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転生しても私は私  作者: 柳銀竜
虚無討伐 編
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白い世界にじいさんが!

シュエが・・・・・

 

「というわけです。ですので巫女様を、ヘクセライに連れていきたいのですが」


 ゼレギュウム国の王宮。

その貴賓室にカイザルとルヴィニ。エカテリーナとシャルロットそれと宰相をしているルィン。

王太子の、近衛騎士体長になったシュエと副隊長になったノワールが集まっていた。


 神族の吟遊詩人の話を、神への賛辞を省くとこうなる。


 数千年前、虚無と呼ばれる魔物が現れたそうだ。


 食欲が凄まじい彼等は木や植物、動物から人間まで生物という生物を食いつくそうとした。


 彼等は神族の大陸まで押し寄せ、危機を感じた神族達は神に助けを求めた。


 そして・・無事に虚無を封じる事ができた。

しかし、出来たのは封じた事だけだ。いつかは復活する。


 完全に封印が解ける前に、虚無を滅ぼせる存在が必要になる。


 そこで、神は異界の兄弟神に助けを求めた。


 異界の神は求めに応じて優しく、強く、光に満ちた魂を選びこの世界に送ったらしい。


 しかし、世界が離れているため数千年の時がかった。


 神との取り決めで、この世界に異界の魂が到着した時。


異世界の魂は神族の大陸に生まれるはずだった。


 しかし、異界の魂が見つからない。


 困り果て神に問うと、異界の魂が人間の大陸に人間として生まれてしまったと言うことが分かった。


 しかも、二つの魂が来てしまったらしい・・・手違いで。


 この世界に来る予定の魂と同じ時、近い居場所で、ほぼ同じ原因で死亡した二人。


 しかし・・弱くと、も光に満ちた魂なら良かったのだが・・・


もう一つの魂は、失望と無力感と未来への絶望を抱いた灰色の魂だった。


 その魂のせいで巫女の魂が陰り。共に世界を渡ったせいで、神の力が少し灰色の魂に移ってしまったらしい。


 二人は全く別の場所に光の魂が転生したため、陰りは直ぐに消えたが・・・

神の力が灰色の魂に移ったままだった。


 そのため。神の力が弱く・・

今まで見つけることが出来なかったらしい。


 そのせいで、神族の吟遊詩人は16年近く人族の大陸を放浪していた。


 そして・・・・

神族の吟遊詩人・ミンストレル・メディウムは、神族の大陸ヘクセライ大陸で(神族の国の名もヘクセライ教皇国)で司祭をしていらしい。

神族の大陸は宗教国家らしく、教皇と呼ばれる存在が頂点に立ってて、ヘクセライでは司祭は結構高い身分らしい。

身分が高く、比較的自由に動ける身分のであるため彼女が選ばれたそうだ。


「イデアは第二王女だが、マクダリアの王太子の婚約者でもある。

しかし、巫女は婚姻ができないのだろう?」


 カイザルが、ミンストレルにそう言うと。 ミンストレルは王族のように傲慢な態度で、王であるカイザルに言った。


「婚姻はできます。しかし・・巫女様には、神族の貴族と婚姻していただきます。マグダリアの王太子とは婚約破棄してください」


 ミンストレルは当たり前のように、カイザルに命令するような口調で言う。


 そんな彼女にカイザルは慌てて、言い募った。とんでもない話だ。


「国と国との約束事だ。簡単には破棄できぬ。せめて一月はまってくれ」


 猶予をくれ!とカイザルがミンストレルに言うと、ミンストレルはため息を付きながら言った。

態度がわるい。


「仕方ありません。巫女様もう少しの辛抱ですよ。私がついています」


 そしてミンストレルはイデアの手を取り、嘆かわしいと言わんばかりな顔で回りを見る。


「いや・・・辛抱なんかしてないけど」


 イデアが、困惑しながらなんとも言えない顔をした。


 イデアは彼女が嫌いだ。ユリナにあんな事をした彼女を・・・


・・・・・この人を好きになんてなれない。


 その時。シュエが押さえきれない怒りを込めて、ミンストレルに怒鳴る。


「そんなことより、ユリナはどうなる!」


 シュエが怒鳴ると、無礼な態度を咎めるようにミンストレルがシュエを軽く睨み付けた。


「ユリナ?ああ。あの穢れた魂ですね。神の身元に行ってしまいましたから・・・蘇りませんよ・・・何を怒ってらっしゃるんですか?早く葬儀を済ませてやればいいのに」


 フンと、ミンストレルは鼻を鳴らした。

シュエは唸るように叫ぶ。


「貴様!」


 ミンストレルに掴みかかりそうなシュエを、回りが必死に止めた。


「シュエ!」


「止めんか!」


「気持ちは分かるけど、相手は神族ですよ!」


「ノワール!ルヴィニ!シュエを外へ」


「はい!」


 ノワールとルヴィニは、シュエを二人がかりで必死にシュエを抑えて部屋の外に出した。


 廊下に出ると二人は、シュエにおもいっきり突き飛ばされて、床に倒れこみ呻く。


「うっ・・シュエ・・」


「いっ・・どうか・・報復だけは・・・」


 二人はシュエに必死に懇願する。


神族の力は凄まじい。怒らせでもしたら国が滅ぶ。


「分かっている!ルヴィニ様!暫く休みます」


 シュエは、そう怒鳴るとその場を去っていった。


 休暇をもぎ取ったシュエは、王宮を歩きユリナの部屋に向かう。


 部屋につくと、ノックなしで部屋に入った・・

中ではユリナが眠るようにベッドに横たわっている。


シュエは、ベッドに近づきベッドの横に置いてある椅子に座る。


 シュエがユリナの手を握ると、とても冷たかった。


 シュエが氷結魔術で彼女の体を適度に凍らせて、いつ魂が戻ってもいいようにしていたのだか・・・・・


「もう・・魂がもどらないとはな・・・・・ユリナ・・・」


 枕元に置いていた、猫のぬいぐるみを見る。

イデアのプレゼントを探していた店で、ユリナが欲しそうに見ていた物だ。

彼女は値段を見て慌てて戻していたが、公爵家の私には端金の金額だ。


私にねだればいいのに・・・変なところで律儀なのだから・・・


シュエは、ユリナの冷たい唇にキスをする・・


ユリナ・・・愛しているよ・・・・







 真っ白な世界。

 上も下かも分からない・・・

何にもない世界でユリナは意味もなく歩き続けていた。


 景気は・・・・・

いくら歩いても変わらない。


「何だよ・・ここ・・・真っ白だ・・・・・何もないな。イデア様ぁぁ!シュエェェェ!どこぉぉぉぉ!」


 一人でいるのが、無性に怖くなる。

 ユリナはイデアとシュエの名前を力一杯叫んだ。


その時!何もない所に金色の光が集まって人の形になり、それが老人の姿に変わる。


 ユリナが驚いて固まっていると、老人は疲れたように笑った。


「娘さんや。静かにしてくれんか・・・・・わし、耳が壊れる・・・・・」


 ユリナは反射的に謝る。首降り人形のように頭が激しく上下した。

何かお偉いさんみたいだ。何か不味い気がする。


「・・え!・・ごっごめん!じいさん。大きな声だして、本当にごめんなさい」


 ユリナの激しい謝りように、老人はニコリと笑った。


「いやいや、叫ぶのを止めてくれればいいんじゃよ。謝るのわしの方だしの」


 ユリナはピタリと止まる。


「どういう事?つうか、じいさん何者よ。」


 老人はユリナの質問を、丸っと無視して話続ける。


「いやな・・神族の娘に、巫女を神殿に連れてきてくれって言った時に・・

つい・・娘さんの事を愚痴ってしもうてな・・・・

ぶっちゃけ・・・娘さんが死んだのはわしのせいじゃ」


 ユリナは驚いて飛び上がった。

 マジか!


「え!?私 死んだの!」


 ユリナが老人に詰め寄ると、老人は頷く。



「そうじゃ。体から魂が離れ転生の間に来ておる」


 ユリナは回りをくるりと見渡す。

ここ・・・転生の間って言うんだ・・・・・


「ここにおるとな・・・徐々に魂が白い空間に吸収されて、新たに生まれる魂の一部になるんじゃよ・・・」


 老人は染々語る。

 ん?一部?


「そのまま転生するんじゃないんだ」


 ユリナが老人に聞くと、老人は笑いながらユリナに教えてくれた。


「記憶が残ってしまうからの。娘さんも、苦労したじゃろ?異界の魂は強いから、この部屋にきても他の魂と混じらないから、記憶もバッチリじゃし」


 老人の言葉を聞いて、ユリナはユリナとして生きた人生を振り替える。

そして、幼い頃を思い出して弱々しく笑った。


「うん。お母さんをお母さんとしてみる事が、なかなかできなかった」


 ユリナは優しく笑う老人に、今二番目に気になる事を聞いた。


老人が何者かは、答えてくれそうにないので。


「うん。所でさ、私はどうなんの?」


 ユリナが聞くと老人は、疲れたようにため息をついた。


「ん?ああ・・・娘さんの魂まだ強いんじゃよ・・神族の娘は、巫女の穢れが娘さんのせいだと言うが、娘さんが故意にやったわけではないしな。娘さんに罪はない。

 殺して良いわけがない・・力だけ抜くこともできたのに、あの娘・・・わしの元に送りよった・・・・・

 娘さんはまだ若い・・・現世で生きて魂を弱らせなければ転生の間に吸収できん。若さも力になるからの。じゃから・・・・わしが、現世に返してやろう」


 老人が笑う。ユリナは確信をもって老人にニカッと笑った。


「ありがとう。神様」


 老人は、自分の正体がバレた事に笑い。直ぐに真面目な顔になる。


「巫女と一緒に、虚無を消してくれ。虚無の討伐は大変じゃ。お前の異界の魔力も必要になる」


 ユリナは、伺うように老人を見る。


「生き返る条件?この素晴らしい世界に戻れるんだよね?」


 老人は照れ臭そうに笑った。


「そうじゃ・・・何か嬉しいの・・・そんなに好きか?この世界が」


「だぁい好きだよ!夢にまで見た魔法世界だもんね!」


 ユリナは楽しそうに笑う。

 中二病患者ですから!


「そうか・・・お詫びにわしから神力をやろう。これで、娘さんの魔力も上がるはずじゃ」


「え?いらないよ?」


「は?」


 ユリナの言葉に老人は固まる。

 今・・いらないって言ったか・・・・・


「だって・・何か役目を押し付けられそうだし・・・・・

私は、イデアの後ろで何もせずビクビクしていたい!!

虚無を倒せばいいんだからさ・・・・・

力はそれなりでいいよ・・・強くなったりなんかしたら・・全線に出なきゃいけなくなるし」


 虚無を、討伐するのに力は貸すが、限界までサボるつもりだ。

・・・お前・・・・・


「娘さん・・怠惰は罪じゃよ?」


 老人が、呆れ顔でユリナを見るが、ユリナは動じない。

 そして、彼女は胸を張って反論した。


「フフン!じいさん!人間は罪を犯さなきゃ生きてけないんだよ!

だってさ!動物も虫も植物に木々にも命がある。

人は生きるために、その命を奪っていく!食べるために殺し、自分に害を及ぼす命を潰し、住みかを得るために木々を斬り倒す!

今さら、罪人扱いされてもへじゃないね・・・・・それにさ・・・」


 ユリナは、老人の目を見ながら高らかに宣言した。


「転生しても私は私。何度生まれたって・・・私と言う存在は変わらない!

怠惰で臆病で不器用で、なんにもできない私が私なんだよ!身の丈に合わない力を貰ったりしたら・・・

私は自惚れて・・私の大嫌いな・・・・・傲慢な人間になるかも知れないから・・・怖いよ・・・だからいらない!

話は終わり!現世に返してよ・・・イデアに、ちゃんとついていくからさ」


 ユリナは優しく微笑む。

 老人はそんなユリナを見て、楽しそうに笑った。


「・・フフフ・・・安心せい。娘さんにその素質は無い。傲慢な人間にはならんよ。臆病じゃからな」


 老人が、手を上げて指をくるくる回す。


「ほれ・・・頑張るんじゃよ。あやつには言っておくからの」


 いきなりパカッとユリナの足下が丸く円を書いて消える。

 底なしだ


「え!いきなり床が!ちょっ!じいさんぁぁぁん」



 ユリナはパチリと目を覚ましました。


爺!覚えてろ!しかし・・・・身体に異変が!


「うおっ!体冷た!しかも体がギクシャクする!死後硬直か!」


 ユリナは無事生き返った。


だが・・・自分はゾンビになったかもしれない・・・・・



ユリナ復活!

次はミンストレルと和解します!

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