迷惑な!
数日後。
長老の家に、若い男性が訪ねてきていた。
彼は王都の中位竜種のまとめ役。中位竜種の住む地区の地区長だ。
地区長は長老に出された御茶を飲みながら、目の前に座る長老を見る。
「長老!苦情が出てるぞ!あんまり、上位竜種を邪険にするなよ・・俺達は中位竜種なんだから!」
オールとアルジェントに追い払われて、苛立った上位竜種の女の子達が、長老が悪いと責任転嫁し、長老をどうにかしろと地区長に詰め寄られたらしい・・子供でも上位竜種なので、ガキの我儘だとしても無下にはできないのだ。
「・・用事もなく、家に入り浸るチビ共を追い出しただけじゃ」
長老は、ハーとため息を吐きながら地区長に言う。アルジェントとオールと話したいなら、その辺の広場とかにいけば良いだけだ。
「でも中位竜種のチビは、追い出さなかったらしいじゃないか!」
中位竜種のチビ・・ああラピスの事か・・
「ラピスは、ワシの話を聞きに来ていたからの・・アルジェントとオール目当てのガキと、扱いが違って当然じゃ」
ラピスはおとぎ話や、歴史の偉人の英雄談がとても好きで、暇を見つけては長老に話をせがみに来る。
たまに竜種の領地の外の地理や、外国の植物等の話をすると物凄く楽しそうな顔をするのだ。
そのうちラピスは、竜種の領地を出たいと言い出すかもしれない。
長老が、孫のように可愛がるラピスの笑顔を思い浮かべていると、地区長が嫌そうに顔を歪めて呟いた。
「・・またラピスか・・」
長老は嫌そうな顔をする地区長を見て、ハアーとため息をつく・・
「アルジェントとオールは本当に困ったもんじゃよ・・ラピスが可哀想じゃ」
長老がそう口にすると、地区長は目を見開いて長老を見る。
・・え?・・
「何でだ?ラピスが二人をつれ回しているんだろ?悪いのはラピスじゃないか?」
地区長が不思議そうに長老に言うと、長老は呆れたような顔をして、地区長を見る。
地区長もラピスが、アルジェントとオールをつれ回していると考えているらしい・・
真実は真逆なのに・・
長老は嫌な顔をしながら、ため息を吐くように言葉を吐く。
「・・本当に困ったもんじゃよ・・シルク?何しとんのじゃ?」
長老が嘆いていると、長老の孫・・白い髪に白眼をした美少女(実は男)風竜のシルクが、何やら入り口に文字を書いていた。
・・本気で何をしているんじゃよ・・・
聞かれたシルクは、入り口に文字を書きながら祖父の問いかけに答えた。
「火と水の竜種が、切り裂かれる呪い・・」
「わあああ!止めんか!」
シルクの言葉を聞いた地区長は、慌てて立ち上がりシルクに駆け寄る。
そして地区長は、急いでシルクを入り口から。正確には呪術の魔法陣から引き剥がした。
地区長は青い顔をしながら、魔法陣を必死で消している。
火と水の竜種。アルジェントとオールが切り裂かれでもしたら大問題だ!
「・・シルクは過激じゃの」
長老はため息を吐きながら、愛孫を必死で止める地区長を見た。
シルクは、地区長に叩かれても殴られても呪術を止めようとしない。
余程。ラピスに言い寄るアルジェントとオールが、腹に据えかねるらしい・・・
二人の攻防は、シルクが気絶するまで続いた・・
地区長が長老の家に来てから数日間。ラピスは長老の家に来なかった・・
地区長がラピスの両親に、長老に言ったのと同じ話をしたらしい。
・・それから3日たって、フードで顔を隠した子供が長老の家を訪ねてきた。
子供がフードを少しだけ上げて顔を見せる・・子供の正体はラピスだった。
「おっ?よく来たの!ラピス・・一人か?」
「今日は一人だよ!こっそり出てきたから・・女の子達もいないよ!」
長老の家に入れてもらったラピスは、嬉しそうな顔をして長老に自慢げに話す。家の奥にいたシルクは、ラピスの声に気付いて駆け寄っできた。
駆け寄ってきたシルクは、手にオヤツを持っている。ラピスの好きな果物だ。
「そうか・・今日は何の話にするかな・・」
「じゃあね!・・・」
ラピスがシルクから果物を受け取り、長老に話しかけた時。
長老の家の扉が、コンコンと叩かれる
・・まさか・・・
「長老様!ラピスいますか!」
「あ!いた!ラピス!」
玄関の鍵をかけ忘れていたらしい。
オールがガチャリと扉をあけて、ラピスを発見した。
「・・長老様・・シルク・・」
天敵二人に見つかったラピスが、助けを求めるようにシルクと長老を見る。すると・・・
「はい。これあげる」
「何?」
シルクがラピスに、怪しい玉を渡してきた。ラピスがシルクに玉の正体を訪ねると・・・
「じゅ・・・」
「止めんか!」
怪しい玉は、長老に素早く取り上げられてしまった。
・・後日・・玉についてシルクに聞いてみると、魔力を纏わせてから敵に投げつけると、体が爆発するらしい・・
・・・超危険な玉だった・・・
迷惑な話でした・・・・・ラピスの苦労話は続きます!




