水を作る!
ユリナ達は、魔王とその側近達を連れて港向かう。
港に着くと、ユリナは魔王と側近。そして、大勢の魔族の野次馬達に囲まれながら、政治家の演説のような口調で話始めた。
緊張して口が乾く・・逃げたい。
「まず、そこにいる水系術士のグレルが海水を霧にします。
その際、風魔術で吹き飛ばし塩分を取り除きます。
そして、霧になったモノを私の風魔術で空高く舞い上げ、冷気を操れるシュエが霧を適度に冷やし、それが雨となって降り注ぐってな感じです」
適当な説明だが大体こんな感じだ。
ユリナが説明を終えると、魔族達は、感心したように呟いた。
「・・雨とはそうやって出来るのだな」
「魔族には水を操れる者はいないので、我々にはむりですね」
魔王と側近が呟くと、ユリナは思い出したように魔族二人に問いかける。
「そう言えば、魔族は火炎系統の術は使えないんですか?」
魔族の属性はたしか闇。余り文献も残っていない良く分からない属性だ。
しかしゼルギュムのおとぎ話では、魔王が町を焼いたとあるから使えるかもしれない。
ユリナがたずねると、魔王はフムと頷くと口を開いた。
「我々は無理だが、俺の従魔物に出来る奴がいるな。」
魔王の言葉を聞いたユリナは、ニコリと笑いある提案をした。
「では、こんなのはどうでしょう?
海水を沸騰させて管を使って水蒸気・・湯気を集めて、部屋を冷やすと壁に水滴が溜まります。
これを集めて、飲料水にしてはどうでしょう?この方法の方は、水が殺菌されて安全ですし」
ユリナは、そう言うと魔王に微笑んだ。
この方法ならユリナ達は不要だ。
観光は一通り見て回ったからもう十分だ・・むしろさっさと帰りたい。
偉いさんと話すのは、しこたま疲れるから・・
しかし・・・
「菌とは何だ?」
質問攻めは終わらないらしい。
「目に見えない生物・・と言ったところですね。まあ、健康体なら大体無害ですよ」
ユリナはニコニコ笑う。
早く会話が終わればいいのに・敬語は面倒くさい。
「そうか・・ユリナ・・少々頼みがある。
その水を作る装置を作ってはくれないか?報酬は望み通り支払う」
う゛あっ・・予想どうりだ。
面倒くさい!!しかし・・報酬か・・
ユリナはチラリと魔王を見上げる。
「望み通りですか?」
「ああ」
魔王はユリナを見下ろし深く頷いた。
因に、身長差が激しいので見下す形になっているだけだ。
「アンフェールの全種類の、魔物の肉のステーキが食べたいです!
あと、観光とおみやげを買う為に、この国の通貨が欲しいです!」
観光をしたにはしたが、この国の金がなくて買い物をすることが出来なかった。
「観光と通貨はいいが、全種類の魔物の肉って・・千種類はいるぞ?」
魔王がチラリとユリナを見下ろす。
ユリナは標準的な体つきで、とてもじゃないが千の肉を食べる事など出来ない。
魔王が心配していると、グレルが笑いながら魔王に言った。
「ユリナは大食らいだから大丈夫」
「確実に完食するだろう」
シュエもウンウンと頷いている。
確かにその通りだが何か納得したくない。
魔王はグレルとシュエの言葉に驚きながらユリナに目を向けた。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫です!大食らいは神の御加護なので、毒のある魔物も大丈夫ですよ!」
毒すら大丈夫らしい・・
魔王はなんとも言えないかおで口を開いた。
「・・大食らいの加護か・・神は何故そんなモノを与えたのだろうな」
「え?私の願いだからですよ?健康体って加護ですけどね」
ユリナが、キョトンとした顔で魔王を見上げながら口を開くと、魔王は目を見開いてユリナを見る。
「・・変な奴だな・・普通・・高い魔力とか、高い身体能力とか、不老不死とか色々あるだろう。
何故 大食らい・・いや、健康体を望んだんだ?」
「病気で苦しんで死ぬのが嫌だからです!あとこの世の全ての食材を食べたいからです!」
そう!この世の美味しい食べ物を、全て食べ尽くす事が私の野望の一つだ。
「なら、不老不死の方がいいだろう」
魔王がそう言うと、ユリナはイヤイヤイヤと手を振って否定した。
「60年位でもソコソコ長い人生なんだから、健康体を捨ててまで不老不死 何かいらないですよ!60年で、野望は果たして見せます!一つしか加護を選べませんしね」
健康と不死なら健康が欲しいらしい。
変わった奴だ。
「60年って長いか?」
魔族にとって、60年とは人間にとっての6年と変わらない。
かなり短いと思うのだが。
「長いですよ!私の野望を、完遂出来る位には」
ユリナがニヤリと笑うと、魔王は可笑しそうにフフフと笑った。
「そうか・・面白い野望だな」
「はい!もう一つの野望は破れそうですがね」
「もう一つの野望?」
魔王が不思議そうに問いかけるが、ユリナには答える気は無い。
ユリナはニヤリと笑うと口を開いた。
「内緒です!さあ!やりましょう!!大工さんをよんでください!」
「ああ。わかった。お前達!!大工をありったけ集めてこい」
魔王は、ユリナに答える気はないと分かると、側近に指示を出した。
水を作るには、ユリナ嬢の助けが必要だ。彼女の不快になる事は言わない方が良さそうだ。
次の更新は9月29日です!
次も宜しくお願いします!




