恐怖の訳は・・・・・
長いです!めっちゃ長いです!
「・・・お父様は、私達は親子を心底嫌っているのよ」
イデアは、何でもないように言う。
ノワールは痛ましげだ。
「まあ、仕方ないよ。無理矢理押し付けられたんだから」
「へー」
ユリナは、何でも無いように軽く言った。
「ユリナ!」
ノワールが怒鳴るが、女達は気にしない。
「そうよね。
アホだわ・・・お母様がお可哀想。
好きでもないオッサンに嫁がされたんだもの、お母様が言ってたわ(あんな男の寵愛などいらないわ!自分に酔って気持ち悪い!)ってさ」
アハハと笑うイデアに、ユリナに納得した。
確かに自分に酔う男は気持ち悪い。
「ああ・・エカテ様の性格の自分大好きは父方の遺伝か・・」
イデアはやけくそになって笑う。
「母親はもっと凄いわよ!世界は自分中心!お父様の寵愛云々、関係なしに私達が笑うだけでも嫌みたい。
自分が、一番幸せでないと駄目だって・・お父様に私に言って侍女をつけるな!といったそうなのよ!!嫌がらせにも程があるわ」
ユリナは呆れた。
そんな馬鹿な事を受け入れた王様に。
「実行した王も王だな」
あれ?ユリナはある事に気付き、ノワールに聞く。
「私は良いの?反逆罪にならない?」
ユリナが侍女になれば、王の反感を買うのでないか?心配してノワールに聞くとノワールが答えた。
「大丈夫だ。ルー様が王の書類に侍女の人事の書類混ぜてサインをもらった。
覆すのは無理だ。書類を読んでない事がバレるからな」
ワアォ!アホだわ!
ユリナはイデアに振り向き侍女の礼をする。
問題ないなら 問題ない。むしろ喜ばしい。
「では。宜しくお願いします!」
「こちらこそ。お願い致します」
二人は互いに頭を下げてから、頭を上げて顔を見合わせて笑った。
ノワールが、立ち止まる二人を促す。
「部屋に案内するからこい。荷物はシュエと下僕達が持ってくる」
「下僕がいるの!」
急いでノワールを追いかけユリナは叫ぶ!マジか!
話ながら歩く。
「下僕がいる。」
ノワールはしみじみ言う。何だよ?何か可哀想な目に合ってるのか?下僕・・・・・
ノワールはグチグチ言いながら歩く。
「イデア・・全く・・護衛すら居ないんだから部屋に籠っていれば良いのに・・・城も安全とは言いきれないんだぞ!」
イデアは口を尖らせた。
「だって!!部屋にいると嫌みを言いに来るんだもん」
イデアの後ろを歩くユリナが聞く。来る?
「誰が?」
イデアは心底嫌そうな顔をした。それほど嫌な人って・・・まさか
「正妃様・・・」
やっぱりか・・・
「うっわー」
ユリナまで嫌な顔になる。
それと言うのも、エカテの侍女をした一週間・・・たった一週間なのに正妃様に何十回と会った。
感想は・・人を見下す傲慢女。
女官長が、可愛く見えるほど傲慢ぶりだった。
何か言えば、平民の癖に平民の癖にと連呼して、田舎者と言われ笑われるのは何時もの事。
正妃がわざと、侍女にお金を落とさせ拾わされ・・・
「あら?盗んでは駄目よ?」と。
しかも、廊下で!
果ては、その辺を歩いていた騎士に。
「この子は娼婦のような女なのよ」
と言って・・・
あとで、真に受けた騎士がシュエに・・
これは言いか・・
まあ、そんな人だ・・・・
エカテ様より酷い!しかし王への媚は完璧で、直訴した者は尽く退職させられる。
王は馬鹿だな・・この国大丈夫か・・・
暫く歩き後宮の奥に・・あれ?
建物を越えて違う棟に・・此処・・・
「私の宿舎じゃない?」
ノワールは首を振る。
「違う。この奥だ」
え!奥があんの?!
宿舎を避けて更に奥へ・・何だこれ・・・・
「あら?イデアその子は?」
濡れたように美しい黒髪に可愛らしい顔、霞の様に澄んだ白銀の瞳。
凄く綺麗な人が!!イデアと顔がにている。
側妃様か!!いや、それよりも!
「廃墟じゃん!」
ユリナの言葉に、綺麗な人は平然としている。
「人は住んでるわよ?私とイデアが」
ユリナは固まる。ユリナが女性の手元を見て心底驚いた。
侍女いないって聞いたけど
貴族女性がまさか!
「ワァァァ!私がやります!今日からイデア様付になる。ユリナ・ウイングです!」
彼女は手に汚物の入ったバケツを持っていた!!マジか!
下女もいないの!侍女の仕事ですらないよ!
「え!侍女付いたの!王太子様の計らいかしら・・・・
あっ!良いのよ何時もの事だもの。ここで15年も生活していたら慣れるわ」
女性は慈悲深い顔でユリナを見る。
と言うことは・・・
王様マジいつか絞めてやる!
「初めまして。私はシャルロット・リーベン・ゼルギゥム、側室よ」
シャル様はドレスの端を持っておじきをした。ドレスは普通に貴族令嬢だ。
「側妃様は公爵令嬢でしたよね?」
シャルロットはフフと笑う。
「ええ、筆頭公爵家。リーベン家の当主の娘よ。
最初は大変だったわ・・
なんせ、掃除もろくにしたこと無かったもの。
でも、誰もやってくれないし・・・頑張ったわ!
父様に手紙を出したけど・・陛下の心を射止められない私が悪いんですって!何もしてくれなかった!
父様に頼っても仕方がないのだと諦めました・・
しかもこんな目に合わしておいて、正妃様が妊娠して相手をしてくれない時だけ 私を・・私は娼婦ではないのに!!
あの王と夜の勤めは苦痛だったけど・・イデアが生まれてくれただけで、この地獄を生きられたわ・・・・
一人ならとっくに自害してるもの」
王様と正妃様か・・・・・
「それより、早く部屋に行きなさい。氷結騎士達が待っているわ」
シャルロットはスタスタ行ってしまった。あー行っちゃった・・・・
イデアが、気にしないでとユリナを慰めユリナを引っ張っる。
「行こう!母様は良いから、待たせると・・・
ああ・・来ちゃったね・・・」
階段を降りる音がする。建物の入口を見るとシュエが難しそうな顔をして出てきた。
「ユリナの宿舎も酷かったが・・・それ以上だな・・・・イデア姫。
ちょっと修理材料買ってくる。
ユリナ、全ての部屋が酷い有り様だ。応接間らしき部屋に布を敷いて、その上にユリナの荷物を一時的に置いている。修理をするから、暫く外でまっていてくれ」
ユリナはシュエの言葉に首を傾げた。
「訓練は?バルバロ様に叱られない?てか、護衛任務があるでしょ?」
シュエは、ニャッと笑った。
何があった!バルバロ様大丈夫か!
「訓練は終えた。王太子殿下より勅命が下り、側妃と第二王女の宮を侍女が暮らせる様にしろ。
だそうだ・・こんなにガタがきているとは思わなかったがな」
楽しそうだな・・
シュエ・・・おっ!後ろの人が下僕か・・・あれ?ガウリスさんもいるじゃん!
うわーあの人も下僕だったのか!!
「では、行ってくる」
ユリナは笑って手を振った。
「行ってらっしゃい」
シュエは、笑って挨拶してくれたが他の人達は無言だ。
脅されたな・・・・・
シュエ達が町に行ってる間に、ユリナとイデアはシャルロットの所へ向かう。
庭に着くとシャルロットは洗濯物を洗っていた。
急いで近付きユリナとイデアも一緒に洗う。ワイワイ楽しく洗っていると、王太子とノワールと文官ぽいおっさんがやって来た。
「手伝おうか?」
王太子が言うとノワールが止める。
「王太子である貴方が手伝うと、シャルロット様が王妃様に虐められます。ここは私が・・・・・」
ノワールをおっさんが止めた。
おっさんと言ったが、汚い印象は皆無。細身で優しげで服も髪も綺麗にととのえられている。
紳士と言った感じのおっさんだ・・・・紳士でもおっさんはおっさんだがな!
「いやいや。私がやります。」
ユリナは初めて見る、おっさんに話かけた。
「いやいや。私がやりますよ?」
おっさんが爽やかで優しい笑顔で笑う。美形じゃないが惚れそうだ・・・・・おじさまに格上げしておこう。
「いいえ・・・私がシャルに出来ることは少ないので。お願いします。」
あれ?この人・・・・・
「シャルロット様の恋人?」
シャルロット様とおじさまは真っ赤になった。ああ・・やっぱり。
「ルィンは、フェイル伯爵家の当主でね恋人だったの・・
結婚しようって言ってくれて・・・
でも、お父様が反対なさって・・・
宰相にでもなれば考えるって・・・・・そしたら!」
シャルロットはうつ向き、ルィンはその時を思い出したのか怒りに燃える。
「時間稼ぎだったんだ!王に嫁がせるのに 駆け落ちなどされては堪らないと!
希望を持たせる事を言って!シャルが幸になるなら・・でも!こんな目に遇わせるなんで!」
ルィンが風を纏う。怒った風術士の特長だ。
彼は栗毛に白銀の目をしていた。
「落ち着いて、貴方が反逆者になるのは嫌よ・・・・・」
シャルロットがルィンの手を包み込んだ。
瞬間。ルィンの纏う風が霧散する。
「分かっている。だから待ってるんだ・・・・・」
ルィンはシャルロットに優しく笑う。何かピンクの空気だ。
ずーと二人は見つめ会う・・・・・ずーと・・・・
「所で、洗濯物終わったんでけど何処に干んですが・・・・・」
はっ!二人は我に帰る。
彼等は三十分近く見つめあっていた。
それを、ユリナ達はそのまま放置していた。
二人は二人の世界に入ってしまい声も届かなかなそうだった。
待っていても仕方無い。
なので、四人はさっさと洗濯物を始末することにした。
イデアとユリナが洗濯物を洗い、王太子とノワールが絞ると言う役割分担でさっさと終らす。
そして・・・二人のピンクな空気が薄れたのを見計らって、声をかけたと言う訳だ。
二人は恥ずかしそうに縮こまった。
しかも、洗濯物まで終っているのに気付き、二人は慌てて謝る。
「え!終らしたのか!申し訳ないです!」
「あっ!ごめんなさい・・ええっと、そこの木の棒にかけて!」
シャルロットの指の先を見ると木の棒を発見!
洗濯物を移動させ、皆で服を片っ端からかける。
人数が多いので直ぐに終わった。
シュエ達は帰ってきては、木材やガラス。
調度品等を置いていく。
そして、2、3人は残り トントン、カンカンと修理を開始した。
ノワールと王太子とルィンも手伝いに行ったが、王太子は力が強くて壁を更に壊し、ルィンは力が無さすぎて邪魔だと追い出された。
二人は今。シュエ達が買ってきたテーブルと茶器で、女性達はとティータイムを満喫している。
「ああ。紅茶なんて久しぶり」
シャルロットがしみじみ言う。
「え?足りなかったの!」
ルィンがシャルロットの言葉に驚いた。ルィンはシャルロットに貢いでいるみたいだ。
「いやね・・・鼠がアサって駄目にしちゃったの」
アハハとシャルロットは笑う。
「そうなの!すぐ手配するよ。ネズミ避けも」
ルィンが言うと、シャルロットは笑いながら答える。
何か目が怖い・・・
「あっ!鼠よけは要らないわよ。鼠と言う名の犬だから・・・・」
犬?もしかして・・・
「被害は?」
王太子がシャルロットに聞く。
誰かは予想はつくが・・・・
「お茶だけよ?野菜も干し肉も無害。でも、お菓子や化粧品。装飾品何かが粉々になってるのよ」
王太子が厳しい顔をする。
「最近。王妃の侍女がここを彷徨いている」
シャルロットは怖い顔で笑った。
「ああやっぱりね。薄々思ったけど・・・あの子・・あの女の侍女だったのね・・・・・」
ルィンは憤慨して、叫んだ。
「何でいまさら嫌がらせ?!シャルが王宮に来た頃から援助してるのに」
イデアはため息をつきながら言った。
「私を調べた副産物でしょ?多分最初は、私がいつマクダリア王太子に会ったか調べてたんだと思うわ」
ユリナは不思議そうにイデアを見る。
「どういうこと?」
イデアは少しだけ恥ずかしそうにうつ向いた。
「私は、望まれて嫁ぐって事よ。
手紙や花が届かないと王妃に嘲られたけど、王妃が止めただけだったし・・・
届かない事に気付いた今は、あの人の護衛の流水術士が直に届けてくれるの!
凄いわよ!マグダリアの王太子・・・
シュエがユリナを愛するのと変わらないくらい・・・愛されてるわ・・」
ユリナは、イデアの肩を軽く叩きニヤニヤ笑った。
ノワールは俯く。
ああ・・イデアが好きなのか・・憐れだな。
ノワールとイデアは従兄弟だ。
ノワールは公爵家の嫡子でもあり、王太子とイデアの幼馴染みでもある。
今はとても仲良しで、王太子もまともな性格をしている。
しかし王太子の幼い頃は違っていた。
王太子は正妃様腹で、女官長から傲慢な教えを受けて育った。
ルヴィニは帝王学を学び、ノワールやイデアを嘲った幼少期。
彼は、妹の思い人のシュエに嫉妬し(この頃はまだ、エカテと母が大好きだった)シュエの屋敷に忍び込んだ。
シュエが転移陣に入るのを見て、同じように入り、シュエが口にしていた呪文を唱える。
陣から光が溢れそれが消えた頃。ルヴィニは小さい部屋に転移していた。
窓の外を見ると初めて見ると・・そこは森。
彼は、いてもたってもいられずに、窓から外に出た。
彼が始めて見る森で、楽しくなって遊んでいると・・紅い髪の女の子を見つけた。
感情が見えない白銀の瞳をみて、心が震えた・・・
シャルロットも白銀の瞳だが、こんな感情は沸き上がってきたことはない・・ ルヴィニは、急いで前を歩く少女に声をかけた。
「名は?」
しかし女の子は・・・・
「先に名乗るのが礼儀だ」
ルヴィニは、ムッとしたが名乗る。
「ルヴィニ」
女の子は、感情が見えない声で坦々と言った・・・・・
「ユリナ」
ルヴィニは女の子。ユリナの手を引いた。
「話をしょう!」
だがユリナは、冷めた目でルヴィニを一別すると首を振った。
「やだ!面倒さい」
ルヴィニは、生まれて初めて拒否された。
残念だが腹はたたない。何か・・・・・胸の奥がキュンとする・・・
なんだこれ?
何とかユリナの気が引きたいルヴィニは、ポケットを漁る。
何か気が引ける物・・・あった!
「このペンダントやるから」
彼は、真っ赤に光るルビーの宝石がついたペンダントを差し出した。
「いらん」
ルヴィニはペンダントをしまい、またガサゴソポケットを漁る。
「この指環は?」
エメラルドの指輪を差し出す。
「いらん。喋るのめんどい、帰れ!」
ルヴィニは指輪とペンダントをしまい。駄目かもと思いなから・・・・・
「飴だ!」
ユリナは、今までの気だるさが、うその様に俊敏な動きで飴を強奪した。直ぐ様たべる。
「あっまい!彼処に座るのに丁度いい石があるから、ソコに行こう!」
飴持っててよかった・・・・・
二人で並んで少し歩く。
すると小さな泉かあり、近くの石に向かい合って座った。
「そんでモグモグあんた、シュエの友達?シュエと変わんない歳よね」
ユリナは食べながら喋る。はしたない!
「友達?なんだそれは」
ルヴィニは首を傾げる。初めて聞いた言葉だ。
「知らない・・・・・本人が友達と思えば友達じゃない?」
ユリナもうーんと考えて、面倒になり適当な事を言った。
「そうか・・じゃあ、友達じゃないな」
「フーン。まあ、どうでもいいよ。それでお話って・・・ヴぐっっっガハッ・・・・」
突然。ユリナが血を吐き倒れた。
え!ルヴィニは慌ててユリナを抱き抱え、近くにあるタンペットの家に駆け込み叫んだ。
「タンペット!!助けてくれ!!ユリナが!」
タンペットは、口元を血で濡らすユリナを見て驚き怒鳴る。
「話はあとで聞く!早くユリナをベッドへ急げ!」
怒声を聞き、奥からシュエが慌てて出てきた。
「お爺様!?何事・・・ユリナ!どうゆう・・・」
タンペットはシュエに怒鳴る。
「話は後だ!シュエは水を汲んでこい!ルヴィニ!貴様も早くしろ!」
シュエは、返事もせずに桶を持って外へ行く。
そしてルヴィニは、急いでユリナをタンペットのベッドに連れていき寝かせた。
「ルヴィニ王子。何があった・・・」
怖い・・僕は・・こんな目で睨まれた事なんて今までない・・
タンペットは・・・臣下はこんな態度とっちゃダメなんだぞ!
今は・・・言わないけど
ルヴィニはポケットを探り、飴をタンペットに差し出した。
「これを食べたら、血を吐いて・・・・・」
タンペットは飴を受け取り、匂いを嗅いだ。
「やはり毒か・・この匂いあの毒か!」
タンペットは直ぐに隣の部屋に行き、液体の入った瓶と、木の屑の様なものが入った乳鉢と匙を持ってきた。
その時・・・シュエが桶とタオルを持って部屋に入ってくる。
「持ってきました」
「ユリナの口を濯いでやり、血を拭いてやれ」
「はい」
シュエは言われた通り、意識のないユリナの口を濯ぎ、口を拭く。
そして・・・タンペットは何やら調合をしていた。
何もする事が無いルヴィニは、タンペットに話かける
「タンペット。僕は?」
話しかけられたタンペットは、ルヴィニを見もしないで冷たく言い捨てた。
「動くな。邪魔だ、貴様に何ができる?何もできんだろう?」
ルヴィニはムッとした。今まで誰にも無能扱いなんてされた事はない。
「口を濯ぐくらいできる!」
シュエを横目で見ながらいった。
「出来るのか?意識の無い人間の口に液体を注ぐんだ。分量を間違えたり体の角度を間違えたら、窒息させてしまうんだぞ?したことは無いだろう?」
ルヴィニはタンペットを睨んだ。
「シュエはあるのか!」
シュエが吹き終わり、手拭いを洗いながらルヴィニを横目で睨む。
「私はユリナがパイを喉煮詰まらせたり、川で溺れたり、崖から落ちたり、何かわからん木の実をユリナが食って吐かせたり・・・応急措置ならば問題ない」
ユリナ!やらかしすぎだろ!
タンペットは睨み合う二人を無視して、出来た薬をユリナに飲ませる。
そして、氷の瞳でルヴィニを睨み付けた。
見るだけで氷付けになりそうな瞳だ・・・・・
「何故、ユリナに飴をやった?答えろ」
ルヴィニは怖くなりら悲鳴の様に叫んだ。
「しっ臣下が命令しちゃダメなんだぞ!」
タンペットはアハハハハと、冷たい笑い声を上げて立ち上がる。
「私はもう騎士でも公爵家の人間でもない。騎士は引退し、あの屑のお陰でメチェーリ家の名簿から名は消えている。
臣下ではない。
しっているか?ここを知るのはメチェーリ家の者だけだ・・・・・
この村の人間は、ユリナを除き私が貴族だとは知らない。学者か何かだと思っている・・・・・」
タンペットは、ゆっくりとした動きでルヴィニの頬を撫でる。
「もし、此処で居なくなっても誰もわこらないのだよ。屋敷の魔法陣を消すように言えば完璧だ。
もう一度聞く。何故飴を渡した?」
ルヴィニは、冷や汗をかきながら半泣きで叫ぶ。
「ゆっユリナと話がしたくて・・・飴で気を引こうと・・・毒なんてしらなくて・・・・」
タンペットはふう吐息を吐いた。
「そうか・・・母親からそれを貰ったのか?誰かに食べさせろと」
ルヴィニは首を振る。
「いや、母上の侍女に貰った。とても、珍しいく美味な飴なので母君に差し上げて下さいといって」
タンペットは鋭かった目を緩めた。
「狙いは王妃か・・
良かった・・・ユリナが狙われた訳ではないか」
ルヴィニは怒鳴る。良かったって!狙われたのは・・・・・
「母上が狙われたのに良かったって!」
タンペットは吐き捨てるように言う。
「あの女がどうなろうと構わん。
寧ろ消えてほしい。
私が、団長から解任された理由をしっているか?表向きは愛想や訓練内容の話だか、本当は王妃が私に愛人になれと言うのを断ったからなんだぞ?
何でまだ49歳の私が、80近くの老人の顔をしていると思う?薬で老けたのだ!若さを捨てたんだ何故だと思う?」
ルヴィニは。震えながら首を振る。
「私には、妻だけだ。
長男を産んで産褥で亡くなってしまったが、愛している・・・なのに・・・あの女は私が断ると、あろうことか陛下に、私が言い寄ってきた等と嘘を吹き込みメチェーリ家を潰そうとした!!
そして、助けてやるから愛人になれと・・・私は断り。
全ての罪をかぶって此処にいる。しかし、時々城に呼び出されるから顔を老けさせてな。
あの女は私の顔を見て、それは嫌そうな顔をして・・・これで愛人になれとはもうほざかんだろう」
タンペットは、嘘を言っているようには見えない。
母上に聞いて見ないと!
その間に、シュエは魔術で血まみれの服を水術で洗い水分を取り渇かして、ルヴィニの襟首を掴んだ。
「お爺様。ルヴィニ王子を連れていきます。顔を見るのも不快でしょ?王妃にも少し似ていますし、ユリナを頼みます」
タンペットは深く頷いた。
「ああ。心配はいらない。行け」
シュエはルヴィニを担ぎ上げ、魔法陣に屋敷に戻る。
するとそこには王子の護衛ノワールがいた。
直ぐにシュエは、王太子のポケットを探り飴を取りだす。
唐突すぎて反応出来ない二人の口に、シュエは飴を放り込んだ。
「うごっなっなにっ」
「あっ飴!?」
文句を言った二人は、氷の瞳に睨まれる。
「貴様も・・・ユリナの苦しみを味わえ!しかし、死んでは面倒だ」
パキンパキン。二人はみるみる凍る。意識はあるのに体は動かない!しかも、息苦しい。
死を予感させる恐怖が二人を襲う・・・・・
そして、シュエは部屋の扉を開き叫んだ。
慌てたようを装って・・・・・
「大変だ!!王子達が毒を飲んで倒れた!」
シュエはわざど声を上げた。
それからは・・もうお大騒ぎ。
ルヴィニは、氷付けまま城の医務室に連れていかれ、王につきっきりで看病された。
母は侍女をよこすだけで、自分は来なかった。
妹達は毎日見舞いに来てくれたのに。
イデアは、父やエカテに見付からないよう(見つかれば怒鳴られるから)本や野花、飴以外のお菓子を持ってきた。
今も飴は食べられない。
ルヴィニに飴を渡した侍女は、身分の低い男爵家の娘だそうだ。
恋人との結婚が決まり、侍女を辞するむねを主に報告した。
しかし、タイミングが悪かった。
エカテの婚約を、メチェーリ家から断られた時だったのだ。
勿論侍女はそんなことは知らず、幸せそうに報告した。
すると、王妃はニッコリ笑い。
「いいわ。女官長にも言っておきなさい」
「はい!失礼します!」
侍女はウキウキで女官長に報告し、荷物を纏めた。
女官長の表情に、少し不信感を覚えたが特に気にしなかった。
数日後。侍女の恋人は違う男爵家の女性と結婚した。
王命だったそうだ。
王妃が王に頼んだそうで、侍女は全て終わったあとでその事を知った・・・・・
そして、その日の夜。
彼は自殺した・・・・・
王命に逆らえば、家が潰される
しかし・・愛するものは裏切れない。
彼は初夜の寝床で自害したらしい・・・・・・
侍女は、王妃である母を狙っていなかった。
王子であり、最愛息子を殺してやろうと思い飴を渡したらしかった。
まあ、私は愛されていなかったようだが・・・・・
侍女は手紙にこの事を書き記し、思い付く限りの人間に送って、男の墓の前で自害した。
揉み消される事を恐れて・・・・・
イデアの母、シャルロットにもその手紙が送られて、イデアが私に教えてくれた。
当事者だから知るべきだと。
そして今、父上は今大忙しらしい。
例の手紙が何十通も、貴族平民関係なしに送られているから当然だ。
そして私は、それ以来母上を敬えなくなった。
女官長にも疑問を持つようになり、他国に留学したりして、王に必要な心構えや誇るべきもの・・・・恥ずべき事を学んだ。
私は未熟だ。死にかけて良かったと思う。あのままだったら・・・馬鹿なままであれば・・シュエに殺されたかもしれない。
因みにユリナは、毒の影響で私の記憶をゴッソリなくしたらしい。
・・・寂しい・・・
あの日以来。私とノワールはシュエが恐ろしい・・・・・
なんとしても、ユリナを護らねば・・・国が滅ぶ。
長くなったが、取り敢えずこれが私がユリナに味方する理由だ。
ユリナみたいな娘・・・・
もう一人居ないかな・・・ガッコーン!!!
お茶を飲んでいたルヴィニの頭に、腐った木材が!そして・・・彼はそのまま後ろに倒れた。
彼の持っていたカップが粉々だ!!ルヴィニは涙目で抗議した。
「何をする!」
シュエが2階から怒鳴っる。
「ユリナを変な目で見たからだ!」
ユリナが叫ぶ。
「喧嘩する暇があれば早くして!王太子!はい!」
ユリナは箒とちりとりを渡した。
ルヴィニは受け取り、さっきの攻撃で散ったカップを片付ける。
・・・・王太子なのに!!彼は理不尽さを噛み締めた・・・・・
その時!!井戸から若い男の声が響く。
「おーい!イデア様!」
全員が井戸を見ると、井戸から手がでていて・・・・・
ユリナは、あまりの恐怖に悲鳴を上げた!もしかしなくとも!あれじゃん!
「ぎゃああああああああオバケぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
辺り一面にユリナの悲鳴がこだました・・・・・
どうでしたか?イデアちゃんも廃墟に住んでました。ルィンさんが手出し出来なかったのは王命のせいです。
まだまだ続きます。
次は懐かしいあの子がでてきますよ!




