ラピスの過去
ユリナ達の意識が沈むと、ラピスの記憶が流れ込んできた。
「ああ!早く生まれないかしら・・」
「また卵を見ているのかい?」
「だって!!私達の初めての子供よ!楽しみじゃない!」
優しげな声が聞こえるが、何も見えない・・優しい声をもっと近くで聞きたくて、ラピスが力一杯暴れた。
すると・・パキッと何かにヒビが入る音がする。
「あら?ヒビが・・あなた!生まれるわ!」
ラピスが目を開けると、そこには自分を抱き締める女性が一人・・
彼女がラピスの母親だ。
「ピギャピギャ」
生まれたばかりのラピスは、本能的に母親にすりより母親の暖かさを堪能する(竜種は竜の姿で生まれるので、体は爬虫類だ。体温調節ができないのだ)
「産まれた!・・・あ!お湯!お湯持ってきて!」
生まれたばかりのラピスは、バタバタ走りまわる両親を尻目に、卵の殻をかじりながら静に眠りに落ちた。
それから数年間は、幼いせいか記憶があやふやで、読み取れないモノばかりだ。だから竜王炎華は、そこら辺をごっそり飛ばす。
次に見えてきたのは、生まれて7年後だ。
ラピスは出かけようと扉を開けて、バタンと閉めた。
閉めたドアの向こうから、元気の良い声がする。この記憶には、ラピスの感情も入っていた。
そしてユリナ達の頭に物凄く、嫌そうな感情が流れ込んできた。
訪ねて来たのは・・
「ラピス!遊ぼうぜ!」
「ラピス!俺と遊びに行こう!」
ラピスと同じく七歳の、アルジェントとオールだった。
ラピスは扉に鍵をしめて、二人に叫ぶ。
「いや!!私は長老様の所に行くから遊ばない!」
「じゃあ俺も行く!」
「俺もだ!」
「来るな!!」
数分間。
玄関でラピス達が言い合いをしていると、騒ぎに気付いたラピスの母が玄関を開けてしまう。
そして結局。アルジェントとオールと一緒に長老の家に行く事になった・・のだが・・
「騒がしいな・・」
街を歩いていると、アルジェントとオール狙いの上位竜種の女の子達が、ゾロゾロとついてくる。
アルジェントとオールの二人が、長老の家に行くと言うと、皆付いてきたのだ。
長老の家につくと、長老に挨拶すらせずに(長老は中位竜種)既に上位竜種になる事が決まっている、アルジェントとオールに我先にと話しかける。
長老は、町一番の高齢で何でも知っている。
彼の話してくれる歴史や、大陸の地理等は聞いていて楽しい!!なのでラピスは、それを聞きに長老の家によく来る。
だが・・・・
女の子達が五月蝿すぎて、長老の声が聞きづらい。
「長老様の話を聞かないなら、出てってよ!」
ラピスが勇気を出して訴えたが・・
「五月蝿いわね!」
「あんたが出ていきなさいよ!」
逆に怒鳴られた・・私・・間違ったこと言ってないよ!?
それを見ていた長老は、ため息を吐きながら、泣きそうになるラピスの頭を撫でる。
そして、集まっていた女の子達に向かって口を開いた。
「ヤレヤレ・・ここはワシの家だ。お前たちは出ていきなさい」
「ほら!出ていけよ!」
「迷惑だ!」
長老がそう言うと、アルジェントとオールが女の子達に叫ぶ。だが・・・
「アルジェントとオールもじゃよ」
「「え!!」」
アルジェントとオールは騒いでいない自分達が、何故追い出されるか分からず呆けていると、長老に首根っこ捕まれて外に放り出された。
アルジェントとオールが追い出されると、女の子達も一斉に外に出る。そして、アルジェントとオールは直ぐ様上位竜種の女の子達に囲まれた。
「「ラピス!!」」
悲壮な顔で二人が叫ぶが、長老は容赦なく玄関の扉を閉めた。
室内に戻ると、ラピスと長老の孫シルクが目を輝かして座っていた。
「さて静になったの・昨日は何処まで話したか・・」
「神族の王国の話だよ!!」
笑いながら呟く長老に、ラピスは叫ぶ・・待ちきれないらしい。
「ああ。そうだったな・・数十代前の神族の3つの公爵は・・・」
その頃。閉め出されたアルジェントとオールは、まだ未練がましく扉の前に立っていた。
「ねぇ!アルジェント!オール私の家でお話しょうよ!」
そんな二人に女の子達の一人が、笑いながら行こうよ!と家に誘うがアルジェントとオールは・・
「「嫌だ!」」
振り向きもせずに、女の子の誘いを断った。
アルジェントとオールはしつこくて・・・本当にしつこくて、日がくれるまで・・長老の家の扉の前に居座った・・・
ラピスの過去話は暫く続きます!




