貴族なんて最低だ!
数時間後。
見合い相手を探りに行っていたテディが帰ってきた。
「おかえり!」
「ピギャピギャ!」
テディは、頑張ったよ!誉めて誉めて!と言いたげにラピスにくっつき、スリスリしながら鳴く。
ラピスはそんなテディの喉をナデナデしながら、テディに話しかけた。
「テディ!ちょっと記憶見るわよ」
テディの喉をナデナデしていたラピスは、そう言うとテディの頭に手を置いた。
テディの頭に手を置くと、ラピスの頭に声が聞こえてくる。
ラピスが目を閉じると、目の前に豪華な応接間が現れた。
そこでは四十代位の夫婦と、ラピスより十は歳上の男性がソファーに座って何やら話し合いをしていた。
この若い男性が見合いの相手だ。
「長も酷いわね・・中位竜種ごときと家の息子をめあわせるなんて・・・」
「長の命だ。仕方あるまい・・アルジェント様が長になるのに必要なことだ」
「しかし・・」
見合いの相手その①(名前はしらない)が不満そうに、父親らしき男に良い募っていると、ガチャリと音がして扉が開いた。
「・・病死するかもしれませんわ・・」
若い女性の声がした。
室内の三人が一斉に声の方を見る。すると、そこには気が強そうで気高い美しさをもつ、水竜の女性が立っていた・・
「結婚したが妻に、子が出来る前に病死すれば、跡継ぎを作るために婚姻の許可が出ますでしょう?
結婚してしまえば、病死に見せかけるのは容易いですわ」
ソファーに座っていた若い男性は、恐ろしい提案をする美しい女性を、うっとり眺めながら口を開いた。
「・・君は頭がいいな・・流石は我が恋人だ・・」
若い男性がそう言って笑う。すると若い女性は、タッタッタと子供のようにソファーに向かって走り、若い男性の胸に飛び込んだ。
「ふふ・・貴方は私の旦那様ですもの!」
若い男性と男性の両親と、男性の恋人の女性。そして、その場の使用人達まで楽しげに笑う。
そこまで見た後。ラピスは自分の意識を浮上させて目を開いた。
そしてラピスは嫌そうに呟く・・・
「思った以上ね」
ラピスはテディに再び魔力を送る。
そしてテディが見た。もう一人の見合いの相手についての記憶を見るために、目を閉じて自分の意識を手離した・・
・・またもや無駄に豪華な部屋が目に飛び込んでくる・・
真ん中にあるフカフカなソファーには
、激昂した中年の女性が夫らしき中年の男に怒鳴り散らしていた・・理由は・・
「何ですって?我が息子と中位竜種を婚姻させるですって!しかも・・男二人を侍らしているラピスだなんて!!」
自分はかなり有名らしい・・かなり悪い意味で・・
「長の命だ・・仕方ない」
そんな女性に、中年の男性は疲れたようにソファーに座りながら呟いた。
上位者の命令には逆らえないらしい。もう少し抵抗してほしかった・・・
中年の女性は、夫に何を言っても無駄だと理解して嘆く。嘆きたいのはこっちだ!
「そんな・・酷いですわ・・・」
中年の女性が嘆いていると、中年の男性の隣に座っていた若い男性。見合いの相手その②(こいつも名前を確認してない)が嫌な顔をしながら両親に、ある提案をする・・嫌な予感しかしない・・
「奴隷として売りましょう・・」
「え?何を言ってるの!」
本当だよ!何を言ってるんだよ!!!
ラピスは、驚く見合いの相手その②の母に同意した。私を何だと思っている!
しかし。見合いの相手その②は驚く両親に笑顔で語りだした・・・
「長から、アルジェントとオールをたぶらかしている尻軽の話は聞いています。
長はラピスが早々に結婚して、アルジェントとオールの前から居なくなれば、彼女がどうなろうと気にしませんよ。
彼女の両親に何か言われたら、適当に追い返せばいいんですから・・
尻軽を引き取ってやるのですから、感謝こそすれ非難される事はないでしょう」
「それもそうね」
見合いの相手その②の母親は、笑顔で頷き納得した・・納得した!!
そして男の父親も、ウムウムと頷き納得する。
「我が一族に、尻軽の血を入れるわけにはいかないからな」
笑顔で頷く見合いの相手その②の父親を見ながら、ラピスは呟く。
・・やっぱりか・・そして思った・・・・・
貴族なんて最低だ!!!
最低貴族でした!
見合いの相手その①より、その②の方が最低です!




