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転生しても私は私  作者: 柳銀竜
メイド 編
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厳しいよ!タンペット先生!

タンペット先生が厳しく指導します!

 

「エカテ様。我が国の特産品は?」


 豪華な飾りや彫刻のに飾られた部屋に、飾りっけの全くない無骨な机の前に置いてある椅子に、ユリナとエカテとイデアが座っている。


机の上は、書物がこれでもかと載せてあり・・・かろうじて書き取りができるスペースがある程度だ。


正面には教壇のような机が一つ。その前で、タンペットが書物を持ってたっていた。

厳しく鋭い声で、タンペットが問題を出すとエカテがうつ向きながら答えた。


「・・・・・分からない」


 タンペットはエカテにチラリと視線を送り、次にユリナを見た。


「では、ユリナ」


 あてられたユリナは、元気よく答える


「はい!我が国は森林が多く木材の質が良いので、草原が多く背の高い木が育ちにくいパリオティスに、多くのもくざを輸出しています!他にはシュスルの実と、ススリの実も輸出しています!」


 シュスルの実は丸くて真っ黒な実で、大人の掌くらいの大きさの果実だ。


割ると、中身が薄い黄色で甘い。

ススリの実は親指くらいの小さなひし形の実で、茶色い実だ。


これは香辛料として、磨り潰して使う。

 ユリナが答えると、タンペットは深く頷いた。


「よし、正解だ。イデア様マグダリアの特産品は?」


 イデアも、元気よく答える。


「はい!一年の大半を雪に閉ざされ、作物が余り取れないマグダリアは、織物や編物。

毛皮等を特産品としています。夏にのみ取れるブルーアップルは、唯一食べ物の特産品です。我が国も近年輸入を始めました!」


 イデアに頷いて、次にエカテに視線を移した。


「よろしい。ではエカテ様、母君の祖国。パリオティスの特産品は?」


 エカテはうつ向いて答える。声が震えている。


「・・・・・分からない」


 タンペットの口がヒクヒクする。

彼は、ギロリと机の横にあるソファーを睨んだ。

其処には、エカテを心配して早々に仕事を切り上げたカイザルと、同じく早々に仕事を切り上げたルヴイニがいる。


「どういう事だ!カイザル!!

何の教育もしていないではないか。録に教育を受けていないハズのイデア様の方が、国についてしっているとはどういう事だ!!」


 ソファーに座るカイザルは、ビクビクしながら反論した。

怖いよな・・・・・


「れっ礼儀作法とかを中心に・・・」


「エカテ様。私を、他国の王に見立て挨拶をしてみてください」


 タンペットが言うと、エカテは優雅に立ち上がってタンペットの前まで行く。

 そこで立ち止まり、ドレスの端を持ちニコリと笑う。

タンペットは黙ってエカテを凝視して・・・・・


「10点。他国の王はエカテ様の父親と同じ身分だ。

頭を深く下げて挨拶をしなさい、他国の王妃も同様だ。

他国の王女ならそれでいいがな・・・・・カイザル・・・」


 タンペットがカイザルを見る。

礼儀作法も駄目だぞ・・目がそう言っていた・・・・・


「う゛っ・・・・・」


 タンペットは、言葉につまるカイザルを見て呟いた。


「王妃に任せっきりだったのか?」


 カイザルが答える前に、エカテが不思議そうに答えた。


「お母様は教育などしなかったわ。高貴な女性はそんな事はしないっって・・・

淑女教育は女官長にしてもらったの・・ 女官長が・・王女は誰にも頭を下げてはいけないって」


 偏った教育の原因は、女官長だったようだ・・・・・


「エカテリーナ王女」


 タンペットは王女の、長ったらしい本名を口にした。


 そう言えば本名忘れてたな・・・

皆、エカテって言うから・・・

エカテで覚えてたよ・・・・・


「貴女は、このままでは国の恥じた。厳しく王女教育をしよう。先ずは礼儀作法だ。立て!」


 タンペットは困惑して、動かないエカテをギロリと睨む。

 エカテはビクリと震えて、勢いよく立ち上がった。


「はい!立ったわよ!睨まないで!」


 タンペットはフンと鼻を鳴らして、エカテの前に立ったまま、目線だけをユリナとイデアに向けて話し出す。

エカテはムッとして、だがなにも言わなかった。

エカテ様・・・我慢ができるようになったんだな・・・・・


「ユリナとイデア様は、教えることがない。

地理も算術も、其なりにできる程度だか問題ない。

礼儀作法は完璧だがな。しかし、歴史の知識が不足しているから、この書物を読んでおきなさい。エカテ様、貴女は此れから私と礼儀作法の特訓だ。」


 タンペットが再びエカテを、ジロリと見ると、エカテは泣きそうになりながら頷いた。

厳しいんだよね・・・可哀想に・・・・・


「・・・・・はい・・・・・」


 ルヴィニが、エカテに哀れむような目で見つめる。とても哀しそうだ。


「・・・エカテ・・・・・」


 シュエが、冷めた目でエカテを見る。そして、凍り付くような声で言った。


「今までのツケですよ」


 冷たく言うシュエに、カイザルが懇願するように言い訳をした。


「しかし!女官長が!」


 シュエの、氷の瞳がカイザルを抜く。シュエは、唸るようにカイザルに向かって話始めた。


「だから?私は散々迷惑をかけられました。

特に女官長・・あの女・・・私が・・私がまだ幼い時に、私を王妃の部屋に置き去りにしました。

直ぐにお爺様が、来てくれたから良かったものの・・

その後も・・何度も何度も・・最近はエカテ様と関係を持たせようと・・・フフフ・・・

色々されましたよ・・・・口に出すのも・・・・おぞましい!」


 皆 沈黙。

(あの女なら、やりかねないな)

 しかし・・一人だけ・・二人を心底尊敬していた者がいた。


「・・・えっ・・お母様が・・・」


 エカテはショックを受けた。

 エカテは知らなかったらしい・・・・・・


「その点で言うと、エカテ様はマシですが・・・・・

顔を見ていると・・・殺したくなります・・・あの女にそっくり過ぎて・・」


 シュエはジロリとエカテを見る。

 彼は殺意に満ちた目をしていた・・・・・殺されそうだ・・・・


「シュエ・・思った以上に危ない奴だったのだな・・・」


 カイザルは、プルプル震えながらシュエを見る。


「父上・・近衛騎士変えた方が・・・・・」


 ルヴィニは、カイザルとこそこそ話す。エカテの近くに居たら・・・・いつか殺りそうだ・・・


「ではどうする?お前の近衛騎士にするか?」


 カイザルの提案に、ルヴィニは悲鳴をあげた。

それでは私が死んでしまう!


「嫌ですよ!私は死にたくない!」


 ルヴィニが叫ぶと、シュエが口を挟んだ。もう内緒 話ではなくなっている。


「私は、イデア様の近衛騎士になりたいです」


 シュエが言うとイデアが叫ぶ。


「嫌よ!目の前でイチャイチャするでしょ!」


 イデアがそう言うとシュエは、イデアに懇願するような声ですがるように言った。



「自重します!私はユリナを眺めるだけでもいい!」


 その時。ルヴィニとカイザルの声が重なった。


「「どんだけ好きなんだ!」」


 騒ぐユリナ達の横で、ユリナ達が見えていないかのようにタンペットはエカテに厳しく指導している。


「角度が違う!もう一度」


「ばい゛っ!」


 エカテは既に半泣きだ。助けを求めるように、父と兄を見るが二人は其どころではない。

二人は、エカテの無言のSOSに全く気付かなかった。


「・・自重するんなら・・・・」


 イデアは、シュエの勢いに押されぎみだ。

 だがカイザルは、慌ててシュエを止めた。


「駄目だ!シュエは氷結術士!

グレル君がマグダリアに取られたのに!我が国の上位術士を二人も、マグダリアにやれるわけ無いだろう!

シュエが他国に行くと、我が国の軍事力がガクンと下がるし!シュエまで行ったら我が国がまずい!だからマグダリアに嫁ぐイデアに、シュエはやれない!」


 叫びすぎて ハアハア しているカイザルを見て、シュエはとんでもない提案をした。


「エカテ様が嫁げばいいんじゃないんですか?ユリナも行かなくて済みますし」


 シュエは何でもないように言った。 ・・・・おい!!


「「「「良いわけあるか!」」」」


 カイザルとルヴイニとイデア、そしてユリナも叫んだ。

 だが・・シュエは不満顔だ。


「では?私は?」


 シュエはジっとカイザルを見る。


「王太子付にする」


 重々しく、カイザルがシュエに言う。それを聞いたルヴィニはその場に崩れ落ちた・・・・そんな・・・


「・・酷い・・・父上・・・」


「ちっ・・」


 怨み言を父に言うと同時に、舌打ちが聞こえる。

その瞬間。ルヴィニはシュエを指差した。


「あ!舌打ちした!」


「だから?」


 シュエは何か文句があるのか?と言いたげに、ルヴィニを見下す。


その仕草にルヴィニは震え上がった・・・・・怖い!


「何でもないです・・父上ぇ!」


 ルヴィニが父に助けを求める・・・だが、カイザルは言い聞かせるように息子に語りかけた。


「人を使う練習だ。頑張れ次期国王・・・・・」


 ルヴィニはヴッと呻いて・・・


「・・・はい・・」


 項垂れながら頷いた。何か哀れだ・・・・・

 そして、タンペットとエカテの授業はまだ続いている。


「よし!80点だな。今日はここまでにして、教養教育だ。

せめて・・・

自国と母の母国の歴史や特産くらい知らなければ、エカテ様だけでなく我が国の恥になる・・分かったか?」


「はい・・・」


 エカテは大人しくなっている。教育の成果だ。

 一段落ついたタンペットはジロっと、カイザルたちを見ると口を開く。


「さて、話は終わったのか?」


 話に一切関わらなかったタンペットが、喚いていたカイザル達に聞くとカイザルが答えた。


「ああ、話は終わった。エカテ。明日からシュエは王太子付の近衛騎士になる。王としての決定だ。」


 話を聞いたエカテは、ウワッ!と喚きながら父にすがって嫌だと訴える。


「え!いつの間に決まったの!嫌よ!お父様!嫌いになるわよ!」


「え!・・・シュエ・・」


 ゛嫌いになる゛に反応して カイザルはシュエを見る。

 それを見ていたタンペットが、カイザルの名を呼んだ。


「カイザル」


 カイザルはビクリと震える。


「う゛っ・・・・・・」


「カイザル」


 タンペットがもう一度カイザルの名を呼ぶ。先程より低い声で。


「・・っちょ勅命だ!シュエ・メチェーリは、明日から王太子付だ!では私は仕事に戻る」


 カイザルは急いで部屋を出た。

殆んど走るに近い早歩きで・・・・

そんなカイザルを、部屋の外で待機していた近衛騎士が慌てて着いていった。


「あ!父上狡い!一人だけ逃げて・・・私も仕事があるから、エカテ勉強頑張れよ!」


 ルヴィニも急いで逃げる。

そのあとに、半泣きのノワールが続いた。


「待ってください陛下ぁぁぁ!!近衛騎士の隊長!シュエにしてください!私はあんな部下嫌だぁぁぁ」


 ノワールが叫びながら去っていった・・・

ノワールよ・・・哀れだな・・


「・・・シュエ・・・」


 エカテはシュエに、深く深く頭を下げた。


「御免なさい・・・・・」


 エカテは今までどんなにシュエに迷惑をかけていたか・・・・・

気付かなかった自分を恥じた。自分は本当に傲慢だ。


「エカテ様・・・過ぎたことは水に流します・・此れからが大事です」


 シュエはニッと笑う。

 そんなシュエを見て、エカテは嬉しいそうに笑った。

初めて、シュエに笑って貰ったから・・・・・


 タンペットは、エカテ達が話終えるのを待ち、話終えるとタンペットはエカテに此れからについて話始める。


「大体エカテ様の実力が分かった。

適切な教育日程を考えよう。ユリナとイデア様は歴史の書物を持ってきてやる。では明日」


「「有り難う御座いました先生!!」」


 ユリナとイデアが元気よく答える。


「有り難う御座いました・・・・・先生・・・・」


 エカテも恥ずかしそうに頭を下げる。エカテはお礼を言うのも初めてだったようで照れ臭いらしい・・・・・


 タンペットの話が終ると。

ユリナはイデアに・・・・・


「じゃあ、本読みに行く?」


「行く行く!」


 ユリナとイデアは、キャイキャイはしゃぐ。二人はとっても楽しそうだ。


「私は・・・休むわ・・キツイ・・・」


 反対にエカテは疲労困憊。彼女は、イザベルを連れて部屋に帰って言った・・・・・

大丈夫かな・・・・・


「フフフ 行こうか!」


「クスクス うん!」


 ユリナとイデアは、図書室に向かって歩き出した。








  その頃王の執務室では・・・


「怖い怖い怖い怖い怖い」


「陛下・・・・」


「怖い怖い怖い怖い怖い」



「使い物になりませんね・・ハァ・・・・・早く帰りたかったな・・・」


 部屋に帰るなり机の下に入り、プルプル震え一向に書類に手を付けない王。


そんな王を眺めながら、宰相のルィンは窓からタンペットがいるであろう部屋を見る・・・


タンペットさん・・何したんだよ・・・・・


 ルィンは、ため息を付きながら未処理の書類を手に取った。



カイザル陛下。トラウマ爆発です!

タンペット先生・・・・・ルヴィニさんこわーい近衛が付きます・・・・可哀想です。

次は新展開です!ユリナが大変な目に・・・・・

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