入国出来ない?!
海賊が乗っていると思って、ユリナ達の乗る船を包囲をした者達はアンフェールの海軍だった。
彼等は、港町を荒らし回る海賊を捕まえようと船を包囲してみれば、そこに居たのはどう見ても人族。
海軍の部隊長をしていた男性は、訳がわからなかった。
確かにこの船は海賊船だ。
それは間違いない。部隊長は事情説明をしろと海賊船に乗り込み、ユリナ達の話を聞いた。
「そうか・・海賊に襲われて船を奪ったのか」
「はい」
ユリナが頷くと、部隊長は顔をひくつかせた。
海賊船を乗っ取るなど普通やらない。
「我が国でも、十指に入る大海賊だったんだがな」
「弱かったが?」
「うん。確かに」
シュエとグレルがそう言えば、部隊長は目に怯えを映しながらシュエとグレルを見た。
この海賊船の持ち主達は、海軍も手に負えない位強かったからだ。
「・・人間ってこんなに強かったんだな」
怯える部隊長の言葉に、ユリナは首を振る。
彼等の強さは一般的な人族ではない。
「いやいや。コイツらが異様に強いだけですよ」
ユリナがそう言うと、部隊長は明らかにホッてしてからユリナに話しかけた。
そもそも人族が、皆 シュエ達位強かったら他の種族は滅んでいる。
「・・まあ、それは良いとして何の目的で魔王国に?」
部隊長が聞くと、ユリナはビシリと手をあげた。
ユリナの目は、爛々と輝いている。
「観光です!」
「観光!?」
「観光。」
アンフェール大陸。魔王国(魔族達は自国を魔王国と呼ぶが、他種族は大陸名のアンフェールと呼んでいる)に奴隷を買う目的で(よく知らないが、他国では奴隷を売ってないらしい)来る者は多いが、観光で来る者はいない。
何故なら・・・・
「うちの国は、砂漠ばかりの上に魔物がウジャウジャいる最悪な場所だぞ?」
そう。魔物がウジャウジャなのだ。
観光するのもかなり危険で、ドラゴンを一撃で倒す位の実力がなければ、呑気に観光等出来ない。
アンフェール大陸はかなり危険地帯なのだ。
「特産の果物とかは!」
ユリナが部隊長に詰め寄ると、部隊長は首を振る。
「作物は殆ど作れない。果物などハヤワーン産の輸入モノしか無い」
部隊長の言葉を聞いたユリナは、信じられないと悲鳴を上げた。
「何食べて生きてるんですか!!」
「肉。魔物はウジャウジャいるからな」
肉?果物も良いけど、魔獣の肉も食べてみたい。
「それでも良いな」
ユリナは、ペロリと口を舐めるとニヤニヤ笑う。
標的を魔物の肉に変えたらしい。ユリナがニヤニヤ笑っていると、部隊長は呆れた顔でユリナ達を見た。
ユリナ達は、明らかに下調べをしていないようだ。
「てか、入国許可証あるのか?」
「入国許可証?」
ナニソレ?とユリナ達が首を傾げていると、部隊長はハーとため息をついた。
「・・持って無いみたいだな。入国許可証が無いと入国出来ないぞ?」
部隊長がそう言うと、ユリナは叫ぶ。
「出来ない!!じゃあどうすれば入国許可証を発行してもらえるんですか!」
ユリナがそう言うと、部隊長はフムと考え込んでから口を開いた。
「・・・とりあえず。俺達の上司に会ってみるか?」
「いいんですか!!お願いします!!」
ユリナが喜び叫ぶと、シュエとグレルが、剣呑な目で部隊長を睨み付け、口を開く。
「ユリナ。多少は警戒した方が良い・・・・」
「どう考えても怪しい!普通、俺達みたいな奴等は、門前払いされるはずだ!」
シュエが静かに、ユリナを守るように前に出て、グレルは部隊長に唸るように言い捨てた。
警戒心を顕にする二人を見ながら、部隊長は苦笑いする。そしてため息混じりに口を開いた。
「・・・門前払い出来ない理由が有るんだよ」
部隊長が力無く呟くと、ユリナは首を傾げてあっ!理由に思い至った。
「理由?・・あ!もしかしてこの海賊船ですか?ああそうか・・・海賊捕まえに来たのに、私達を逃がしたら不味いですもんね・・シュエ。グレル。剣をしまって」
ユリナは、いつの間にか抜刀していた二人に剣を仕舞うように命じた。
全く、警戒しすぎだ。
「しかし」
「だって・・・」
剣を仕舞えと言うユリナに、不服そうな二人。
ユリナは二人にため息を吐くと、部隊長は苦笑いしながら口を開いた。
「大丈夫。君らに危害は加えないよ。と言うか戦闘になったら此方が全滅しそうだ。
船内がほぼ無傷って事は、百人位をほぼ瞬殺で殺ったんだろ?しかも海では魔物が出たハズなのに、甲板も無傷って事は魔術も使えるって事だろ?俺達には無理だ。
でもさ・・俺達は敵前逃亡は死罪なんだよ。だから俺達の上司に会って、事情を説明をしてほしいんだけど・・・」
つまり、一応上司に説明をしてください!と言う事らしい。
自分の言葉だけでは、虚偽と判断されそうな位、今回の話は常識はずれの事態らしい。
部隊長の事は短い期間たが、信用出来そうだ。
しかし、彼の上司はどうだろうか。
「貴方は危害を加えないでしょうけど、貴方の上司は大丈夫?」
ユリナが聞くと、部隊長はニカッと笑う。
「大丈夫。基本ビビりな人だから」
部隊長がそう言うと、グレルが何とも言えない顔で口を開いた。
「ビビりで、軍人勤まるのか?」
部隊長はアハハハと、から笑いしながら答える。
「まあ・・戦闘能力は高いから大丈夫」
戦闘能力の高いビビり・・かなり珍しい人材らしい。
戦闘能力が高いなら、ビビり何かにならないハズなのだが。
「じゃあ案内して」
ビビり上司に大して興味が無いユリナは、早く街に入るためにさっさといこうと部隊長を急かす。
シュエとグレルはまだ納得はしていないが ユリナが一睨みすると大人しく従い剣を納めた。
驚くくらいの従いぶりだ。
部隊長は彼等の関係が物凄く気になるが、ユリナ達の気が変わったら困るので追求はしなかった。
「分かった。では着いて来てくれ」
部隊長がそう言うと、三人を小舟に乗せてアンフェールの港町に向かった。
入国出来ない?!でした!一応入国はできました。
観光は・・・・・
次の更新日は9月12日です!




