一件落着
コタロウが、勾留されてから数日後。
コタロウの刑は確定した。刑期の無い島流し。
つまり、終身刑に決まった。
まあ・・自業自得なので仕方ないし、同情する気もない。
そして全てが終わった今。ウオノ・ミノが、ムネスケとスズの新居に訪ねてきた。
何故かと言うと・・・
「え!!結婚するの!!」
ムネスケの屋敷に訪れたウオノは、顔を赤らめて恥ずかしそうに頷いた。
「はい。スズ様・・何かよく分からない内に決まりましたわ」
ウオノがそう言うと、スズはニカッと笑う。
「良かった良かった。一件落着だね」
スズがそう言うと、ウオノはかなり複雑そうな顔をした。
そうだよな・・・知らないうちに、話が纏まっていたら驚くよな。
「はい・・多分・・良かったのかしら・・いえ良かったですよ」
困惑気味のウオノが、無理矢理納得する。
そしてスズは、ウオノに今一番聞かなければならない事を聞いた。
「式は?」
「今日」
「へ?」
スズが間抜けな顔をしていると、ウオノは呆れたようにため息をついた。
「私の気が変わる前にだそうです」
「・・・うわ・・ウオノ・・・」
スズが何とも言えない顔でウオノを見ると、ウオノは必死な形相で叫んだ。
「言わないでください!!何も言わないでください!!」
ウオノは、現実を直視したくないらしく必死でスズの発言を遮った。
その光景をムサシムとネスケ。そして、ユリナ達が生暖かく見守っていた。
溺愛されるのは恥ずかしいもんな。
そして数時間後。
スズが結婚式をしたのと同じ場所で、ウオノとムサシの結婚式が執り行われた(ムサシはウオノに言わずに、何ヵ月も前から準備をしていたらしい)
そして沢山の参列者に囲まれた、ムサシとウオノは誓いの盃をかわした。
「今!この時を持って!二人を夫婦と認める」
神主が高らかにそう宣言すると、結婚式は終りをつげた。
「これから忙しくなるわね。ムサシ」
結婚式が終わり、参列者達から祝の言葉をもらっているムサシに、スズが笑いながらそう言うと、ムサシは苦笑しながらスズを見た。
「ああ。新居の準備に就任式。兄上の裁判もあるからな」
一応。判決は確定しているが、ハウンド族の元次期長を裁くので、裁判では他部族の長達に同席してもらう。
王家とキャット族とハウンド族以外の族長は、離島に住んでいる。
なので、裁判までは少々時間がかかっていた。
しかし新居は・・実はもう準備していたりする。
「私も・・長の妻として覚える事が沢山ありますわ」
ウオノは、大変だといいながら嬉しげに笑っている。
相思相愛のようだ。
「一件落着だね・・スズ」
そんなウオノ達にユリナはよし!と頷くと、背後からスズに近づき彼女の肩をポンと軽く叩いた。
スズは誰だ!と驚いて振り返ると、そこにユリナがいた。
スズは驚かされた事に少しムスッとして、ジロッと後ろにいたユリナに叫ぶ。
「うわっ!何ですか?ユリナ様!」
「私達はもう行くね。国宝渡し終わったって、母国に報告しないといけないし」
ユリナがそう言って笑うと、スズは寂しげにユリナにすがり付いた。
「え!もう行っちゃうんですか!」
「うん。もうスズが危険な目に遇う事もないしね」
ユリナはそう言うと、クルリとスズに背を向けて会場の外に向かって歩き出す。
「じゃあ!!またいつか会おうね!」
ユリナは、振り返らずにヒラヒラと手を振るう。
すると、スズは泣きながら叫び手が千切れんばかりに全力で手を振った。
「また!!また必ずあいましょう!必ず!!」
号泣するスズに見送られ、ユリナ達は国を出るために馬車に乗り込み、港に向かって走り出した。
次の更新日は9月3日です!
次は・・・・・・




