傲慢な王妃様
王妃様の登場です!
「王妃様が呼んでいます。ぐずくせずに、さっさとお茶を置いて立ちなさい」
ユリナは、飲んでいたお茶を机に置いて立ち上がる。女官長の方に行こうとしたら、イデアに服の端を掴まれた。イデアは首を振る。
シャルロットは、飲んでいたお茶を机に置いて、座ったまま女官長に尋ねる。
「用件はなんですか?」
女官長は、ピシャリと突き放すように言った。
道見ても、目上の人間に対する態度ではない。
「貴女様には、関係こまざいません」
「関係はあるわ。娘の侍女ですもの」
イデアは、掴んでいたユリナの服を離し、お茶を乱暴に置いて立ち上がる。
「私も行きます!女官長!ユリナは私の侍女ですから」
女官長は首を振り、冷たく言う。
「いえ。王妃様は、ユリナのみを連れてきなさいと仰いました」
イデアが、女官長を睨みながら言い募るが。
「でも」
暫くの間、イデアとシャルロットが女官長とにらみ会う。
掴み合いに発展する前に、ユリナが落ち着いた声で口を開いたそして、静かに女官長を見る。
「イデア様、シャルロット様。心配して頂き ありがとうございます。私は、行きます。王妃様の所に」
ユリナの決意の籠る目を見て、イデアとシャルロットは悲鳴のように叫んだ。
「「ユリナ!?」」
あの、王妃からの呼び出しだ!!どう考えても録な事にはならない。
命の危険すらある。
「ユリナ・・・・・」
イデアとシャルロットは、泣きそうな声でユリナを見る。
ユリナは、フフフと笑ってイデアに近づいた。
「大丈夫ですよ!私・・楽しい術が使えるんで」
最後は小声で、イデアの耳元で囁いた。かなり黒い。
「楽しい?どんな?」
イデアが首を傾げた。なんで今言った。
「庭園でしたやつ」
ユリナはニヤリと笑った。
「庭園で・・え?マジで?アハハハじゃあ安心ね!何かされたら、直ぐに駆けつけられる」
イデアがユリナと、小声でこそこそ話ていたら。女官長が怪しんできた・・・ここでバレたら不味い。
「何の話ですか?イデア様」
イデアは、イタズラっぽく笑う。
「おやつの話よ」
女官長は、馬鹿にしたようにフンと鼻で笑い、ユリナに来なさいと命令する。
体には触れない。よほどシュエが怖かったようだ。
心配そうに見送る二人を残し、ユリナは女官長に連れられて・・ひたすら、ひたすら歩く・・遠いよ!1時間は歩いてるよ!
とうか・・どんどん壁が豪華になるな・・・・
暫く歩くと、ひときは豪華な扉の前で女官長が止まる、此処のようだ。
コンコン、女官長が優しくノックすると。
「女官長です。ユリナ・ウイングをつれて参りました」
少しして扉が開かれると、侍女が一人現れ奥に案内してきた。
部屋の中に入ると、中はもとてつもなく豪華だった。
そして、部屋のど真ん中に大きく・・・目が痛いほどの真っ赤なソファーがある。
そのソファーにはシャルロットと同年代の女性が座っていた。
輝かしい金髪と血のように真っ赤な目・・王妃様だ。
ユリナは頭を下げながら指を動かし、気付かれないよう魔法を発動。準備OKだ!
ユリナは頭を下げたまま、口を開く。
「お初に御目にかかります。第二王女。イデア様の侍女。ユリナ・ウイングと申します。」
ユリナが言うと、冷たい声が返ってくる。
「私は王妃。エリザベスよ」
ユリナは、頭を下げたまま立って動かない。
そんなユリナに、エリザベスはゆっくり立ち上がり近づき・・バシッと彼女の頬を叩いた。
ユリナは、反射的に頭を上げていまい、血のように赤い目と目が合う。
「無礼ね。誰が頭を上げて言いといったのかしら?」
睨まれた・・・・・怖い。
「申し訳ありません」
「まあ・・・良いわ。貴女に頼みがあるの。これをイデアとシャルロットに飲ませなさい」
楽しそうに王妃は笑い。侍女に持ってこさせた瓶をユリナに渡す。
「これは?」
ユリナは、赤い液体の入った瓶をエリザベスから渡された。
どう考えても毒だけど・・・・・
「何?私の命令が聞けないの?
汚ならしい平民の癖に生意気ね。あの王太子も・・イデアの数倍は美しい、私の娘より・・あんな子を撰ぶなんて!」
バキッ!エリザベスが手に持っていた扇が、真っ二つに折れた。
フーフー と、毛を逆立てた猫の様に怒っていたエリザベスは、息を吐いて気を落ち着けてから、ゆっくりユリナを見下した。
そしてため息を吐くと、エリザベスは回りの侍女達に命じる。
「仕方ないわ・・・貴女たち、この子を押さえて」
命令と同時に、侍女達がユリナを押さえつける。
女官長は、ユリナの頭を押さえつけていた!!痛い!
「女官長。口を開けさせて」
ユリナの、頭を押さえつけていた女官長が、ユリナの口をこじ開ける。
エリザベスはユリナの手から、毒入りの瓶を優雅な動作で奪い取り、蓋を開けながらユリナにゆっくり語りかける。
「貴女は、イデアに毒を盛れと言われて、私のところに来た。
私はすんでの所で紅茶に毒を盛られたのに気づく・・・・・」
エリザベスは、蓋の取れた毒入りの瓶の中身を、自分の飲んでいた紅茶に注ぐ。
「紅茶に、毒を入れたのを暴かれ・・・・・貴女は自棄になり・・毒入りの紅茶を飲み干す・・・・・どうかしら?」
瓶の中身を全て紅茶に入れてから、エリザベスはユリナを見下ろす。
そして、ゆっくりユリナの口に紅茶を近づけてきた。
やっぱり・・私を・・・ユリナはエリザベスを睨んだ。
「やっぱりそれは毒ですか?」
エリザベスは、悪女の様に笑い語り出す。
フフフ・・・・・やった!時間稼ぎ成功!
「フフッそうよ。強力な、ね・・これでやっと、あの女を殺せるわ!!
惨めに大人しく暮らせば良いのに!娘は未来の王妃なんて!憎たらしい!・・・フフフ・・・陛下に言えば、親子ともども死刑にしてくれるでしょ?
それにそもそも、私は貴女が嫌いなのよ!!私が愛人にしてやろうと言ったのに、全てを捨ててまで逃げた男。
あのタンペットの愛弟子で、そのタンペットにそっくりな・・・・近々、私の愛人にしようと思っていた、シュエの恋人。
そんな顔でよくもまぁ恥ずかしげもなく・・」
初めは、うっとりしながら話していたが、途中から忌々しげにユリナを睨んでいる。
やばい!助けてくれ!
しかし・・・恐いけど・・・・・言いたい!言ったら死ぬかもしれないが!
「貴女は、見た目だけ美しいですね」
あ゛っ! つい声に出してしまった・・・・・やばい!エリザベスは鬼の形相で、ユリナを睨みながら、紅茶を持っていない方の手で、バシッとユリナの頬を叩く。
「黙りなさい!」
エリザベスが叫んだ。怖い!もう駄目だ!ユリナは目をつぶる。
信じちゃい無いが、助けて!神様!
ユリナが、最初で最後の神頼みをした。その時!!バキッバタン!凄い音がした。
ユリナは驚き目を開けると、数十人の騎士が部屋に押し入っていた。入口を見ると何かの残骸がある。
よく見ると扉の様だった。エリザベスは驚いて、紅茶のカップを落を床に落としている。よし!毒殺は免れた!
「何事です!無礼よ!」
エリザベスが騎士達に叫ぶ。
すると、人並を掻き分けてシュエが素早く入ってきた。
そして、ユリナを押さえつけていた侍女達を、ユリナからはがしユリナを壁際に連れて行く。
そこでシュエは、ユリナの顔に一筋の赤い線(エリザベスは大きな宝石のついた指輪をしていて、それで顔を引っ掛かれて血が出た)を見つけ急いで顔に手をおいて呪文を唱える。
ユリナはホッとして笑った。
「ありがとう。シュエ」
シュエが手を離すと、ユリナの傷は消えていた。
そして、シュエはユリナを心配そうに見つめる。
「ユリナ。他にいたいところは?毒はまだ、飲まされていないか?」
エリザベスは、ビクッと震えた。
「なぜ・・・・・・」
エリザベスが、シュエを問い詰めようとした。その時!
騎士達が壁際に分かれ道ができた。その道の中心から、一人の男性が歩いてくる。あの方は・・・・・
「城中に声が響いていたのだ・・・エリーの声が・・・・・」
男の名は、カイザル・イルティス・ゼルギュウム。
この国の国王だ。彼は心底 悲しそうな顔で、自分の妻に語りかける。
「タンペットには、申し訳なかった・・・あいつの言った通りだった・・・・・シュエまで・・・エリー・・・・・」
カイザルが、ゆっくりエリザベスに近づく。
そんなカイザルに、王妃エリザベスは悲鳴のように叫びながら、王の腕にすがり付いた。
「陛下!何かの間違いです!全部この娘が!」
王は、エリザベスを睨んだ。
そして。王妃の頬をバシ叩き、王は王妃を怒鳴り付けた。
「見苦しい!お前は修道院 行きとする!修道院が決まるまでは、牢で頭を冷やせ!お前たち!王妃を連れていけ!」
命じられた騎士達は、王妃の腕を掴み、引きずるように部屋から外に連れ出して行った。
王妃は茫然としていて、成されるがままだ・・・・・
その様子を、唖然と見ていた女官長は、王妃が連れ出された事で我にかえり、カイザルを怒鳴りつける。
「こんな事をして!只ですむとお思いか!」
カイザルは、喚く女官長を冷たく見下ろし、女官長の後ろを見る。
反射的に女官長も後ろを見ると、そこには・・・・・
「たかが公爵婦人が、そんな口をきくな。見苦しい!」
女官長は目を見開く。輝く金髪に深紅の瞳。
彼は、王妃エリザベスの兄の子供で、父親が一年前に病死したため、先日。国王に即位した。名はカルクルス・セルシ・パリティオスだ。
隣国、パリティオスの国王だ。
「パリティス王陛下!貴女の、叔母上が拘束されたのですよ!」
そんな女官長に、カルクルスは冷たく言い放った。
「だから?父上も お爺様も 最悪な人だった。が、叔母上もだな・・・・ゼルギュウム王!王妃は好きに処分してくれ!我が国は一切、抗議はしない。
大体俺は、叔母上が大嫌いだしな・・・」
女官長は、絶望的な顔でその場に崩れ落ちた。
「そんな・・・・・・」
崩れ落ちた女官長は、直ぐにまわりにいた騎士達に連行されて行った。
たぶん・・王妃と同じ所に連れていかれたのだろう。
そしてユリナは、直ぐにシュエに連れられて離宮に戻って行った。
離宮まで行くと、イデアとシャルロットが、わぁと駆け寄ってくる。
「ユリナ!無事ですか!」
「ゲガしてない!?」
服を捲られて、ゲガがないか二人がかりで確認される!
やめて!服はがないで!
「頬を叩かれただけです!シュエに治して貰ったから傷も無いです!」
ゲガがないと分かると、二人はホッとして優しく笑う。
「本当みたいね」
「良かった・・・・しかし凄かったわね・・・・・」
イデアが言うと、ユリナはフフンと自慢げに笑う。
「そうでしょ!そうでしょ!術名は拡声器!私のオリジナルよ!」
「城中に声が響いていたな。平民の兵士とかもいるから、明日には王都中に広まるだろう」
冷静にシュエが話す。イデアは、興味津々でユリナに詰め寄った。
「あれどうやったの?何時もやってるのより、響いてたわよ!」
「簡単よ!声は音。風に乗せてばら蒔いたの。城の壁に反響したから、城中に響いたのよ!私の魔力じゃ、城の中が限界だけどね!」
シュエは、重々しく言葉を吐いた。
「凄いな・・・・・」
内緒話も出来ない・・恐ろしい術だ。
シャルロットは、キャイキャイ騒ぐユリナに笑いながら、頭を優しく撫でた。
「今日はもう休みなさい」
ユリナは、気持ち良さそうにしていたが、シャルロットの言葉に動揺する。
今は無傷なのに、休んで良いものか・・・・・
「え!でも・・・・・」
イデアがユリナに、コツンとデコピンをしてニッと笑う。
「ユリナ!命令よ!」
イデアが仕草で、連れていけとシュエに言う。
直ぐにユリナは、シュエに抱き上げられて無理やり連行された・・・
心配性だな・・・みんな・・・
ユリナの自室に着くと、シュエはユリナをベッドに下ろす。
「ユリナ、ゆっくり休め。
夕食の時間になったら迎えにくる。部屋からは絶対出るな。危険だからな」
分かってる。私が元凶で王妃が失脚するのだ。
王妃側の人間達には、私は悪魔に見えるだろう。
・・・何をされるかわからない・・・・・
「分かってる。大人しく寝てるよ、後始末は御願いします・・・」
ユリナが申し訳無さそうに、シュエに言うと、シュエはフッと笑った。
「心得た」
シュエは一言。そう言うと、バタンと扉を閉めてユリナの部屋を後にした。
シュエ・・・かっこよすぎて・・・・・腹立つな・・・・・
王妃様。退場です!
凄い方です・・・・・シュエ君危なかった・・・・・
次は約二名が幸せを掴みます!
次回作も宜しくお願いします!