぜ!

・・・・・あっ・・・ごめん・・大声出して・・・・・・」


 大声を出したあと、呻くユリナを見て声のトーンを下げる。


 そしてユリナはグレルに手を出した。


「・・薬・・・早く頂戴・・」


 ユリナは薬を要求した。グレルは自分の手を見て、やっと此処に来た目的を思い出す。薬!


「あっ!そうだった。シュエ、水をくれ」


 シュエは無言で、机に置いてある水差しの水をコップに入れて、グレルに渡した。

グレルは受けとると、ユリナに薬と水を渡す。


「ほら。これを飲んで」


「・・んくっ・・・ゴクッ・・・・・フハァ・・・・・ありがとう」


 ユリナは、薬と水を飲んでコップをグレルに返す。そして、グレルはコップをうけとりユリナに言った。


「後は寝てれば良くなる」


 良かった・・・・・

 安心すると一つ疑問がわく・・・・・何故・・・・・


「・・・・・今更だが・・・・・何故・・・此処に居るんだ?グレル」


 グレルはコップを机に置くと、シュエの方を振りむく。


「ん?ユリナが心配で、水渡りした。すぐそこの川に」


 よく見ると窓から川が見えている。木の影に・・・・・


「・・よく居場所が分かったな・・」


 予想はできるが、勘違いかも知れない。


「イグニス様がイデア様達を、マグダリアに入国する前から、密偵を使って動向を細かく報告させてる」


 やっぱりか!シュエは木の影にいる男を睨む。

密偵らしき男は慌てて逃げた!!顔は覚えたぞ!


「イグニス様・・・シュエと同類・・・かしら・・」


 婚約者に密偵を付ける。

イデアは、ユリナにベッタリのシュエを見ながら呟いた。


・・・・・大変ね・・・これから


「同類とはどう言う意味だ」


 シュエが納得出来ないと喚く。


「・・・イデア様・・・・」


 ユリナが、可哀想なものを見るめでイデアを見た。イデアは悲鳴のように言った。

ユリナが具合が悪いので控えめに。


「やめて・・何も・・・言わないで!」


 二人の言い合いを、黙って見ていたシュエは、悲しそうに・・・・・


「・・ユリナ、私に不満が・・・」


 捨てられた大型犬の様な・・悲しそうに自分を見るシュエを、ユリナは必死で宥めた。

・・・頭いてぇ


「無いから!無いからそんな顔しないでよ」


 シュエは、ユリナの寝ているベッドのすぐ横に膝まずいた。


「・・・・・ユリナ・・本当か?」


「ほんと!ほんと!だから・・・・・ファァフッ眠ら・・・・・せ・・て・・・・・」


 シュエがいい募ると、ユリナは必死で頷く。思い詰めたらこいつは何をするかわからない。


 そして、突然強烈な眠気がユリナを襲う、ユリナはバタンとベッドに倒れこんだ。


「ユリナ!!」


 シュエが慌てて呼吸を確認。

・・・・息はしている・・・良かった。


「眠っただけか・・・」


「早くありません?しかも、眠りが深い・・・・・」


「・・・なに飲ませたの?」


 三人が次々にグレルに質問する。死んだように眠る彼女は、スヤスヤと穏やかに眠っている。


 グレルは、三人に詰め寄られて少し動揺したが、変なものは飲ましていないので普通に答えた。


「アルシル家特製。酔い治し薬」


 シュエがギロリとグレルを見る。


「副作用は?」


 グレルは、シュエに少し怯えながらユリナを指差した。


「爆睡。でも、起きたら完全復活するぞ!」


「・・・・ならいい・・ユリナが元気になるなら・・・」


 シュエは納得したように頷き、ベッドの横にある椅子に座りユリナを眺める。


・・何か楽しそうだ・・・・・


 爆睡するユリナを眺めながら、ミンストレルは恐る恐ると言った感じで、グレルに質問した。


「グレル様。゛酔い治し゛っておっしゃいましたよね。酔い止めは有りませんの?」



「あるぞ!ユリナが眠りっぱなしは可哀想だしな。

森林も良いけど、雪景色も綺麗なんだぜ!雪兎に雪猫とかいてさ!ユリナはモコモコしたの好きそうだし」



「確かに。ユリナは、大して興味がないフリをしているが・・・好きだな・・・・・

買ってやった猫のぬいぐるみも、こっそり持って来ていたし」


「え!あれシュエが買ったのか!狡い!俺も何か・・・シュエ!これが酔い止めの薬だ!

ユリナが、次に馬車に乗る30分位前に飲ませてくれ!俺は王都に戻る!

今の時期なら雪兎の皮で作ったモコモコしたのが一杯売ってるから買い占めてやる!」


「買い占めは止めろ。ユリナが嫌がるぞ」


「ううぅぅぅ十個位にする」


「そうしろ」


 シュエとグレルが、結論を出した。

・・イデアが個数に突っ込む。

おい!あんたたち!


「イヤイヤ十個って!」


 イデアが突っ込むと、放置されたミンストレルが涙目で訴えた。


 話を聞いて!グレルの腕を引っ張って、やっとグレルがミンストレルを見る。


「グレル様!余分にありません?

・・その・・・私・・・実は私も車酔いをしていて・・・ユリナに比べれば我慢できる程度なのですが・・・・・」


 グレルは、すっかり忘れていたらしく(ユリナ以外どうでもいいようだ・・・・・酷い)ああ!と叫んでミンストレルを見た。

 ユリナは、爆睡しているので問題ない


「ん?あんたの分も持ってきてるよ?て言うか全員分持ってきた。

シュエがへたってるのを期待したのに・・ユリナ以外平気そうでガッカリだよ・・・・・」


「・・ガッカリって・・・」


「期待が外れたな」


 イデアとシュエは、冷めた目でグレルを見た。


・・苦しむ顔がみたかったのか・・・貴様


 しかし、ミンストレルだけは胸を撫で下ろす。


「良かった・・・あるのですね・・・」


「酔い治しもいる?」


 グレルは至極真面目にミンストレルを見る。医者の目だ。


「いえ・・・それは結構です・・・これだけ眠りが深いと・・・殺気を向けられても起きれそうに無いので」


 ミンストレルは、チラリとシュエを見る。

グレルとイデアは、避難するようにシュエを見た。おい!


「シュエ・・・・・」


「・・しつこいな・・・・」


 シュエは鼻を鳴らす。


「フン当然だろう」


 ミンストレルは、半泣きになりながら呟く。


「仕方ないのは分かっていますわ。分かっていますけど・・・・・・

怖いです・・・・」


 イデアとグレルは、二人の同時に叫ぶ。


「ユリナに言いつけるわよ!」


「ユリナに言いつけるぞ!」


 シュエはユリナの名前に呻き、ボソボソと口を開いた。


「・・分かった・・もう睨むのは・・出来るだけ・・・

止める・・・努力をする・・・」


 ・・・・・沈黙・・・・・


「仕方無いか・・・・」


「シュエだもんね・・・・」


 イデアとグレルは、呆れて肩を竦める。

 ミンストレルだけは、決意を秘めた目で宣言した。


「・・・許されるよう努力しますわ・・・・・」


 グレルとイデアは、暖かい目でミンストレルを見た後。

グレルは鞄から、豆粒くらいの袋をミンストレルにいくつか渡す。袋の色が違うので間違える心配は無さそうだ。


「とりあえず・・はい。これ。ユリナとミンストレルの二人分。ユリナの分は酔い治しも入ってる。じゃあ、俺は戻るからじゃあな!」


 言うや否や、グレルは窓から飛び降り川へダイブした。

・・・・・何か・・・・・


「嵐のような方でしたわね・・・」


「嵐の様な男だな・・・・・」


「ユリナが、ウザがった理由が分かったわ・・・

ユリナの性格なら、かなりウザいでしょうね・・喧しい人間苦手だし・・・」


 三人は染々と呟いた。


「所でこれからどうします?」


「ご飯食べて寝るわ」


「私はここで、ユリナを見ている」


 ミンストレルが聞くと、二人は其々の予定を口にした。シュエは予想道理だ。イデアはイダズラっぽく笑う。


「襲っちゃ駄目よ」


 シュエは至極真面目に答えた。


「ユリナに嫌われる様な事は死んでもしない」


 イデアは、呆れたように首を振る。


「まあ・・そうでしょうね。じゃあ行きましょ。ミンス」


「はい、イデア様。シュエ様ユリナ様お休みなさい」


 ミンストレルが笑うと、シュエが真顔で手を振る。


「ああ・・お休み良い夢を・・・・・」


 バタン。扉がしまると、ミンストレルが嬉しそうにイデアに抱きついた。


「シュエ様が初めて友好的でしたわ!」


 イデアは、抱きついてきたミンストレルを抱き返し呆れた顔をした。

・・・・・あの男は・・・・


「まあ・・・ユリナに(言いつける)が効いたんでしょうね・・・・・」


「何か・・・認められたようで嬉しいです!!此れから頑張りますわ!ユリナ様のお世話を!」


 高らかに宣言する。ミンストレルを見てイデアは力なく呟く。


「程々にね・・・・・」


 ユリナ・・世話焼きが増えたわよ・・・・・



次はユリナが・・・又あの世界へ・・・・・

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